東日本大震災の復興工事が本格化します。果たして工事は被災地内の企業だけでまかなえるのでしょうか?それとも全国の企業がかかわれるほどの量があるのでしょうか?またかかわるとすればどのような形式となるのでしょうか?被災地以外の技術者にとっても気になるところです。
被災地では、既に復旧・復興工事が進みつつありますが、技術者不足や労務費の高騰などの問題が深刻化してきています。具体的には、復興需要の増加に伴って急増している入札不調問題です。宮城県では土木一式の入札不調が45%、仙台市では49%と2件に1件が不調に終わっています。その原因は工事量が増えているために技術者が足りないこと、業者が足りないこと、労務単価が日々刻々変わっていくため、年2回行われている労務単価の設定が実勢を反映していないことなのです。
これに対して国土交通省では、被災地内外の建設会社同士で結成する「復興JV」制度を創設したり、契約後の労務単価の上昇に応じて請負代金を変更する「インフレスライド」を適用することを決めました。またこれは国交省発注の工事だけでなく、自治体発注の工事にも適用するよう2月中に通知するようです。
具体的な施策は以下の通りです。
(1)復興JV制度の創設
【現 状】 |
復興事業については、今後、大量の業務が集中的に発注されることが想定されるが、地元の単体の企業だけでは担い手の数が不足したり、施工能力が十分確保できないことが懸念される。 |
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【対応策】 |
被災地域内の建設企業が被災地域外の建設企業と共同する復興JV制度を被災3県において試行する。被災地域においては、単体企業に加えて復興JVを事業の実施主体として位置付ける。また、復資料3−1興JVにおいては、一の構成員が監理技術者等を専任で配置する場合、他の構成員については、主任技術者の専任要件を緩和する。これにより、被災地域において不足する技術者や技能者を広域的な観点から機動的に確保する。なお、被災地域内における試行等を踏まえつつ、速やかに新たなJV制度として整備する。(→2月中の試行開始に向けて関係通知を発出) |
(2)一人の主任技術者が管理できる近接工事等の明確化
【現 状】 |
密接な関係のある二以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工する場合、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができるが、その適用に当たっては、各事業に即して慎重に検討する必要があるとしている。 |
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【対応策】 |
被災地域内の復旧・復興のための公共工事等において、工事の対象となる工作物に一体性又は連続性が認められる工事で、かつ、工事現場の相互の間隔が5km
程度の近接した工事を同一の建設業者が施工する場合は、二箇所までは建設工事を管理できることとする。(→2月中の運用開始に向けて関係通知を発出) |
(3)地域維持型建設共同企業体制度の活用
【現 状】 |
修繕など社会資本の維持管理のために必要な工事については、地域維持型建設共同企業体を活用できる制度を導入。 |
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【対応策】 |
復旧事業においても、小規模な修繕を包括発注する場合などには、地域維持型建設共同企業体制度が活用可能であることを再度周知する。(→連絡協議会を通じた周知又は周知のための通知を発出) |
(4)主任技術者又は監理技術者の専任を要しない期間の明確化
【現 状】 |
監理技術者等の専任を要しない期間について、適切な運用が行われていない事例が見受けられる。 |
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【対応策】 |
契約締結から現場施工に着手する日までの期間などにおいては、主任技術者又は監理技術者の専任を要しないものであることを再度周知する。(→連絡協議会を通じた周知又は周知のための通知を発出) |
被災地以外の技術者が気になるのは、復興JV制度でしょうか。
「復興JV」は、被災地外の建設会社が地元の建設会社と共同して復興事業に取り組む共同企業体を結成することが出来る制度。被災地内外の建設会社が共同チームを結成することで、これまで地元企業だけに入札参加を認めていた工事の入札が可能となり、被災地外の建設会社も復興事業に積極的に関わることが出来ます。
復興JVは良い制度と思います。ただ被災地で人が不足しているのに対し、他地域では建設不況が続いている現状が続いていたことを考えると、かなり遅れた対応とも言えます。何はともあれ被災地外の企業が参加できる口は出来たわけです。全建では被災地と全国の企業のマッチング支援を行なっていくとしています。このようなマッチング支援にたよるか、自ら現地に乗り込むのか、その企業の戦略が問われていきそうです。
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