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土壌汚染対策

  土壌汚染対策には、健康への被害が既に発生していたり被害発生が懸念される場合などにとられる「汚染源の隔離や立入禁止などの応急対策」と、「汚染物質を浄化・除去したり、封じ込めて拡散を防止するなどの長期に渡って安全を確保する恒久対策」がある。本特集では、恒久対策について調査を行った。恒久対策は、汚染物質や汚染された土地の周辺環境などによって色々な技術が開発されているが、大まかに次の様に分類される。

1. 浄化技術 

(1) 植物浄化

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 植物を利用して汚染された土壌を浄化する方法(ファイトレメディエーデーション)で、土壌ではないが良く知られるところでは、葦等の水生植物を使った浄化が河川や湖沼などで行われている。
 土壌汚染関連のニュースは、最近新聞記事として良く取り上げられている。いさぼうでは、そのような新聞記事を「いさぼうスクラップブック」としてスクラップしてあるが、その中から各対策に関連した新聞記事を、簡単に紹介していくことにする。

・中外テクノス(広島)は、イネ科のホソ麦を使い土中の微生物を活性化して重油などの油汚染を浄化する方法の事業化研究を昨年開始している(日刊工業新聞、 2002年9月26日)。
 
・神奈川工科大学の斉藤貴教授は、水草のオオカナダモ(金魚草の一種)などが環境ホルモン(内分泌攪乱物質)のフタル酸エステル(ジブチル)を浄化できることを明らかにしている(日刊工業新聞、2002年6月28日)。

(2) 微生物分解

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 微生物の働きを利用して浄化する方法で、バイオレメディエーションと呼ばれる。 PCBやダイオキシン等の難分解性有機塩素化合物に対する微生物分解浄化技術は、今後が期待されている。

・三菱商事は、環境ベンチャーのエコリサイクルと組んで、EDC(電子供与体)注入工法でバイオテクノロジー分野に進出する。従来工法と比べ極めて安価で、短期間に有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水を完全浄化できる。(科学工業日報 2004年9月27日)

・新日本製鐵では微生物の働きを活性化させるために、水を加えてスラリー状にして、さらに土壌菌の栄養源として窒素とリンを混ぜ、効率よく浄化する技術を開発した 。(日刊工業新聞、2002年4月17日)
 
・前沢工業は、好気性菌の放射菌を空気浄化で汚染土壌を浄化する工法に活用する技術を実用化した。(同)
 
・清水建設は低温だと微生物が活動しなくなる難点を克服した油汚染を浄化する技術を開発した。(日本経済新聞、2002年7月3日)
 
・同じ油汚染に関して、周防運輸(山口)は、8種類の微生物投与と前処理を行うことによってどんな土壌でも安定的に油を分解できる技術を開発した 。(日経産業新聞、2002年6月24日)
 
・大林組では、トリクロロエチレンで汚染された土壌を攪拌・気化させる方法で一次処理を行い、その後トヨタ自動車が発見した微生物を混ぜて浄化する技術を開発した 。(日本経済新聞、2002年8月22日)

(3)化学処理

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 汚染土壌や地下水に薬剤を添加し科学的に分解を行う方法で、「過酸化水素水と鉄を使うフェントン法などの酸化処理」、「紫外線などによる光化学処理」、「触媒分解」がある。

・アース・エンバイラーメンタル・プロテクション(埼玉)は、石灰岩や火山灰に含まれる珪酸物質を利用して有害性有機物を酸化処理する技術を開発した。この技術は、超音波振動で有害物質を土粒子から分離した後、土に水と分離促進剤を加え混合・攪拌するだけで浄化できる。(日経産業新聞、2003年1月17日)
 
・大林組は、「金属ナトリウム等の還元剤と触媒を添加してダイオキシン類の塩素を水素に置換して無害化するハロゲン化技術」をドイツから導入した。(日経産業新聞、2002年12月13日)
 
・興研は電解機能水を利用した紫外線分解式の装置を開発した。(日刊工業新聞、2002年9月27日)
 
・また薬品の代わりに電気を使って有害有機物を分解する工法もある。栗田工業はドイツ企業から電気を使って有害有機物を分解する技術を導入している。電気化学分解法と呼ばれる技術で、「直流電流を流して土壌粒子に帯電させ、粒子を強い酸化力の状態にすることによって、有機化合物を酸化分解する仕組み」で、掘削作業が必要ないことなどが特徴である 。(日刊工業新聞、2001年7月3日)

(4) 熱分解

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 熱を加え焼却することによって汚染物質を分解する方法で、有機化合物汚染に用いられる。一般的に、処理温度が800〜1000℃と高温であるため、非意図的な副生成物が生ずることもあり、排ガス処理設備などが必要となる。

(5)熱脱着

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 汚染土壌を加熱することにより、比較的沸点が低い汚染物質を土壌から脱着・分離する方法で、水蒸気を加えたり沸点を下げるための添加剤を加える工法もある。温度は熱分解より低く、100〜1000℃で浄化対象汚染物質によって異なる。熱分解と同様に、副生成物の発生には対策が必要である。

・ 三井建設と三井道路は共同で、100〜200℃の低温で加熱・浄化することにより、副生成物の発生量を押さえ土性の変化を無くすことができるプラントを開発した。(日刊工業新聞、2002年12月13日)

(6)土壌分級洗浄

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 汚染土壌を機械的に洗浄して有害物質を除去する方法で、比較的実績も多い。汚染物質の吸着濃度が土壌の粒径により違うことに着目して、土壌の粒径をクラス分け(分級)し、汚染濃度の高いクラスを分離した上で、汚染物質を洗浄する方法である。

・大林組は、重金属による汚染土壌を高精度に分級した後、付着している汚染水分を切ることで、最終的に汚染土壌を「健全土」と「汚染土」に分級するプラントを開発した。この方法では、「健全土」は再利用し、「汚染度」は最終処分場に埋め立て処分する。(日刊工業新聞、2002年9月18日)

(7)地下水揚水等

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 汚染地下水を汲み上げ、地下水に溶けている汚染物質を除去・回収することにより浄化処理を行う方法で、汲み上げられた地下水は「ばっ気処理」や「活性炭吸着処理」、「化学分解」などで処理される。

・地下水揚水ではないが、藤基礎工業(東京)は真空バキューム方式で土壌・ガスを吸引しながら回収し、代わりに添加剤を加えた「竹炭粒子」を高圧で噴射注入して置き換える工法を開発した 。(日経産業新聞、2002年8月1日)

2. 封じ込め技術

(1) 遮水工封じ込め

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 遮水工封じ込めは、「土壌汚染対策法施行規則」(平成14年12月26日、環境省令)で規定する「第一種特定有害物質による地下水汚染を経由した健康被害を防止するための措置」として、「土壌汚染の除去」とともに認められている。省令では、「第二溶出基準に適合する汚染状態にある土地について、汚染土壌を当該地から掘削し、当該土地に地下水の浸出を防止するための構造物を設置し、及び当該構造物の内部に掘削した汚染土壌を埋め戻すこと」と定義されている。第二溶出基準とは、省令の「別表第四」に示す汚染基準で、この基準に適合しない汚染状態のものは、有害物質が水に溶出しないように性状を変え第二溶出基準に適合させるための「前処理」が必要となる。

< 別表第四 >

特定有害物質の種類 第二溶出量基準 特定有害物質の種類 第二溶出量基準
  (検液1リットルにつき)   (検液1リットルにつき)
カドミウム及びその化合物 カドミウム0.3mg以下 セレンおよびその化合物 セレン0.3mg以下
六価クロム化合物 六価クロム1.5mg以下 テトラクロロエチレン 0.1mg以下
シマジン 0.03mg以下 チラウム 0.06mg以下
全シアン化合物 シアン1mg以下 1,1,1-トリクロロエタン 3mg以下
チオベンカルブ 0.2mg以下 1,1,2-トリクロロエタン 0.06mg以下
四塩化炭素 0.02mg以下 トリクロロエチレン 0.3mg以下
1,2-ジクロロエタン 0.04mg以下 鉛及びその化合物 鉛0.3mgl以下
1,1-ジクロロエチレン 0.2mg以下 ヒ素及びその化合物 砒素0.3mg以下
シス-1,2-ジクロロエチレン 0.4mg以下 ふっ素およびその化合物 ふっ素24mg以下
1,3-ジクロロプロペン 0.02mg以下 ベンゼン 0.1mg以下
ジクロロメタン 0.2mg以下 ほう素およびその化合物 ほう素30mg以下
水銀及びその化合物 水銀0.005mg以下 PCB 0.003mg以下
アルキル水銀 検出されないこと 有機りん化合物 1mg以下
       

 なお、省令では以下のように、特定有害物質を三種に分類している。

第一種特定有害物質
四塩化炭素
1,2-ジクロロエタン
1,1-ジクロロエチレン
シス-1,2-ジクロロエチレン
1,3-ジクロロプロペン
ジクロロメタン
テトラクロロエチレン
1,1,1-トリクロロエタン
1,1,2-トリクロロエタン
トリクロロエチレン
ベンゼン
第二種特定有害物質
カドミウム及びその化合物
六価クロム化合物
全シアン化合物
水銀及びその化合物
アルキル水銀
セレンおよびその化合物
鉛及びその化合物
砒素及びその化合物
ふっ素およびその化合物
ほう素およびその化合物
第三種特定有害物質
シマジン
チオベンカルブ
チラウム
PCB
有機りん化合物
(2) 遮断工封じ込め

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 遮断工封じ込めは、「第二種特定有害物質による地下水を経由した健康被害を防止するため措置」として、「現位置不溶化」、「不溶化埋め戻し」とともに省令で規定されている。省令では、「汚染土壌を当該土地から掘削し、当該土地に必要な水密性及び耐久性を有する構造物を設置し、並びに当該構造物の内部に掘削した汚染土壌を埋め戻すこと」と書かれている。構造物は鉄筋コンクリート製、あるいは同等以上の容器で、一軸圧縮強度や厚みなどの性能も規定されている(省令別表第五)。また、地下水の下流側周縁に観測井を設け、一定期間、定期的に地下水の採取・分析が義務づけられ、汚染が生じていないことを確認する必要がある。
 なお、第三種特定有害物質による汚染の場合は、「土壌汚染の除去」と「遮断工封じ込め」、「遮水工封じ込め」が汚染の除去などの措置として認められている。

(3) 覆土・盛土

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 特定有害物質に汚染され、且つ人が立ち入ることができる(立ち入りに制限を受けない)土地の場合は、省令第十八条第二項の基準(別表第三)を満たす土壌で覆うことができる。省令ではこれを「盛土」と定義している。工場や事業所などで「関係者以外の者の立ち入りができない土地」は、除かれる。また、舗装も汚染の除去などの措置として認められている。
 なお、別表第三(第二種特定有害物質に対応している)を以下に掲載する。

< 別表第三 >

特定有害物質 要件
カドミウム及びその化合物 カドミウム150mg以下
六価クロム化合物 六価クロム250mg以下
全シアン化合物 遊離シアン50mg以下
水銀及びその化合物 15mg以下
セレンおよびその化合物 150mg以下
鉛及びその化合物 鉛150mg以下
砒素及びその化合物 砒素150mg以下
ふっ素およびその化合物 ふっ素4000mg以下
ほう素およびその化合物 ほう素4000mg以下
 
(4) 固化処理

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 固化処理は、セメント系などの固化剤を混合して固形化し、主に重金属汚染物質を安定化する方法である。固化剤はセメントがよく使われるが、他にもアスファルト系や珪酸塩系、熱可塑性ポリマー系等もある。

・シーリングソイル協会は、東大の湊秀夫名誉教授が開発した「天然鉱物資源の反応を利用して固化させる工法」を提唱している。天然鉱物資源(ゼオライトやシリカ、アルミナなど)を使うため、化学薬品などの中和法と違い2次汚染がないのが特徴となっている 。(日刊工業新聞、2002年12月4日)

(5) 不溶化処理

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 不溶化処理は、重金属によって汚染された土壌に各種の化学薬品(薬剤)を混合して、不溶性(難溶性)の物質に変えて安定化する方法である。使用される薬剤は、処理の対象となる重金属によって異なるが、次亜塩素酸ソーダや硫化ナトリウム、硫酸第一鉄などが代表的である。

・ 松村組は麻生ファームクリートと共同で、掘削機で目的地点まで掘り進み、そこから掘削径を広げて薬剤を注入・攪拌してピンポイントで不溶化処理する「L&Rジオファイン工法」を開発した 。(日経産業新聞、2002年11月19日)

(6) 溶融固化

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 汚染土壌を1600℃以上の高温で加熱・溶融しガラス固化する技術で、有機化合物や重金属など多くの汚染物質に適用できる。焼却炉による固化の他に、電気を使って固化する方法もある。
2001年2月19日の朝日新聞によれば、「和歌山県橋本市で全国初の電気を使って汚染物質をガラス固化する工法(ジオメルト工法)が採用される見通しである」と報じられている。この工法は、地中に大容量の電流を流し、1600℃以上の高温で土壌もろとも汚染物質をガラス固化する技術である。

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