1.法律の目的(第1条)
本法の目的は第1条に明文化されており、「この法律は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する
措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする」と国民の健康保護を最終目的とすることが書かれている。2.有害物質の定義(第2条)
第1条で言うところの「特定有害物質」については、第2条において「・・・政令で定めるものをいう」と定義している。「政令」とは「土壌汚染対策法施行令」のことで、カドミウム及びその化合物や六価クロム化合物など25種類の物質を特定している(詳しくは、当特集の【有害物質と基準値】に記載してある)。
3.土壌汚染状況調査(第3,4条)
第3,4条には、「どの様な土地に、土壌汚染の状況を把握するための調査が義務付けられているか」が述べらている。調査が義務づけられているのは、次の2つのケースである。
(1)使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は敷地であった土地の調査
使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は敷地であった土地の所有者、管理者又は占有者は、環境大臣が指定する調査機関に環境省令(※1)で定めた方法で調査させ、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。ここでいう「有害物質使用特定施設」とは、水質汚濁防止法の第2条第2項で規定する特定施設で、詳しくは「水質汚濁防止施行令」に記載されている(環境省ホームページ参照)。なお、跡地利用の方法からみて人の健康被害が生ずる恐れがない旨の都道府県知事の確認を受けた時は、調査義務はない。
※ 1 「土壌汚染対策法施行規則」(環境省令第29号)
(2)土壌汚染による健康被害が生ずる恐れがある土地の調査
現在使用中の土地であっても土壌汚染により人の健康被害が生ずる恐れがあると認められた場合、都道府県知事は、当該土地の所有者等に対し、「指定調査機関による汚染状況調査の実施とその結果報告」を命ずることができる。
4.指定区域の指定と台帳の調製(第5,6条)
調査を実施した結果、汚染されていると判明した土地については、次のような対応をすることになる。
都道府県知事は、土壌汚染状況調査の結果を踏まえ、環境基準に適合しない土地については、汚染されている区域として指定・公示するとともに、指定区域の台帳を調製・保管しなければならない。また、閲覧請求は正当な理由がなければ拒否することはできない。
5.健康被害の防止措置(第7,8,9条)
汚染している区域として指定され、しかも健康被害を発生させる可能性がある土地については、健康被害を防止するための措置を講じる必要がある。
(1)措置命令
都道府県知事は、指定区域内の土地の土壌汚染により健康被害が生じたりその恐れがある場合には、土地の所有者等に対し、汚染の除去等の措置を講ずる命令を出すことができる。
ただし、明らかに所有者等以外の者の行為が汚染原因になっている場合であって、この原因者に防止措置を講じさせることに所有者等に異議がないときは、汚染原因者に対し、汚染の除去等の措置を講ずる命令を出すことができる。
なお、汚染の除去等の措置に関する技術的基準は、環境省令(※1)で定めている。
(2)措置に要した費用の請求
都道府県知事の命令を受けて土地の所有者などが汚染の除去等の措置を講じたときは、汚染の原因者に対し、措置に要した費用を請求することができる。ただし、「措置を講じ、汚染原因者を知った時から3年間請求をしないとき」と「措置を講じてから20年を経過したとき」は、時効によって請求権は消滅する。
(3)土地の形質の変更届出及び計画変更命令
指定区域内における「無秩序な土地利用」に歯止めをかける条文である。指定区域内において土地の形質を変更しようとする者は、着手する14日前までに施行方法等環境省令(※1)で定める事項を都道府県知事に届けなければならない。都道府県知事は、その施行方法が環境省令で定める基準に適合しないと認めるときは、届出を受理した日から14日以内に限り、施行方法に関する計画の変更を命ずることができる。
6.指定調査機関(第10〜19条)
指定調査機関としての指定(※2)は、土壌汚染状況調査を行おうとする者の申請により、環境大臣が行う。指定をしたときは、その旨を公示しなければならない。指定調査機関は、土壌汚染状況調査の業務に関する規定(業務規定)を定め、調査の業務開始前に環境大臣に届けなければならない。
※2 環境省環境部管理局水環境部土壌環境課のホームページに掲載されている
「土壌汚染対策法に基づく指定調査機関の指定手続き等について」によれば、指定機関の第1回申込は、昨年の12月13日に締め切られている。第2回は、今年の4〜5月頃に予定している
。
7.指定支援法人(第20〜28条)
全国を通じて1個に限り支援指定法人(※3)が環境大臣により指定され、次の業務を行う。
・ 措置を講ずるものに対して助成を行う地方公共団体に対し、助成金を交付する。
・ 土壌汚染状況調査や措置等についての助言を行う。
・ 汚染が人の健康に及ぼす影響に関し、知識の普及と啓発を行う。
・ 基金の設置。
※3 新聞報道によれば(日刊工業新聞、2003年1月24日)、(財)日本環境協会が指定された。
8.そ の 他(第29〜42条)
土地の所有者等に対する「土壌汚染に関する調査や措置の実施状況についての報告や立ち入り検査」に関することや、違反したものへの罰則規定等が定められている。また、都道府県知事の権限の一部は、政令(※4)で定める市(例えば中核市)の長に委譲できる。
※4 「土壌汚染対策法施行令」
【附 則】(第1〜5条)
附則には、施行期日に関する「この法律は、公布の日(※5)の日から換算して9月を超えない範囲で政令の定める日(※6)から施行する」や制令への委任、あるいは法律の施行後10年経過したときの検討などが明文化されている。
※5 平成14年5月29日
※6 平成15年2月15日
|