皆様がお使いになっているパソコンのハードディスク、USBメモリ、外付けハードディスクの容量はどれくらいでしょうか?
今回はデータを保存する記憶媒体の進化と記憶媒体の容量増加がどのような変化をもたらしたのかについてまとめてみました。
現在主流の記憶媒体は下表で示すように大きくわけて光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリの3種類があります。
種類 |
製品 |
光ディスク |
CD、DVD、Blu-ray Disk |
磁気ディスク |
フロッピーディスク、ハードディスク |
半導体メモリ |
主メモリ、USBメモリ、ソリッドステートドライブ(SSD) |
光ディスクはCD→DVD→Blu-ray Discの順で登場し、それぞれ当時の新技術を利用して発明されました。容量はCDが700MB、DVD(片面1層)が4.7GB、Blu-ray Disc(片面1層)が25GBなので、光ディスクの容量は新技術の登場と共に増加してきたことが分かります。
フロッピーディスクは様々な種類があり、それによって容量が異なります。最も普及した3.5インチ2HDは1.44MBです。CDとDVDの容量はその約486倍と約3,264倍程度ですので、それらの容量は大幅に向上しています。また、3.5インチのフロッピーディスクの大きさは約81cm2(9cm×9cm)です。これに対して、CDとDVDは約113cm2(6cm×6cm×3.14)であり、記憶媒体の大きさは1.4倍程度ですが、容量はそれを凌駕する増加率になっています。
ハードディスクと半導体メモリは容量が年々成長する記憶媒体です。20年前の1995年の3.5インチハードディスクは4GB程度の容量でした[1]。一方、現在では4TBのものが存在します。ということは、容量は20年で1,000倍なったことになります。半導体メモリの容量は1995年で64MB[2]、現在は1TBの半導体メモリがソリッドステートドライブとして登場しているので15,625倍にもなりました。下図はR. Fontanaらの資料[3]に記載されている2008年から2013年までの平方インチあたりの容量をグラフ化したものです。この図からも容量は年々増加していることが分かります。
ハードディスクやUSBメモリなどは面積あたりの容量が増加しているので、大きさを変えることなく容量を増やすことができるようになりました。逆に言えば、容量をそのままに小型化もできるようなりました。
今後、ハードディスクや半導体メモリの容量はどうなるのでしょう?
R. Fontanaらの資料[3]では今後の容量を推定しています。2020年にはハードディスクは25TB程度、半導体メモリは8TB程度になるのではないかと予想しています。
しかし、半導体メモリに限って言えば、ムーアの法則の限界によって大容量化にするためには何かしらの手を打つ必要がでてきました。半導体を利用しているCPUではコア数を増やすことで性能向上を実現しています。半導体メモリでは3次元に半導体を積み上げることで大容量化を実現しようとしています。
さて、五大開発社は計測データ図化システム「GGRAPH」を皮切りに1990年頃、OSがMS-DOSの時代から様々な土木用のソフトウェアを販売しています。昔はフロッピーディスクでそれらを提供していました。現在ではCDやDVDで提供しています。記憶媒体の容量増加がもたらしたものを、斜面安定工設計のための支援ソフトウェア「ANCHOR」で見てみましょう。
ANCHOR Ver.1.0の取扱説明書(1993年3月第1版第1刷発行、MS-DOS版)を見てみますと、プログラムディスクとしてフロッピーディスク3枚として販売していました。その内訳はセットアップディスク1枚、キーディスク1枚と印刷書式ディスク1枚です。実際に計算するプログラムはセットアップディスクと印刷書式ディスクですので、フロッピーディスク2枚分となり、約2MB前後です。
一方、2015年4月時点のANCHORの最新版(Ver.13.02)はCDとして提供しています。このバージョンのインストールディレクトリのサイズを確認すると189MBでした。もし、このサイズをフロッピーで提供した場合、130枚程度必要となります。記憶媒体の容量が増加したことで、より多くの機能を搭載した製品を提供でき、利便性が大幅に向上しました。

ANCHORのインストールメディア |
その一例として操作画面の違いを見てみましょう。下図の(a)は最新版のANCHORの操作画面です。一方、(b)は取扱説明書に記載されていたANCHOR Ver.1.0の操作画面です。(当時はカラーのブラウン管ディスプレイが存在していたので実際はカラーです。)
(a)最新版のANCHORの操作画面 |
(b)ANCHOR Ver.1.0の操作画面(取扱説明書から取得した操作画面なのでモノクロですが、実際はカラー)
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最新版は1つのウィンドに表示される情報量が多く、図も表示されているので直感的に操作ができます。ANCHOR Ver.1.0では当時のパソコン(要求スペック:PC-9801シリーズ、640KBメモリ)の性能も影響しているので操作画面で表示できる情報は非常に少ないです。
記憶媒体の容量が増加することで多くのデータを保存できるだけでなく、多機能なソフトウェアの提供にもつながっていることが分かります。
先に、今後もハードディスクや半導体メモリの容量は増加することを述べましたが、今日の容量以上のものを望んでいるところはどこでしょうか?
以前の記事で取り上げたスーパーコンピュータはその代表的な一例です。スーパーコンピュータでは大規模なサイズのファイルが大量に利用・生成されるので、考えられない程の容量が要求されます。それを満たすために、多くのハードディスクを搭載したシステムが利用されています。ちなみに、日本のスーパーコンピュータ京では数百PB※1もの容量を実現しています[4]。スーパーコンピュータでのデータを保存するシステムは簡単には拡張できません。現状の大きさを維持しながら大容量化をするためには、大容量な記憶媒体が必要となります。
また、インターネットコンテンツを運営している企業もその1つです。例えば、ブログサイトなどは一日何万件ものテキストファイルが保存されます。ここ数年では、写真や動画もインターネット上に保存できるようになりました。さらに、どこでも手軽にブログの書き込み、動画や写真のアップロードできるスマートフォンの普及も拍車をかけています。Facebookは2012年時点で1日500TBものデータがユーザから送られてくるそうです[5]。
テキストファイル、動画や写真は企業が管理しているデータセンター内の記憶媒体に保存されています。保存するデータは止まることなくどんどん増えていくので、より大容量の記憶媒体はそのような企業に望まれているのです。

Facebookのデータセンター
(http://www.dpr.com/projects/sweden-data-center) |
※1 ペタバイト:1ペタバイトは1TBの1,000倍
<参考文献>
[1] E. Grochowski, and Roger F. Hoyt, "Future trends in hard disk drives," IEEE Transactions on Magnetics, vol.32, No.3, pp.1850-1854, May 1996
[2] E. Grochowski, and Robert E. Fontana Jr., “Future Technology Challenges For NAND Flash and HDD Products,” Flash Memory Summit, Aug. 2012
[3] R. Fontana, and G. Decad, “VOLUMETRIC DENSITY TRENDS (TB/in³) TAPE, HDD, NAND FLASH, Blu-Ray,” Designing Storage Architectures for Digital Collections 2014, Sep. 2014.
[4] 理化学研究所 計算科学研究機構, http://www.aics.riken.jp/jp/k/system.html
[5] WebProNews, http://www.webpronews.com/the-facebook-beast-ingests-500-tb-of-data-every-day-2012-08