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今回の軽量盛土工法は、「現場発泡ウレタン超軽量盛土工法」についてご紹介します。
この工法は、現場でポリウレタンフォーム(foam:発泡体)を形成し、盛土体として用いる工法です。
ポリウレタンを用いた製品では、建築物の断熱材や食器洗い用のスポンジ、クッション材(マットレス・ソファー)、自転車のサドル、水耕栽培の苗床、自動車のバンパーなどが挙げられます。
■現場発泡ウレタン超軽量盛土工法の概要
ポリウレタンフォームは2種類の薬液を混合することによる化学反応により、原液の30倍に発泡し硬化する特性があります。
この状態の単位体積重量は0.35~0.40(kN/m3)と軽量で、一般的な土砂の1/50となっています。
また、許容応力度は60(kN/m2)と盛土材として十分な強度を有しています。
下記にポリウレタンフォームの施工状況(写真-1)を示します。

画像引用元:ウレタン土木技術研究会
■現場発泡ウレタン超軽量盛土工法の特徴
<軽量性>
ポリウレタンフォームは単位体積重量が0.35~0.40(kN/m3)と非常に軽量です。
このポリウレタンフォームを盛土材として用いる本工法は、従来の土砂を用いる工法に比べ、大幅な土圧の低減が可能です。
<現場発泡>
本工法では、現場において必要量を発泡させるため、材料の運搬量を少なくすることが出来ます。
また、吹付けガンから噴射された瞬間は液状で、吹付後25~65秒程度で発泡・硬化します。
この特性から複雑な地形への対応や、狭小箇所の埋戻や充填などにも優れています。
老朽化した橋梁等の下部を隙間なく充填でき維持補修工事としても利用できます。
<安定性>
結合部や継ぎ目のない、一体化したポリウレタンフォームを形成できるため安定性の高い構造となります。
また、硬化後は自立性を有する(ポアソン比0.05~0.1以下)とともに、ある程度の柔軟性も備える事から、基盤の変形にも追随することが出来ます。
<接着性>
自己接着性を有しており発泡・硬化と同時に強く接着したポリウレタンフォームを作成することが出来ます。
この特性から、周辺構造物等と一体化した構造となります。
<その他>
・発泡材としてフロン類は一切使用していません。
・難燃性であり、火源がなくなれば消化する自己消火性を備えています。
・ガソリンや軽油等にも溶解しません。
■現場発泡ウレタン超軽量盛土工法の留意点
ポリウレタンフォームは発泡・硬化すると、安定した特性となりますが、原料となる薬液の状態では取扱いに注意が必要です。
<水分に注意>
ポリウレタンが発泡・硬化反応中に水分が混入すると異常反応を起こしてしまいます。
・雨養生シートを仮設として設ける場合が有ります。
・ポリウレタンが水分と接触するのを防ぐために、必要に応じて反応形プライマーを湿った地山に塗布します。
<火気に注意>
・ポリウレタンの原料となる薬液の状態では、消防法上の危険物に該当し火気厳禁となります。
<その他>
・現地で薬液からポリウレタンフォームを作成するためには施工プラントが必要です。施工プラントに必要な機材は4tトラックに全て積載できるため、4tトラックと原料のドラム缶を設置するスペースが有れば施工可能です(写真-2参照)。

画像引用元:ウレタン土木技術研究会
■現場発泡ウレタン超軽量盛土工法の豆知識
・一般的な施工プラントでのポリウレタンフォームの製造能力は1日当たり90~118m3となっています。
・ポリウレタンの原料となる薬液を6000リットル以上取り扱う場合は、所轄の消防署の承認を受ける必要が有ります。
・メーカーにより適用範囲が異なるため、留意する必要が有ります。
■まとめ
現場発泡ウレタン超軽量盛土工法は1990年に国内に導入され、軟弱地盤上の盛土や拡幅工事、急傾斜地盤上での盛土工事、狭小な空間の埋戻しなどに採用され、2017年3月までに約47万m3の実績を誇ります。
このように素晴らしい特性を持つ現場発泡ウレタン超軽量盛土工法ならば、厳しい現場条件においても対応できるのではないでしょうか。