令和2年3月13日に国土交通省から以下の発表がされています。
地震や豪雨等の災害が頻発する中、宅地防災対策の重要性が高まってきていることを受け、今後の対策を検討するために設置された「大規模盛土造成地防災対策検討会」において報告がとりまとめられ、今後取り組むべき新たな方向性が提示されました。
国土交通省では、本報告で示された方向性をふまえた具体的な取組の進め方等について検討を進め、必要な技術的助言等を地方公共団体に対して行うこととしています。
この提示内容から、発生する事業のどの部分が、どのような形態で、どのような業種に発注されるのか、注視する必要があります。
報告の概要は以下の通りです。
これまでの対策を振り返り、課題や現状をふまえ、5つの観点から、今後取り組むべき、新たな方向性を打ち出したもの。 本報告をもとに、今後の制度改正、必要な予算、事業の運用などに向けて検討していく。
1.大規模盛土造成地の事前対策の意義の再整理
これまでの復旧対策・事前対策の事例をふまえ、大きく以下の2点を中心に、大規模盛土造成地の事前対策は意義があるものと再整理。
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大規模盛土造成地の被害では、人的被害や財産被害、生活再建の遅れ、公共施設の機能喪失等が生じるとともに、復旧対策には多額の費用と労力を要していることから、事前の対策工事を進めることにより、人的被害を防止し、財産被害を防止・軽減することにより、早期復旧を可能にするとともに、復旧にかかるコストを低減(事前対策の実施地区では概ね10倍の費用対効果があると試算。また、過去の復旧対策事例を分析すると、事前対策を行っていれば、約3割の事業費削減が可能であったと試算)。 |
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大規模盛土造成地マップや安全性把握のための調査に基づく適切な情報提供により、住民の安心を確保するとともに、宅地所有者等の自主的な取組を促進(日常的な盛土の変状の監視や擁壁の点検、簡易な地盤調査の実施、居住地選択等の際にマップの情報を参考にする等)。
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2.大規模盛土造成地マップの公表と活用の推進
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全国で大規模盛土造成地マップが公表されることをふまえ、マップの趣旨(マップは直ちに危険性のある盛土造成地を示すものではなく対策の出発点となるものであること)を正しく伝え、住民等に過度の不安や誤解を与えないよう公表の際の留意点(抽出に使用した地図の年代等を明示するなど、地図の精確性を含めた形で公表する等)を明確化。
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マップは継続的な更新・周知が必要であることから、具体的な方法を提示(より古い時代の地図等を基図として活用可能となった場合や、現地踏査の結果より精確な情報が得られた場合等において、更新の検討が必要。また周知の方法も提示。)
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3.大規模盛土造成地の安全性の把握・対策工事の計画的な推進
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令和元年度末にマップ公表完了、2年度末に造成年代調査実施完了見込みとなり、事前対策の新たな段階に入ったため、計画性を持って取り組む必要。
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国が短期的、中期的な新たな目標を設定。これをもとに、地方公共団体が実情に応じて目標を設定。これらの目標に対し、定期的に進捗状況を把握し公表。
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都道府県による取組の進捗管理(情報の集約・公表・市町村への技術的支援)
【国の目標設定(イメージ)】
短期:令和4年度末までに第二次スクリーニング計画の作成完了(市区町村)。また、安全性把握調査の中期事業計画をとりまとめて公表(都道府県)。 中期:今後5年間(令和7年度末)を目途に早期に実施すべき盛土の安全性の把握を実施(具体的な目標値は、県や市町村の状況を聞きながら早急に設定)。
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居住誘導区域内の大規模盛土造成地の事前対策を優先して実施。立地適正化計画の中で宅地の安全確保に取り組むことを位置づけて取り組む。 基本方針(居住誘導区域内の大規模盛土造成地の安全確保の必要性)、大規模盛土造成地の箇所数・位置、調査や対策工事、調査結果の公表等を位置づけることを提示。 |
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宅地耐震化に係る地方公共団体の負担軽減について検討。 これまでに講じてきた国費率の嵩上げ措置の一層の活用、コスト削減につながる新たな技術や工法の情報収集等。
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事業主体となる市町村へ、宅地造成等規制法の区域指定や勧告等の権限移譲を進めることで、事業の円滑化を図るべき。
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4.安全性の把握を効果的に進めていくための方策
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優先度の高い盛土が相当数に上る場合には、現地状況や簡易な地盤調査等を踏まえ精査し、「早急に調査すべき盛土」と「経過観察を行う盛土」に区分する考え方を示し、具体的な進め方を整理。
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@滑動崩落を示唆する変状(一定の連続性を有し、点在する変状をつなぐと滑動ブロックが想定されるもの)が認められる場合。
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A簡易地盤調査の実施結果から、地下水位が高く、かつ盛土が脆弱な箇所等。
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調査で明らかとなった大規模盛土造成地の安全性に関する情報や今後の取組予定等は積極的に情報公開*を進めることが必要。
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安全性確認済みの箇所や経過観察実施中の箇所を大規模盛土造成地マップに明示する等。
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現場における合意形成の円滑化を図るため、既往の工夫事例の周知等を実施。
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5.民間と連携した宅地の安全確保の取り組みの推進
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民間主体の安全性の把握を推進するため、地盤に関する民間専門家組織等や住民と連携した、モデル的な取組*を進める。
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札幌市において、地盤品質判定士会等の組織の協力の下、大規模盛土造成地の防災に関する普及活動や相談窓口の機能強化を実施予定(R2.夏頃)。
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(国土交通省「大規模盛土造成地防災対策検討会 報告 概要」より)
<参考リンク>
▽「令和元年度大規模盛土造成地防災対策検討会」(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/toshi/web/toshi_tobou_tk_000031.html
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