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知取気亭主人の四方山話

『柔らかな発想』

2026年6月3日

世の中には頭の柔らかい方々が結構いるものだ。無論、頭蓋骨が柔らかいという意味ではない。発想が豊か、想像力がある、という意味だ。人類のこれまでの数限りない発想によって世の中これだけ便利になってきていて、十人十色と言われるぐらいそれぞれが違う個性を持っているのだから、よく考えればそんな事当たり前のことなのに、最近改めて気付かされている。先日、保険会社の第一生命が発表した、恒例の「サラリーマン川柳」を見ての感想だ。毎年その見事な出来栄えに感心させられているのだが、今年発表された作品も、『座布団一枚!』と声を掛けたくなるほど秀逸な作品が多かった。『そうそう、その通り!』とか、『良く分かる!』と、思わず膝を叩いた諸兄も多かったことだと思う。

第一生命のWEBサイト、『2025年第一生命サラッと一句 わたしの川柳コンクール 全国BEST10決定』(https://event.dai-ichi-life.co.jp/company/senryu/)、に掲載されている川柳は、どれも洒脱で思わず微笑んでしまうような作品ばかりだ。誠に、上手いこと詠むものである。川柳だけにスパイスも効いている。近頃とみに思考回路が怪しくなってきた身としては、その発想の柔らかさ、羨ましい限りである。

こうした柔らかな発想は、川柳という作品の中だけの話ではない。生活のちょっとした場面でも必要とされる。ビジネスの分野でも行政のサービスの分野でも、現状を打破しようとすれば、これまでと違う柔らかな発想が必要だ。でも、通常だとなかなかそれができないでいる。過去の経験やしがらみ、そしてそれとなく感じる同調圧力や当事者意識の低さなどが邪魔して、飛び出した発想ができないでいるからだ。加えて、そうした発想と相互関係になる度量の広さも欠けているように思う。失われた30年と言われる日本の経済も、一部にはそんなことが影響しているのではないかと思う。そうした鬱々とした気持ちを払拭して、「そうだ、それだよ、その発想だよ!」と、思わず身を入れて聴き入ったラジオ番組があった。5月29日(金曜日)の午前中に放送されたNHKの番組、『ふんわり』だ。

『ふんわり』は、毎週月曜日から金曜日までの午前中に放送されている番組で、外の作業をする時など、胸ポケットに入れた携帯ラジオでよく聞いている。また、毎度ネタ不足に悩まされている四方山話の、貴重な情報源としても利用させてもらっている。金曜日のパーソナリティーは、人工知能研究者の黒川伊保子さんだ。そしてこの日は、「特集 発達障害」と題して、精神科医の岩波明さんと、臨床心理士で発達障害の支援をしているNPO法人「えじそんくらぶ」代表、そして自身も発達障害の当事者でもある高山恵子さんの二人を加え、いつも以上に賑やかな放送だった。とかく暗くなりがちなテーマだったが、明るく前向きに、そして気持ちが楽になるようなトークを繰り広げていて、とても参考になった。リスナーからの疑問や悩みに答えるコーナーも設けられていて、お三方の柔らかな回答に、孫息子に発達障害があることもあってか、なんとなく気持ちがホッとする番組であった。

黒川さん自身も発達障害があって、「学生の時にこんな失敗をした」との体験談、そして高山さんと『そうそう!』とお互い理解しあいながらのやり取りは、高尚な漫才のようでもあり、とても楽しく聴かせてもらった。そんな中、「そうだ、それだよ、その発想だよ!」と、思わず拍手をしたくなった会話があった。孫息子も通う「特別支援学級(学校)」をこんな風な名前に変えたらいいのに、との素敵な意見がお二人から出されたのだ。

それは、特別支援学級などと言わずに「マイペースクラス」だとか「あすなろ学級」などにしたら良いのに、との意見だ。これまで当たり前のように「特別支援…」を受け入れていたが、目から鱗の、何とも柔らかな響きのネーミングだ。それに比べると、「特別支援…」は何となく上から目線のネーミングに思えてくる。行政らしいと言えばそれまでだが、いかにもお堅い表現だ。「マイペースクラス」、良い響きだ。実際に通う障害者や親たちにとっては、グッと敷居が低くなるのではないかと思う。

そしてもう一つ。ハッキリ発達障害と診断できない、よく言われるグレーゾーンについて、『パステルゾーンと呼ぶことにしている』との話もあった。素敵なネーミングだ。たかが呼び方、されど呼び方だ。耳にした時にパステルの方が明るく華やかであると感じるのは、異論の余地が無いだろう。そして、「どうせなら前向きな気持ちになる明るいネーミングの方が良いよね」、そんな関係者の思いが伝わってくる。

こうした柔らかな発想と、そうした柔らかな発想を素直に受け入れる大きな度量、この二つが、混沌とした今の世の中に一番必要なことではないかと思う。そうすればもっと住みやすい世の中になるし、いま世界が掲げているSDGs(持続可能な開発目標)も、目標達成がグッと現実味を帯びてくると思う。そう思いませんか皆さん。


【文責:知取気亭主人】

バラ

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