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落石とは?

 「落石」の定義とはなんだろうか?国語辞書の「広辞苑」によれば、「山などで、上から石が落ちてくること。また、その落ちた石」と定義されている。一方、専門図書の「落石対策便覧」(日本道路協会)では、「落石とは、岩盤の不連続面(岩盤中に発達する節理、片理、層理等の割れ目)が拡大して、岩塊や礫がはく離したり、表層堆積物、火山噴出物、固結度の低い砂礫層の中の岩塊、礫が表面に浮き出して斜面より落下する現象をいい、落下した岩塊等も落石ということが多い」と、さすがに詳しく説明されている。
 ちなみに、道路上でよく見かける「落石注意」の標識は、「落ちてくる石に注意という意味ではなく、路上に落ちている石に注意してくださいということを促している」と言う意見 がある。
 「道路法令」では、「落石のおそれあり」標識(右図)の設置場所は、「落石のおそれがあるため、道路交通上注意の必要があると認められる地点の手前30mから200mまでの地点における左側の路端」と決められている。
 落石は毎年多発している土砂災害の一つで、一般的な土砂災害の分類によれば広義の崩壊に分類されている。

図−1 落石注意の標識


図−2 土砂災害の分類
 

 岩盤崩壊と落石の明確な区分はないが、「落石対策便覧」によれば、「落石とは、個数で表現できる少量のものをいい、岩盤崩壊とは、体積で表現される大量のものをいう」としている。

 
落石の素因と誘因

 落石の発生には、素因と誘因の両方が深く関与している。素因とは「斜面が持つ条件」をいい、誘因とは「落石発生の引き金となる外的条件」をいう。
落石の素因は地形・地質に代表されるが、このうち地質は落石の形態と大きく関わっている。落石形態は大まかに「抜落ち(転石)型落石」と「はく離(浮石)型落石」に分類される。
「抜落ち(転石)型落石」は、「落石」となる岩塊や礫などの周りが風化・浸食に対する抵抗力の弱い崖錘、段丘礫層、火山性堆積物、風化花崗岩類等に多く見られる。
 

a)礫を含む土砂斜面
(段丘、火山砕屑物等)

b)上部が土砂の斜面
(自然斜面上部の遷急線部、切土法面ののり肩付近等)

c)下部が土砂の斜面
(自然斜面下部の崖錘等)

d)表層が土砂〜強風化岩の斜面
(自然斜面中腹等)

図−3 抜落ち(転石)型落石の発生形態
 
 「はく離(浮石)型落石」は、不連続面が発達し、かつ不連続面が密着しておらず、不連続面に囲まれた岩塊、岩片が浮いた状態になっている地質状況に特徴づけられる。また、急勾配の斜面、特にオーバーハング状になっている場合に発生しやすい。
 

a)不連続面が流れ盤となっている斜面

b)不連続面が水平から受け盤となっている斜面

c)不連続面が高角度に入っている斜面

d)不連続面のない岩盤斜面

図−4 はく離(浮石)型落石の発生形態
 

 もう一つの素因である地形は、「斜面の勾配・形状と地表面の状態」をキーワードとして「落石の運動」を支配している。また、落石による被災の程度は、落石の量、速度および到達距離に関係している。

一方、「落石の誘因」はその時々によって異なり、いろいろな事象が重なって起こるため、落石災害については明確な原因が分からないことが多い。主な誘因とその作用としては次のことが考えられる。

表−1 落石の主な誘因とその作用

  

 
落石のメカニズム(落石対策便覧 抜粋)

3−1 落石の運動形態

 落石の運動形態は次のように分類できる。


図−5 落石の運動形態の分類
 


図−6 落石運動の模式図
運動形態 概要
すべり運動 岩塊、礫、玉石等が斜面に沿ってずり落ちる運動。
回転運動 岩塊、礫、玉石等が斜面上を回転しながら下方へ移動する運動。
跳躍運動 空中を飛跳しながら移動するもので、地面または樹木などでバウンドしながら移動する場合と、発生箇所から道路または構造物などの停止位置まで途中バウンドすることなく空中を落下する場合がある。
 
3−2 落石の速度
 斜面を落下する落石の速度(落下速度)は、種々の要因に影響されるが、落下高さ(H)が最も大きく関わっている。そこで、落石高さ(H)と重力加速度(g)以外のすべての要因(斜面の勾配、斜面の土質、岩質、凹凸及び落石の形状等)を残存係数αで表せば、落下速度(V)は右の式で示される。
3−3 落石の運動エネルギー

 落石運動は、線運動と回転運動の複合運動である。したがって、落石の全運動エネルギーは、線速度エネルギーと回転エネルギーの和で表される。

 まず、落下速度を求める。「落下高さ(H)と重力加速度(g)以外の全ての要因」の中でも計測しやすい斜面勾配をθ、それ以外の要因をひとまとめにして「斜面の等価摩擦係数」と呼び、μで表すと残存係数αは次式で示される。

したがって、求める落下速度(V)は次式で計算できる。

なお、「斜面の等価摩擦係数」は、実験より以下の値が推奨されている。

表−3 斜面の種類と等価摩擦係数μの値

(出典:落石対策便覧)

よって、落石の全運動エネルギーは、最終的に次式で表すことができる。

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