植生工を分類しようとした場合、大きく2種類の分類があります。
一つは、使用する植物材料の形態による分類です。「種をまく」、「苗木を植える」のかで、種をまくのは播種工と呼び、一方、苗木を植えるのは植栽工と呼んでいます。植栽工はさらに芝等の草本を用いる場合と、木本類を用いる場合があり、その選定は土壌硬度やpHなどの土質、地質、地形情報から行うのが基本です。
加えて最近では、周辺への環境(周辺が樹林、自然公園、草地、農地など)や永続性などを配慮し、目的を達成するための選定が大きなウェイトを占めるようになってきています。
元来、のり面緑化は、のり面の侵食防止を目的とするところが大きく、草本の地被植物が多く用いられてきました。しかし最近は、自然環境の保全、維持管理を軽減するために行う植生工として、木本を用いる場合が増加しています。
植生工のもう一つの分類として、施工方法によることもあります。
●機械による植生工の種類
種子散布工、客土吹付工、植生基材吹付工
●人力により植生工の種類
張芝工、植生マット工、植生シート工、筋芝工、植生筋工、植生土のう工
植生工の根系は、比較的表層のみにとどまることから、深いすべりを生じるようなのり面には抑止としての効果はなく、また、高架や橋梁のような構造物の下で日光や雨が当りにくい所や土の乏しい岩盤のり面、あるいは酸性性土壌ののり面等では植物の生育が難しい。のり面勾配についても、1:0.8未満の急なのり面では一般に施工が困難で、のり面勾配が1:0.8〜1:1.2程度の法面でも、土質によっては、植生工のみではのり面の侵食や表層崩落のおそれのある場合があるます。よって、このようなところについては構造物によるのり面保護工を適用する必要があります。
<機械播種施工による植生工の種類と特徴>
工種 |
種子散布工 |
客土吹付工 |
植生基材吹付工 |
施工方法 | ポンプを用いて基盤材を1cm未満に散布する。 |
ポンプまたはガンを用いて客工を厚さ1〜3pに吹き付ける。 | ・ポンプまたはモルタルガンを用いて植生基材を厚さ1〜10cmに吹き付ける。 |
使用材料 |
基盤材 |
・木質繊維(ファイバー)等 | ・土(黒ボク等) |
・人工土壌または有機基材等 (土,木質繊維,バーク堆肥,ピートモス等) |
浸食防止剤または接合材 | 粘着剤,被膜剤等 |
粘着剤,被膜剤,合成樹脂,繊維等 | 高分子系樹脂,セメント,繊維等 |
植物種子 | 外来草本 在来草本 |
木本(先駆植物) 外来草本,在来草本 | 木本 外来草本,在来草本 |
肥料 | 高度化成 |
緩効性(山型),PK化成 高度化成(草本適用) | 緩効性(山型),PK化成 高度化成(草本適用) |
補助材料 | 繊維網,金網,むしろ,編柵 |
繊維網,金網,むしろ | 繊維網,金網,むしろ |
浸食防止剤または接合剤の耐浸食性 |
耐降雨強度 | 10mm/hr程度 |
10mm/hr程度 | 10〜100mm/hr程度 (使用する接合材によって異なる) |
期間 | 1〜2ヶ月程度 |
1〜2ヶ月程度 | 1年〜10年程度 (使用する基盤材や接合材によって異なる) |
適用条件 |
地質 |
土砂
(土壌硬度23o以下) | 同左および礫質土 |
同左および岩,モルタル吹付面 | 勾配 |
1:1.0より緩勾配 | 1:0.8より緩勾配 |
1:0.8より緩勾配 (使用する基盤材や接合材によって異なる) |
備考 |
・肥料分の少ない土質では追肥管理を必要とする。 |
・肥料分の少ない土質に草本類を導入した場合には追肥管理を必要とする場合が多い。 |
・肥料分の少ない土質に草本類を導入した場合には追肥管理を要する場合もある。 ・滑落することのない工法や基材,接合材を使用する。 |
工種標準図 |
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「道路土工 のり面工・斜面安定工指針」(H11.3 p.223) |
工種 |
張芝工 |
植生マット工 |
植生シート工 |
筋芝工 |
植生筋工 |
植生土のう工 |
施工方法 | 全面に張り付ける。 |
全面に張り付ける。 | 全面または帯状に張り付ける。 |
切芝を土羽打ちを行いながら施工。 | 種子帯を土羽打ちを行いながら施工。 |
植生土のうまたは植生袋を固定する。 |
使用材料 |
基盤材 |
切り芝,ロール芝 | 種子,肥料,生育基盤材等を包含,装着した厚みのあるマット状のもの |
種子,肥料等を装着したシート状のもの | 切り芝 |
種子,肥料等を装着した繊維帯 | 繊維袋に土または改良土,種子等を詰めたもの |
植物 | 切り芝→野芝 ロール芝→外来草本 |
外来,在来草本種子 | 外来,在来草本種子 |
野芝 | 外来,在来草本種子 |
木本種子外来,在来草本種子 | 肥料 |
化成肥料, 緩効性肥料 | 高度化成肥料 |
高度化成肥料 | 化成肥料, 緩効性肥料 |
高度化成肥料 | 堆肥,PK化成肥料,緩効性肥料 |
補助材料 | 目ぐし,播土,目土 |
目ぐし,アンカーピン | 目ぐし,アン力一ピン,播土または目土 | | |
目ぐし,アン力一ピン |
併用工 | | | | | |
溝切工,のり枠工 |
施工後の耐浸食性 | 比較的大きい |
大きい | 大きい |
小さい | 小さい |
大きい |
適用条件 |
地質 |
粘性土
(硬度27o以下) 砂質土
(硬度23o以下) | 同左 |
同左 | 同左 |
同左 | 肥料分の少ない土砂,または硬質土砂,岩 |
勾配 | 1:1.0より緩勾配 |
1:1.0より緩勾配 | 1:1.0より緩勾配 |
1:1.2より緩勾配 | 1:1.2より緩勾配 |
1:0.8より緩勾配 |
備考 |
・小面積で造園的効果が必要である場合に使用。 |
・マットをのり面に密着させる必要がある。 | ・シートをのり面に密着させる必要がある。 ・肥料分の少ない土質では追肥管理を要する場合がある。 |
・小面積の盛土に適用。 ・砂質土には不適。 | ・小面積の盛土に適用。 ・肥料分の少ない土質では追肥管理を必要とする。 ・砂質土には不適。 |
・勾配が1:0.8より急なところでは落下することがある。 ・草本種子を使用する場合には保肥性の優れた土とする。 |
工
種
標
準
図 |
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