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 通達、業界ニュース
新年度より変更となった国土地理院の提供サービスを試してみた
令和7年4月3日
国土地理院では新年度にあわせて、標高改定や1mDEMの公開範囲拡大など、盛りだくさんです。本稿ではその概要と実際に利用してみた結果をざっくり紹介します。
1.全国の標高成果を改定(令和7年4月1日)
国土地理院では、令和7年4月1日に電子基準点、三角点、水準点等の標高成果を、衛星測位を基盤とする最新の値「測地成果2024」に改定しました。
本改定では、地殻変動で累積した標高成果のズレ等を解消するとともに、衛星測位と陸海シームレスのジオイド・モデル「ジオイド2024日本とその周辺」を使用し、標高成果を改定しました。
79の山の標高が変更ってどういうこと?
4月から全国79の山の標高が変わりますというニュース、耳にした方も多いと思います。国土地理院では、測量成果の改定にあわせて、全国1003山の標高を見直しました。山の標高は、四捨五入にてメートル単位で表記しているため、結果的に76の山で1メートル低くなり、3山で1メートル高くなった、といううことでした。富士山の標高が変わっていたら、もっと大ニュースになっていたかもしれませんね。
そもそも、なんで標高が変わったの?
これまで適用の「日本のジオイド2011(Ver.2.2)」から、新しい「ジオイド2024日本とその周辺」に変更して、長年のつけを清算したから。
ジオイドは、平均海面を仮想的に陸地へ延長した面です。ジオイドなしには、衛星測位で標高を決めることはできません。
これまでジオイドは、重力データと水準測量を組み合わせモデル構築されていたため、地殻変動や累積誤差の影響が含まれていました。今回の新たなジオイドは、重力データのみから構築されるため、地殻変動や誤差累積の影響を受けず、より精密なデータとなります。今回、衛星測位を基盤とする最新の値に改定することで、長年の地殻変動で累積した海面と標高のズレが解消されることになります。さらに、標高に地殻変動補正を導入することで、衛星測位を使って地殻変動の影響を受けない標高を効率的に決めることができるようになります。
どれくらい標高が変わるの?
全国の多くの地点で数cm〜数十cm低くなります。一部、東北地方の牡鹿半島付近、南西諸島では高くなるようです。
出典:全国の標高成果の改定量(国土地理院HP)より
ざっくりはわかりますが、具体的にピンとこない・・・。そこで、実際に標高(ジオイド高)がどれくらい変わるのか、身近な場所で試算してみました。
国土地理院では、ジオイド高の計算サイトをホームページで公開してます。現在、これまでの「日本のジオイド2011(Ver2.2)」と「ジオイド2024日本とその周辺」の両者を公開しています。そこで、同一地点のジオイド高を新旧ジオイドモデルで確認してみました。
出典:全国の測量成果の改定(国土地理院HP)より
標高は上式で求まるため、ジオイド高の差が概ねの標高差となります(実際には、電子基準点を用いた衛星測位では楕円体高も異なるため・・・・長くなるのでざっくりです)。
計算の結果、今回改正で、白山山頂で8.7cm、金沢市内(弊社)で17.3cm 低くなります。場所によってジオイド高が異なるため、ここでは、それぞれの地点で変化量が異なると理解しておきましょう。
新旧ジオイド高の比較
位置 @ジオイド2011 Aジオイド2024 @−A ≒ 標高差
白山山頂 40.4976 m 40.5844 m −0.0868 m
金沢市黒田 37.5338 m 37.7069 m −0.1731 m

ジオイド高の計算例(国土地理院HP)
地理院地図等の更新スケジュールは?
よく使う地理院地図や基盤地図情報数値標高データも、今回の標高改正により順次更新されるとのことです。国土地理院のQandAをもとにまとめると、予定は下表の通りです。
注目は、基盤地図情報(数値標高モデル)についても、更新がなされるとアナウンスされている点です。利用の際には、「測地成果2011(JGD2011)」か「測地成果2024(JGD2024)」か、十分確認して利用する必要があります。
また、過年度測量成果が混在する場合には、測地成果2011か2024か、平面図や基準点リスト、線形計算書等にも明記することを今後心掛けたいです。
令和7年4月1日の標高改定に伴う各種地図の更新予定
種別 標高改定の反映時期
地理院地図の背景地図 令和7年5月末以降(全データ修正は3か月程度)
基盤地図情報
(基本事項)
(数値標高モデル)
令和7年7月末に提供予定
令和7年4月1日に「基盤地図情報等パラメータ補正ツール」を公開
2万5千分の1地形図 令和7年5月1日以降に刊行する成果
電子地形図25000 令和7年5月末以降(全データ修正は3か月程度)
電子地形図50000、20万 令和7年4月1日以降に新規提供及び更新する成果
出典:全国の標高成果の改定に関するQ&A(国土地理院HP)より作成
電子基準点からの補正情報を利用している場合には注意が必要!
標高が変わることで、少し注意しないといけないのが、配信事業者から提供される補正情報を用いてネットワーク型RTK-GNSS等を使用する場合です。令和7年4月1日の標高成果の改定前後で高さ情報にズレが生じる可能性があり、国土地理院より注意喚起がなされています。
特に、ICT建設機械をGNSSを用いて使用している場合に、高さ情報にズレが生じる可能性があるとのことです。使用開始時に、GNSS基地局を現場内か近くに設置し、ローカライゼーションを行っている現場では問題ないですが、ローカライゼーションを行っていない場合には確認が必要です。
補正情報配信サービスを提供する(株)ジェノバでは、3月18日に全国の標高成果の改定に伴う配信データ変更について発信しており、楕円体高の変更に伴い、3月31日の定期メンテナンス以降、観測値の差異が発生する旨、発表されています。
SoftBankが提供する高精度測位サービス「ichimill」では、ユーザー向けに「測地成果2024」に準拠したデータ配信を令和7年5月末頃予定しているとアナウンスがありました。
このように、提供サービス事業者ごとに対応が異なりますので、使用しているサービスの対応状況を確認する必要があります。
出典:3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案) 令和7年3月版 技術概要集 RTK-GNSS(国土交通省)
2.1mメッシュ(標高)の提供範囲を一挙に拡大!
国土地理院では、令和5年11月30日に1mメッシュ(標高)の提供を開始し、これまでに全国の3次メッシュの約4%を提供していました。3月31日に提供範囲を大幅に拡大し、提供する3次メッシュの割合は約46%となりました。
今回1mメッシュ提供範囲の大部分は、2025年3月あるいは2024年1月に5mメッシュもあわせて更新されています。1mメッシュと5mメッシュ作成に用いた航空レーザ測量成果は同一基データを使用しています。利用目的に応じて、1mメッシュと5mメッシュを使い分けることが想定されます。
利用に当たっては、いつ更新されたデータであるか(航空レーザ測量作業時期)、また5mメッシュの場合、DEM5A、DEM5B、DEM5Cの高さ精度の異なる3種類のデータがあるため、データ種別にも留意したいところです。
出典:資料 1mメッシュ(標高)の提供範囲(国土地理院HP)
数値標高モデルの種類と概要
出典:基盤地図情報(数値標高モデル)について(国土地理院HP)を一部抜粋
DEM1A、DEM5A、DEM10Bを比較してみた!
白山市甚之助付近の標高データをダウンロードして五大開発(株)の「MakeJiban」で可視化してみました。DEM1A、DEM5A、DEM10Bを比較すると下図のようになります。
DEM1Aでは、砂防堰堤や道路、のり面小段まで明瞭に識別できます。データ容量はやや大きくなりますが、DEM1Aで3次メッシュで200〜300MB程度であり、実用上は問題なく扱えるサイズかと思います。
DEM1A:砂防堰堤や道路、のり面の形状が明瞭にわかる
DEM5A:砂防堰堤や道路があることは何とかわかるが不明瞭である
DEM10B:砂防堰堤や道路は全く識別できない
3.基盤地図情報ダウンロードサービスのサイトリニューアル
令和7年4月1日より、基盤地図情報ダウンロードサービスのサイトがリニューアルされました。また、サイトリニューアルとあわせて、以前に使用していたIDとパスワードは使用できなくなりました。
利用に当たっては、再度、IDとパスワードをユーザ登録(無料)する必要があります。
リニューアルしたサイトで標高メッシュデータをダウンロードしてみました。
下図は数値標高モデルをメッシュにて検索した結果です。検索結果リストには、該当の3次メッシュで提供されるすべてのデータが表示されます。この例では5mメッシュがDEM5A、DEM5B、DEM5Cのすべてあります。
ダウンロードでは、“まとめてダウンロード”を選択すると、アカウント登録時に登録したメールアドレスに、ダウンロードURLがメールにて送付される仕様に変更されています。 一方、1データごとに“ダウンロード”を選択した場合、従来と同様にブラウザ上でダウンロードが開始されます。
国土地理院 基盤地図情報 ダウンロードサービス 検索結果リストの表示例
国土地理院 基盤地図情報 ダウンロードサービス ダウンロードの表示例

 

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