これまでの緑化工では一般に、外来種を用いた草本類(外来草本類)が主体で施されてきました。外来草本類は、発芽、生育が容易なことや、初期生長が早く、早期にのり面を被覆し、降雨などによる浸食を防止する効果が大きいことや、比較的入手が容易であることが主な理由でした。
しかしその反面、周辺の植物群落と調和がとれないことや、生態系に悪影響をおよぼすといった問題があり、また、肥料分の要求度が高いことから、施工後2〜3年で衰退することが多いこと、そして、根の深さが一定で浅いため、根の先端付近から滑落しやすくなるといった欠点がありました。
そこで近年では、郷土種の木本類を主体とした樹林化工法が求められるようになってきました。ただ、木本類にも発芽、生育に時間を要するといった欠点があるため、草本類を補助的に混播します。その際、草本類の配合量を減じ、緩効性の肥料を使用して被圧させないことが重要になってきます。下表に緑化目標別の種子配合と発生期待本数の目安を記します。

緑化目標別の種子配合と発生期待本数の目安(「のり面保護工施工管理技術 テキスト」p.63)
●表土保全工法
森林の林床の表面にある土壌は表土といわれ、一般に腐食に富み、保水性・保肥性に優れています。そして、そればかりではなく、多くの微生物が生息し落ち葉の分解を助け、植物の健全な生育に欠かせない環境要因のひとつになっています。
また、表土は埋土種子が豊富にあり、植生遷移がスムーズに行われます。
切土のり面において、表土は防災面からは不要の存在ですが植栽基盤としては不可欠な存在になると考えられます。
そこで、土工造成工事の際に発生した表土を保存し、土羽土または客土として再びのり全面に被覆するといった表土保全工法が、自然環境の回復にとって有効な手段として用いられています。
|