落石の発生には、素因と誘因の両方が深く関与している。素因とは「斜面が持つ条件」をいい、誘因とは「落石発生の引き金となる外的条件」をいう。
落石の素因は地形・地質に代表されるが、このうち地質は落石の形態と大きく関わっている。落石形態は大まかに「抜落ち(転石)型落石」と「はく離(浮石)型落石」に分類される。
「抜落ち(転石)型落石」は、「落石」となる岩塊や礫などの周りが風化・浸食に対する抵抗力の弱い崖錘、段丘礫層、火山性堆積物、風化花崗岩類等に多く見られる。 |
a)礫を含む土砂斜面
(段丘、火山砕屑物等) |
b)上部が土砂の斜面
(自然斜面上部の遷急線部、切土法面ののり肩付近等) |
c)下部が土砂の斜面
(自然斜面下部の崖錘等) |
d)表層が土砂〜強風化岩の斜面
(自然斜面中腹等) |
図−3 抜落ち(転石)型落石の発生形態
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「はく離(浮石)型落石」は、不連続面が発達し、かつ不連続面が密着しておらず、不連続面に囲まれた岩塊、岩片が浮いた状態になっている地質状況に特徴づけられる。また、急勾配の斜面、特にオーバーハング状になっている場合に発生しやすい。 |
a)不連続面が流れ盤となっている斜面 |
b)不連続面が水平から受け盤となっている斜面 |
c)不連続面が高角度に入っている斜面 |
d)不連続面のない岩盤斜面 |
図−4 はく離(浮石)型落石の発生形態
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もう一つの素因である地形は、「斜面の勾配・形状と地表面の状態」をキーワードとして「落石の運動」を支配している。また、落石による被災の程度は、落石の量、速度および到達距離に関係している。
一方、「落石の誘因」はその時々によって異なり、いろいろな事象が重なって起こるため、落石災害については明確な原因が分からないことが多い。主な誘因とその作用としては次のことが考えられる。
表−1 落石の主な誘因とその作用
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