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 通達、業界ニュース
 電力不足で急展開、既設ダムの嵩上げ
 

平成23年11月14日

 

 既設ダムの嵩上げが注目されています。東日本大震災、および東京電力福島第1原発事故の影響で電力不足の問題が発生したため、水力発電が見直されています。この際に既設ダムの嵩上げ等により機能を向上させることは、コスト縮減等の観点からも有効な手段であり、注目されているのです。

 国交省は、11年度第3次補正予算案に3000万円のダム嵩上げについての調査研究費を盛り込んでいます。調査対象は、商用交流電源の周波数が東西で50ヘルツと60ヘルツに分かれる糸魚川静岡構造線(新潟県糸魚川市から長野、山梨県を経て静岡市に至る断層線)より東に位置する発電設備を備えた既設ダムで、計300カ所程度になる見込みです。

 実施するのは国総研です。東日本地域にある発電設備を備えたダムを対象に、発電量を現状より増やせるかどうかを確認する調査研究を始めます。各ダムの管理者や電力会社から、発電設備の設置状況や発電能力などのデータの提供を受け、現状を把握し、その上で、ダムの貯水量の増加や、発電設備の新・増設、発電効率の高い設備への切り替えの可能性などを幅広く検討します。

 ダムの嵩上げについては、これまでも利水容量の他、洪水調節容量としても実施されてきました。例えば以下の事例があります。

〇下の原ダム再開発 [長崎県]
 平成13年1月23日、長崎県知事により下の原ダムの嵩上げに関する水利権が許可された。嵩上げによってダムは、異常な渇水時にも必要最小限の水を補給できる、渇水対策容量 を備えることになる。渇水対策容量を確保したダムの建設は、他にもあるが、水利権が許可されたのは、全国で初めて。

http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=3344

三高ダム [広島県]
 水道用ダムである既設の三高ダムを嵩上げし、新たな農業用水源を確保。旧堤体の下流側に、旧堤体を取り込む形で建設。既設ダムは第2次世界大戦中に、旧海軍兵学校の水道用水源として旧海軍が築造。
http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=3254

 そのほかにも多くのダムが嵩上げされています。嵩上げの際にはダム本体の構造もさることながら、貯水池の地すべり、環境対策なども見直す必要が出てきます。今後飛躍的にニーズが高まるかもしれません。過去の事例を確認するとともに、ダムの嵩上げに対して十分な情報を持っておきましょう。

主な大規模ダム再開発

水系名 河川名 ダム名 型式 事業主体 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
着手
(年)
完成
(年)
備考
富田川 富田川 川上ダム 重力式 山口県 45.5 6,100 1958 1961
63.0 22,741 1971 1979
亀田川 亀田川 中野ダム 重力式 函館市水道局 53.0 1960
新中野ダム 重力式 北海道 74.9 3,340 1971 1984
石狩川 幾春別川 桂沢ダム 重力式 国土交通省 63.6 92,700 1947 1957
新桂沢ダム 重力式 国土交通省 76.0 147,300 1985 未定 建設中
石狩川 夕張川 大夕張ダム 重力式 北海道開発局
(農林水産省)
67.5 87,200 1962
夕張シューパロダム 重力式 国土交通省
農林水産省
北海道
110.6 427,000 1991 2013 建設中
岩木川 岩木川 目屋ダム 重力式 青森県 58.0 39,000 1950 1959
津軽ダム 重力式 国土交通省 97.5 142,300 1988 2016 建設中
岩木川 浅瀬石川 沖浦ダム 重力式 青森県 40.0 3,583 1933 1945 水没
浅瀬石川ダム 重力式 国土交通省 91.0 53,100 1971 1988
北上川 滝名川 山王海ダム アース 農林水産省 37.4 9,590 1953
ロックフィル 農林水産省 61.5 38,400 1990 2001
北上川 胆沢川 石淵ダム ロックフィル 国土交通省 53.0 16,150 1945 1953
胆沢ダム ロックフィル 国土交通省 132.0 143,000 1983 2013 建設中
最上川 置賜野川 管野ダム 重力式 山形県 44.5 4,470 1946 1951 水没
長井ダム 重力式 国土交通省 125.5 51,000 1979 2011
木曽川 木曽川 丸山ダム 重力式 国土交通省
関西電力
98.0 79,520 1941 1955
新丸山ダム 重力式 国土交通省 122.5 146,350 1980 未定 建設中

 


国総研/水力発電の増強可能性調査/東日本の300ダム、11年度末に試算結果   H23.11.10
 国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)は、東日本地域にある発電設備を備えたダムを対象に、発電量を現状より増やせるかどうかを確認する調査研究を始める。東日本大震災後、原子力発電所の稼働停止などで電力不足の長期化が懸念されていることに対応。電力不足の緩和策の検討に成果を役立ててもらう。本年度末に発電量の増強見通しと増電量の試算結果などをまとめる。
 国交省は、今国会で審議中の11年度第3次補正予算案に3000万円の調査研究費を盛り込んでいる。調査対象は、商用交流電源の周波数が東西で50ヘルツと60ヘルツに分かれる糸魚川静岡構造線(新潟県糸魚川市から長野、山梨県を経て静岡市に至る断層線)より東に位置する発電設備を備えた既設ダムで、計300カ所程度になる見込みだ。
 各ダムの管理者や電力会社から、発電設備の設置状況や発電能力などのデータの提供を受け、現状を把握。その上で、ダムの貯水量の増加や、発電設備の新・増設、発電効率の高い設備への切り替えの可能性などを幅広く検討する。これらの対策を実施したと仮定した場合に新たに生み出せる電力量や、対策に必要な費用なども試算する予定だ。
 東日本大震災では、東京電力福島第1原発で事故が発生。この事故を受けて他の原発も安全対策の強化が大きな課題になり、稼働を停止している原発が多い。東北や関東では、震災で各地の火力発電所も被害を受けたことから、電力の供給不足問題が表面化した。政府は電力不足への対策として、火力発電所の増強や、太陽光や風力など再生可能エネルギー利用の拡大と併せ、水力発電 の強化も視野に入れている。ただ、発電設備を備えたダムも多くは治水・利水の機能も併せ持つ多目的ダムで、洪水調節ために貯水量を調整したり、工業用水や農業用水のために一定の貯水量を確保したりする必要があり、仮に貯水量を増やしても発電に使える水の量には限りがあるとみられている。

(日刊建設工業新聞)

 

 
 


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