前回までは、ニューマーク法とはなにか?のお話でした。
解説だけでしたので、実際はどういった結果が得られるのかイメージしにくかったかもしれません。
そこで、ためしにニューマーク法の計算を行ってみました。
1. 安定計算の準備
端的に言ってしまいますと、ニューマーク法は安定計算と同じ物性値に地震波を入れるだけで計算ができます。
逆にいいますと、安定計算と同じものが必要になってきます。
そこで、安定計算のモデルを用意しました。こちらになります。
各層の物性値は、こちらになります。
今回は地震によってC、φが低減して残留強度にならないようにしました。
ここで、安定計算では繰り返し円弧法を用いて安全率が最小となる円弧を求めます。
ニューマーク法でもやはり同じ方法を使います。
地震に対して一番変形が大きくなるような円弧を探すのです。
2. 最小降伏震度
水平震度khは、想定する地震の規模によって変化させるものです。
この値が大きければ大きいほど、想定する地震が強くなるわけです。
0.1〜0.2などが良く用いられるかと思います。
この値ですが、kh= 地震加速度[gal] / 重力加速度(980gal)で定義されています。
ですから、kh=0.2ですと、196galの地震加速度(震度5程度)の地震を想定しています。
水平震度が大きくなれば、作用する力が強くなりますので、安全率Fsは低下します。
そこで、水平震度khを増加させていき、
ちょうど安全率1になる場合の水平震度を降伏震度と呼びます。
この水平震度(地震加速度)を超えると(静的な)力のつり合いを違反したことになりますから、すべり土塊が動くことになります。(「ニューマーク法の歴史を調べてみました」をご参照ください)
ところで、この降伏震度ですが、
地震に対してどこまで変形を生じさせずに耐えられるか?という許容値のような意味をもっており、【 安全率が低い円弧=降伏震度が小さい円弧 】になります*。
したがいまして、繰り返し円弧法で最小安全率の円弧をみつけると、その円弧が、降伏震度が最小の円弧になります。
* 基盤には水平震度を与えないなどの特殊なケースではその限りではありません。
ニューマーク法を計算する際の安全率Fsの計算には修正Fellenius法が汎用されています。簡易Bishop法などで行う事も可能です。(簡易Bishop法の場合、安全率を求めるときには繰り返し計算が必要ですが、降伏震度だけを求める場合にはFs=1として計算しますので繰り返し計算が不要になるという特徴があります)
繰り返し円弧法で降伏震度を求めた結果一覧は、こちらになります。
この中から、どの円弧が良いかを選択します。
単純に最小の降伏震度でも良いのですが、
場合によってはすべり土塊が薄層になる可能性もありますので、
道路土工盛土工指針では、車道を横切る(法肩から4m程度以上)円弧を設定するのがよい、と記述されております。
この意味としては、薄い円弧すべりが地震によってすべったとしても道路機能に影響を与えないためです。
3. 地震波形
さて、準備が整いましたので照査する地震波形を入力します。
どのような地震波形を想定するか?これがなかなか難しい問題です。
観測波形をそのまま使うのか?それとも、地震応答解析などを行って実際に盛土を揺らした時の応答加速度と呼ばれる地震波波形を利用するのか?など色々考える必要があります。
ですが、地震に関しては今後の話題とさせて頂きます。
今回は、公益社団法人日本道路協会 様 公開の【 動的解析に用いる加速度波形 】を用います。
公益社団法人日本道路協会 様
動的解析に用いる加速度波形
http://www.road.or.jp/dl/waveform.html
[T種地盤、平成7年兵庫県南部地震、神戸海洋気象台地盤上 NS成分]を利用させて頂きました。