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知取気亭主人の四方山話

『でも、やっぱりひと風呂浴びた後は…』

2026年6月17日

ひと月ほど前だっただろうか、恐らく皆さんは見た事も無いであろう、ビックリ仰天の代物を見た。その代物を発見したのは妻だ。指さしながら、『それ見て!』と驚き顔で言ってきた。指の先にあったのは、最近妻が愛飲しているノンアルコールビールの、ざっくりと大きくL字型に穴が開いたアルミ缶だ。幅5ミリほどの堂々とした穴で、アルミは捲れあがっている。一目で異常だと分かる。しかも、飲み口にあるタブ(ステイオンタブと呼ぶらしい)は手つかずのままだ。飲み口を上にして真上から見れば、未使用だと見間違う。でも中身は空。当然、とっても軽い。今思えば写真を撮らなかったのが残念でならないが、生まれて初めて、こんな奇妙奇天烈な缶を見た。

24缶入りの箱買いした商品の中の一つで、段ボール箱に濡れた跡や傷みが全くなかったことから、商品として梱包された時には既に穴が開いていたのだと思う。購入してから2か月ほどかけて徐々に減らして、本当に最後の最後に冷蔵庫に入れようとした1本だった。これまで空けた中には、勿論穴の開いた缶は無かった。自動化され品質管理が徹底されている筈の今どきの工場でもこんな事が起こりうるんだと、大変ビックリさせられた。ただ見方を変えれば、通常では見られない大変貴重な物を見せてもらったことになる。

ところで、ノンアルコールビールを箱買いするなどと書くと、妻は元々ビール好きなのではないかと思われるかもしれないが、アルコールは舐める程度でほとんど飲めない。医療用のアルコール消毒でも赤くなるほど弱い。今も、ノンアルコールビール350ml缶でさえ、なかなか飲み干せないでいる。ただ有難いことに、飲んでいる場の雰囲気は好きで、呑兵衛の小生にはとにかく寛大だった。いや、正確に言えば、今でも寛大だ。ところが残念なことに、呑兵衛の小生の方が一時ほどの呑兵衛でなくなってきていて、一昨年の弁膜症の手術以来、飲む回数も量もグンと減ってきた。不思議なもので、飲みたいという欲求は、(ここが微妙なのだが)昔ほどではなくなってきている。入院中と術後暫く続けた禁酒期間が功を奏しているのかもしれない。

また、街に繰り出して飲む機会が減ってきたことと、『酒止めたよ』と寂しいことを言う友人や知り合いが、ぽつぽつと出てきたことも大きい。『酒を止めて甘党に鞍替えしたよ!』と冗談交じりに言う主治医の、元呑兵衛先生もいる。そんな話を聞くと、一瞬『俺もそろそろ卒業しようかな』とも思う。しかし体の方は正直で、酒の肴に合いそうな料理を見ると、いまだに自然と舌なめずりをしてしまう。そして、「せっかく子供たちがくれた酒があるのに、悪くなる前に飲まないといけないな」などと、あり得ない屁理屈をつけて、もう一人の自分を納得させている。まぁ要するに、素の自分は本気で酒を止める気はないらしい。人を惑わす酒の魔力に、いたって素直に従っている。

そんな酒に関して、面白い情報を得た。今、本当は酒が飲めるのに敢えて飲まないというライフスタイルを送る若者たちが、欧米を中心に増えているというのだ。こうしたライフスタイルを「ソバーキュリアス」と言うらしい。「酔っていない、しらふの」という意味の英語「Sober」と、「好奇心の強い」という意味の「Curious」からなる造語だという。そして、そうしたスタイルを取る人を「ソバキュリアン」と呼ぶらしい。

禁酒と違うところは、飲まないことを我慢するのではなく、飲まないことをポジティブに捉えてそのライフスタイルを楽しむ、それがソバキュリアンだとしている(参考:『Through the LENS byTOPCON』(https://www.topcon.co.jp/media/agriculture/sober_curious/))。それに伴って、当該のノンアルコールビールに代表されるノンアルコール飲料の消費量が増えているらしい。確かに、酒の量販店やマーケットなどに行くと、商品棚のノンアルコール飲料占有面積が徐々に増えてきている。「こんな物までノンアルコール?」と思う商品まで出てきている。確実に市民権を得ている格好だ。

このソバーキュリアスと呼ばれるライフスタイル、全く飲まないという縛りがあるわけではないらしい。回数を減らしたり量を減らしたりするのも入るのだという。もしそうだとすると、週2日ほど、多くの場合飲んでも2合ほどの小生も、ソバーキュリアスの仲間に入れてもらえるような気がする。毎晩のように飲み、そして酩酊することも無くなった。理由は、朝、昼、晩の三食とも食後の薬があって、深酒をすると飲み忘れてしまうことからだ。そうしたこともあって、舌なめずりが出ない時には、敢えて飲まないようにしている。今ではもう、さして辛くもない。

ただ、ただ、である。近頃のように暑くなってくると、ちょっと訳が違う。特に、草刈りや剪定など外の作業で汗を掻きひと風呂浴びた時などは、風呂上がりの一杯が堪らなく恋しくなる。それも、冷えたビールか缶酎ハイ。冷酒でも良い。アーッ、考えただけでも喉が鳴る。どうやら、生粋のソバキュリアンにはなれないらしい!


【文責:知取気亭主人】

パッションフルーツ(実の殻の内側)


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