こんにちは。いさぼうネット調査員3年目、MKです。
今回、北海道で行われた「第59回 地盤工学研究発表会」に参加してきましたので、その様子を報告します。
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会場入口の看板 |
今回、一般発表とディスカッションセッションは現地のみで行われ、展望講演や特別講演はオンライン配信がありました。
講演数は特別セッションやディスカッションセッションを含め1,114件(前回から+176件)で、技術展示コーナーには54機関(前回から−44機関)がブースを出展していました。
カテゴリ別のセッション数と、その中で講演数の多かった主なセッション(3セッション以上あったもの)以下のとおりです。
主なカテゴリ |
総セッション数 (前回比) |
主なセッション |
調査・分類 |
13 (+1) |
サウンディング・物理探査 |
地盤材料 |
23 (−3) |
リサイクル材料、砂質土、改良土・軽量土、不飽和土 |
地盤挙動 |
13 (+2) |
地盤改良 |
地盤中の物質挙動 |
7 (±0) |
浸透 |
地盤と構造物 |
38 (+2) |
ダム・堤防、杭、道路・鉄道盛土、地盤補強、数値解析、地中構造物 |
地盤防災 |
26 (+3) |
斜面、液状化 |
今回は特別セッションに「令和6年能登半島地震特別セッション」がありました。このセッションでは、各分野(地盤振動、災害レジリエンス・斜面災害、盛土・擁壁・補強土、港湾・空港、津波・地盤の相互作用、液状化・側方流動、宅地、ライフライン、基礎構造物)ごとに災害の内容を発表していました。またこのセッションは、YouTubeで一般の方も視聴できる無料配信が行われていたようです。
わたしは今回、特別セッションを始め地盤防災カテゴリの「能登半島地震」セッションなど、能登半島地震についての発表を中心に聴講しました。
「令和6年能登半島地震」のうち、気になった内容は以下のとおりです。
●津波による防波堤の被害について
被害にあった防波堤の近くにある別の防波堤のうち、被害の無いものもあり、半島特有の津波伝播特性があることを初めて知りました。
●断水からの復旧について
復旧に時間がかかった要因に、取水施設や管に被害があり配水池の水が無くなったことがあったという内容が、勉強になりました。
●輪島市の倒壊したビルについて
コンクリート杭の破断について、杭頭部分の折損破断または地中梁の曲げ破断の可能性があるとの内容でした。ニュースでよく見たビルだったので、詳細が気になりました。
続いて一般セッションのうち、地盤防災カテゴリの「能登半島地震@」と「能登半島地震A」、「液状化@」、「斜面C」、「空洞陥没・土砂流出A」、地盤と構造物カテゴリの「地盤補強B」のセッションを可能な範囲で聴講しました。
●地震による災害と降雨による災害の発生箇所比較
発生箇所を比較すると、地震と降雨どちらにも危険という箇所はあまり無いということでわたしには何となく不思議でした。
●地震の液状化による斜面崩壊事例
盛土の上にグラウンドがあり、降雨が浸透しやすくなっていたため液状化し崩壊した、ということと、斜面の下方から崩壊し、その影響で上方が崩壊することが事例の説明と合わせて理解できました。
●SAR画像を用いた被害箇所の推定
地震後の建物の傾きや地盤沈下による地形の変化から、被害箇所を探すことができたら良さそうな気がしました。
●排水管の継手製品の実験
質疑で「継手から水が入らず、表面を流れるのでは?」「長尺で複数継手を使用した場合、次の継手部分から水が漏れるのでは?」といった質問があり、今後の実験結果が気になりました。
●道路の陥没の事故対策工法
石川県では地震後多くの箇所で道路の陥没があったため、短時間で対策できて、直下に空洞があっても耐久性のあるこの工法が気になりました。
●鉄筋挿入工の補強材長さによる補強効果について
わたしはまだ鉄筋挿入工について勉強中のため、「補強材が長いほどすべりが大きくなる」「打設角度によって強度が増加する」という基本的なことが、実験結果と合わせると理解しやすかったです。また質疑で「表面工の効果も見たい」という質問があり、わたしも気になりました。
最後に、現地の様子についてお伝えします。
わたしが参加したセッションでは、会場に6人座れるテーブルが21台あり、特に初めの「能登半島地震」セッションでは混雑してくると会場の周囲に追加で椅子が並べられていました。1席飛ばしで座っている方もいましたが8〜9割ほど埋まっている印象でした。
技術展示コーナーは、アートホテル旭川の隣り合った2部屋に分かれていました。今回は特に、研究発表の時間より早く技術展示が終了するスケジュールだったので、前回に比べて若干人の出入りは少なく感じました。
技術展示コーナー内の休憩スペースにはドリンクコーナーがあり、お茶やコーヒーの隣に「旭川スイーツ」として、旭川のお菓子が置いてありました。各セッションの終わりにも座長が「旭川スイーツ」を広報されていて、わたしも1ついただきました。
今回の会場は、アートホテル旭川と旭川トーヨーホテルが道路を挟んでおり、また旭川市民文化会館での聴講は、雨も降っていて徒歩10分ほどかかったので、セッション間や技術展示スペースへの移動など、少々大変さを感じました。
わたしは初めての北海道で、気温の感覚が分かっていませんでしたが、日中は石川県と同じぐらい暑かったです。でも、会場内の場所によっては冷房でかなり涼しく、また夜は肌寒く感じるほど涼しいときもあり、不思議でした。
今回は能登半島地震に関する発表をメインで聴講しました。「能登半島地震」セッションでは液状化に関する発表が多かったように感じましたが、他のセッション内にも多くの地震に関する発表があったので、聴講するセッションをもう少し調査して、さまざまな内容を聴いた方が良かったかな、と思いましたが、地盤的な視点から能登半島地震について触れられて、良かったと思います。
以上で報告を終わります。
会場:アートホテル旭川
休憩スペース ドリンクコーナー横の旭川スイーツ
会場のアートホテル旭川ロビー
五大開発(株)の展示ブース
旭川空港でのお見送り