砂防学会は、山地・丘陵地などの斜面で発生する深層崩壊に関する提言をまとめました。その中で、深層崩壊の定義について、同学会の解釈では「山地・丘陵地の斜面の一部が表土層の下の基盤を含んで崩壊する現象」とし、移動する土塊・岩塊の動きは突発的で移動速度は速く、移動中に激しいかく乱を受けて土塊・岩塊は原形を保たない場合が多いとしています。滑り面の位置が深いため、森林などによる崩壊抑止効果は期待できず、大規模な深層崩壊ではハードによる対応も困難と指摘しています。
深層崩壊は2009年8月に台湾・高雄県の小林村で起こった大規模な土砂災害により注目され、
日本でも小林村と似た地形が多いことから今後の対策について焦点が当てられているのです。小林村の災害では、非常になだらかな山が広範囲にわたって崩壊し甚大な被害が発生しました。
深層崩壊という言葉がすっかりポピュラーになったのは、2010年6月27日のNHKスペシャルでしょう。「深層崩壊」についての特集番組が放送され、これを期に一般にも広く知られるようになりました。
日本では、以下の災害がで深層崩壊とみられる災害が起こっています。
崩壊とは何が違うんだ?地すべりとは何が違うんだ?そんな質問がきそうです。同一ステージ上での言葉の定義ではないのでなかなかひとくくりにはできませんが、技術者の頭の中での整理はしておくことが大切です。
深層崩壊とは規模的には基盤岩を含んだ大規模な崩壊現象、これはわかりやすいと思います。さらに移動土塊の性状もイメージを持っておきましょう。過去の事例から、崩壊、地すべり性崩壊、高速型地すべりに分類されそうです。
説明の際には事例を加えるのがわかりやすく、それには上記災害の概要を知っておくことも肝要でしょう。
深層崩壊に参考となるHP
深層崩壊のメカニズム - 土木研究所
過去の深層崩壊事例について -
土木研究所
深層崩壊の記事
砂防学会/深層崩壊の定義明確化/ハードでの対策に限界、減災へ連携を
H24.04.03 |
砂防学会(会長・鈴木雅一東大大学院教授)は、山地・丘陵地などの斜面で発生する深層崩壊に関する提言をまとめた。これまで解釈が定まっていなかった深層崩壊の定義を明確化するとともに、ハードによる防災対策には限界があるとして、避難・警戒などソフト面の対応を重視。「減災」の観点から、国や自治体、大学・研究機関、建設業など関連団体が連携して対応することを求めている。
深層崩壊の定義について、同学会の解釈では「山地・丘陵地の斜面の一部が表土層の下の基盤を含んで崩壊する現象」とし、移動する土塊・岩塊の動きは突発的で移動速度は速く、移動中に激しいかく乱を受けて土塊・岩塊は原形を保たない場合が多いとしている。滑り面の位置が深いため、森林などによる崩壊抑止効果は期待できず、大規模な深層崩壊ではハードによる対応も困難と指摘した。深層崩壊の発生メカニズムは複雑・多様で十分な知見が得られていない現状を踏まえ、各方面での調査・研究成果をデータベース化し、継続的に活用できる体制を整備することを求めている。
対策については、減災による人命被害の回避を最優先とするハード・ソフト両面からの対応を重視。ハード対策については、作用外力に応じた柔軟な設計と被害軽減効果の評価を行い、より効果の高い対策手法を提示する必要性を指摘した。ソフト対策では、災害の特性を踏まえた警報の運用や安全な避難場所の確保、前兆的現象の監視と避難への活用方法などの検討課題を列挙。一連の成果を災害時の避難活動と地域防災計画に反映させるよう求めている。
今回の提言について、鈴木会長は「深層崩壊をめぐる今後の議論の出発点とし、国や自治体などでの活発な議論を期待したい」と話している。
(日刊建設工業新聞) |
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