 【出版社】:祥伝社
【ISBN】: 4396630050
(1998/09出版 )
【ページ】:284p (単行本)
【本体価格】:\1,408(税別)
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『秀吉秘峰の陰謀(佐々成政の飛騨雪中行)』
【著】長尾 誠夫
雪崩をテーマにした本ではないが珍しい本を紹介する。NHK大河ドラマ「利家とまつ」も既に終盤に入り当該シーンの放映は終わってしまったが、佐々成政のザラ峠越えを扱った長尾誠夫の長編歴史推理小説「秀吉秘峰の陰謀(佐々成正の飛騨雪中行)」(祥伝社)である。
真冬の立山、称名滝で主人公の男と七人の刺客が死闘を繰り広げ、雪庇が張り出した崖の下で銃を撃たせ雪崩を誘発させるシーンからこの小説は始まっている。男が何者であるかは、読んでのお楽しみとしよう。前半の山場は、前田利家と佐々成政がその後の運命を決めた末森城(能登半島の地図では丁度氷見市の西側、石川県にある宝達山の北側に位置する)の戦いである。利家の援軍の進路は史実と違うようであるが、小説の流れから言えば些細なことであろう。末森城の戦いで敗れた佐々成政は、家臣と評議を開き真冬の飛騨山脈越えを決断するのである。その雪中行が小説の最大の山場である。 雪中行は、立山信仰の発祥の地である芦峅寺から常願寺川を遡り立山温泉を通りザラ峠(標高2300m)を越え、さらに中ノ瀬平で黒部川を渡り針ノ木峠(2600m)を越えて大町にでるルートで、その間約十里を3日で越えようと言うものであった。総勢33名の雪中行は予想通り困難を極め、立山温泉での刺客との死闘や雪崩で17名を失った後も逃げ帰る者や発狂する者もでて、無事針ノ木峠を越えるのは成政と男の二人だけである。途中、黒部峡谷に掛かっていた“籠の渡し”が刺客によって切り落とされあわや凍え死ぬかと思われるシーンがあるが、ここでは今まで悩まされた雪崩によって助けられることになる。莫大なエネルギーが生じると言われるアワ雪崩が発生し、それによって生じた巨大なデブリ(雪塊)が黒部川をせき止め、このデブリのおかげで対岸に渡ることができたのである。
推理小説の紹介であまりくどくどと書くのはよろしくないので、この辺でキーを叩くのを終えるが、大河ドラマの放映に触発され十数年ぶりに読み返してみたがやはり面白い小説である。推理小説がお好きな方にお薦めする。
2002年11月【文責:知取気亭主人】 |