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 ~特集~「軽量盛土工法」 
 「軽量盛土工法」のいろは
 

■軽量盛土工法とは
 一般的な盛土材料である土砂の3/4~1/100程度の重量しかない軽量な盛土材を用いる工法です。 軽量な盛土材を用いる事により、土圧の軽減・底面への荷重の軽減を図ります。 また、自立性を有する材料では壁面に作用する側圧を大幅に軽減できることから、壁面材を簡略化し表面保護工程度の壁面を構築するだけで盛土を構築できます。
 代表的な軽量盛土材には、EPS(発泡スチロール)やFCB(気泡混合軽量土)、発泡ウレタンなどが用いられています。

<主な軽量盛土材>
開発年 軽量盛土材 単位体積重量
(kN/m3)
摘要
?~ 火山灰土 12~15 シラス等
1961~ FCB 5~12  
1985~ EPS 0.12~0.3  
1986~ 水砕スラグ 10~15程度  
1987~ 発泡ビーズ混合軽量土 7程度以上  
1990~ 発泡ウレタン 0.3~0.4  
1997~ 廃棄ガラス 4~14 発泡させる
2000~ タイヤチップス 日本での実績は少ないが
米国では多い

■軽量盛土工法のメリット
 軽量盛土材を用いた際の特徴を以下に示します。
(1) 一般的な”土砂を裏込とする盛土”に比べて、盛土荷重を軽減できることにより、軟弱地盤での沈下の抑制、あるいはその対策工の軽減を図ることや、傾斜地での地すべりの誘発を防ぐことが出来ます。
(2) 一般的な”土砂を裏込とする盛土”に比べて、沈下量を減らすことが出来るため、維持管理にかかる費用を削減することが出来ます。
(3) 自立性のある軽量材を用いることにより、作用土圧が軽減できるため、擁壁の保護壁となる壁面材を簡略な構造とすることが出来ます。
(4) 大型重機を必要としない事から、施工条件の厳しい現場でも大掛かりな仮設を行う事なく施工することが出来ます。
(5) 急峻な斜面上において、一般的なコンクリート擁壁を採用するよりも底版幅を狭くすることが出来ます。これにより、自然斜面の改変規模を抑えることが出来ます。

■軽量盛土工の概要
 代表的な軽量盛土材についての概要を以下に示します。

【代表的な軽量盛土材:1.EPS】
EPS工法とは、大型の発泡スチロール(EPS)ブロックを積み重ねて盛土体を構築する工法です。
ここでEPSとはExpanded Poly-Styrolの頭文字を取ったもので、「発泡させたポリスチロール」と言う意味になります。
標準のブロックサイズは1.0×0.5×2.0mで人力での運搬が容易です。
これを緊結金具を用いて結合させながら積み重ねていきます。
また、不陸の調整や荷重の分散・有害物の浸透防止のために高さ3.0mごとに15cmのコンクリート床板を設けます。

緊結金具

画像引用元:カネカケンテック株式会社

EPS工法を用いる際には下記に示す項目について留意が必要となります。
・ガソリンや重油などの有機溶剤によって溶解してしまいます。
・火気に対して難燃性ではあるものの、非燃性ではないため注意が必要となります。
・端部などでEPSブロックのカットが必要となります。
 (電熱線を用いて切断。切カスが出るためノコギリの使用は控える。)
・仮置き時など、風で飛ばされないための注意が必要となります。
・HWL以下では浮力の検討が必要となります。(浮力対策ブロックの使用)

【代表的な軽量盛土材:2.FCB】
 FCB工法とは、硬化前のセメントもしくはモルタルに気泡を含ませたものを、打設・硬化させて盛土体を構築する工法です。 ここでFCBとはFoamed Cement Bankingの頭文字を取ったもので、「発泡させたセメントの盛土」と言う意味になります。
 一般的な製造方法は原料土(砂質土)とセメント・水を混合してスラリー状(泥状)にしたものに微細な気泡を混合させます。 この気泡を潰さないように打設・硬化させたものがFCBになります。 気泡を潰さないようにするため、1日の打設高さは1.0m程度以下とされています。

FCB工法を用いる際には下記に示す項目について留意が必要となります。
・現地混合を行う事から大掛かりなプラントが必要となります。
 (施工規模が小さい場合はアジテーター車をプラントの代わりに使う事も有ります)
・雨天時には、雨水によって気泡が消失してしまうため、施工不可となります。
・原則的に打設厚さ1.0m以下であることから、工期が長くなる恐れがあります。
・冬季施工の場合、一般的なコンクリートと同様に強度が発現しにくく、養生管理に日数を要します。
・HWL以下では浮力の検討が必要となります。(配合で比重を重くする)

【代表的な軽量盛土材:3.発泡ウレタン】
 発泡ウレタンは、2種類の薬液を混合することによって出来る硬質ウレタンフォームを盛土体とする工法です。 ポリオール成分とポリイソシアネート成分の液体を混合することによって化学反応が起こり、ウレタンポリマーが生成されます。 ここに、下図の①②③を添加して発泡処理を行うことで微細な独立気泡を内包した硬質ウレタンフォームになります。

発泡ウレタンを用いる際には下記に示す項目について留意が必要となります。
・現地混合を行う事から施工ヤードが必要とります。
・周辺環境と材料安定性のため、施工ヤードを完全に覆う必要があります。
 (吹付作業時には必要に応じて保護眼鏡、防毒マスク、手袋などが必要)
・特殊工事であるため、熟練工や高度な品質管理が必要となります。
・原料が危険物指定のため、厳重な保管管理が必要となります。
・原料の液体の状態では火気厳禁です。 硬化した状態では火気に対して難燃性ではあるものの、非燃性ではないため注意が必要となります。
・HWL以下では浮力の検討が必要となります。

■まとめ
 軽量盛土工法は、材料費だけを比較すると土砂を用いた盛土工法とでは不利になることが多いと思われます。
 しかし、軽量盛土工法は『軽量性・自立性』によって様々な恩恵を受ける事が出来るため、特に軟弱地盤や急傾斜地などでは適用性の高い工法です。 現場の条件によって最適な工法をご検討ください。

・軟弱地盤対策(地盤改良など)が不要となったり、または軽減が図れます。
・完成後の沈下を抑制できるため維持管理費が少なくて済みます。
・擁壁を配置する工法に比べ、取得する用地幅を狭めることが出来、さらに斜面の改変規模を抑えることが出来ます。
・大型重機を必要としないことから、狭小地や軟弱地盤でも人力での施工が可能です。
・擁壁を配置する工法に比べ、仮設工事の規模を縮小することが出来ます。

種別 従来の一般的盛土工法
(コンクリート擁壁+裏込土砂)
軽量盛土工法
壁体 もたれ式擁壁
L型擁壁
逆T型擁壁
みぞ型鋼支柱+コンクリートパネル
極薄コンクリートパネルを貼付け
モルタル吹付
盛土体 購入土、現地発生土
γ=18~20(kN/m3)
EPS、FCB、発泡ウレタン
γ=0.1~12(kN/m3)
施工性 大型重機が必要
仮設が大規模
大型重機は不要
仮設は小規模
軟弱
地盤


杭基礎や地盤改良などが必要



対策工が不要または軽減可能
維持管理費の抑制

急傾
斜地



自然斜面の改変が大規模となる



自然斜面の改変規模を抑えられる


※参考資料
○「EDO-EPS工法 設計・施工基準書(案)(2014年11月)」発泡スチロール土木工法開発機構
○「気泡混合軽量土を用いた軽量盛土工法の設計・施行指針(平成8年9月)」日本道路公団
○「発泡スチロール土木工法開発機構 HP」(http://www.cpcinc.co.jp/edo/kikou.html)
○「FCB研究会 HP」(http://www.fcb-ken.e-const.jp/index.html)
○「ウレタン土木技術研究会 HP」(http://www.r-pur.jp/)
○「道路土工 擁壁工指針(平成24年7月)」社団法人 日本道路協会

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