Q.「落石対策便覧」の改定について教えてください。 |
桝谷先生:「落石対策便覧」が平成12年6月に改訂されました。前回の発行(昭和58年)から10年以上が経過し、その間、各地で落石による被災があり、様々なデータ
が集まりました。しかし、旧便覧と比較すると許容応力度法の範囲で設計手法が大きく変わったわけではありません。
また「落石対策便覧」は、示方書ではありませんので、現場技術者の裁量にゆだねられるところがあるのが特徴です。
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Q.現行の設計手法の問題点について教えてください。 |
桝谷先生:現行のロックシェッドに関する設計法(荷重を静的荷重として換算する方法)では、不経済であることがあります。また、当初予想できなかったような大規模な落石が生じた場合、その安全性は一般に明らかではありません。
防護工(主にロックシェッド)の今後の課題として、落石衝撃力に対する敷砂の各種の状態の影響や落石衝撃力と伝達衝撃力との関係と構造物の設計に用いる荷重の設定法などの問題点があります。偶発性の高い落石衝撃力の予測精度も合わせて検討すべき難しい課題です。
(注:地盤工学会「土と基礎」2002年4月 p.45に「今後の課題」として掲載)
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Q.落石シミュレーションについて教えてください。 |
桝谷先生:「落石対策便覧に関する参考資料−落石シミュレーション手法の調査研究資料」(平成14年4月 日本道路協会)が発行されました。現段階では、落石シミュレーションに対する考えが確立されておらず、許容応力度法との関連付けが難しい。しかし、将来、落石シミュレーションは「性能設計」と合わせて、対策工を安全で経済的な設計とするために欠かせない技術になることは間違いありません。
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Q.今後の設計はどうなるのでしょうか? |
桝谷先生:「性能設計」に移行していくことは間違いありません。そうなると、設計方法が根本から変わると思います。そうなったとき、新しい設計手法ではその安全性が不十分あるいは不明な既存構造物をどうするのか?など問題点でてくる可能性があります。
また、構造物に対し、責任が国や県、市町村から施工者、設計者に移行していく可能性があります。
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Q.設計手法は社会情勢にあわせて変化していますが、実務を行っているものにとって、どう学べばよいのでしょうか? |
桝谷先生:最新のデータや解析方法を産学ともに学ぶ必要があります。そのため、大学では社会に出た技術者に対する教育支援を考えています。
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