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早いもので、今年も一年を振り返る時期が来ました。いさぼう界隈ニュース10選と題し、今年の自然災害、防災、土木ニュースを振り返ります。
《1》埼玉県八潮市で道路陥没事故(1月28日)− 老朽インフラと下水道管破損
1月28日、埼玉県八潮市中央一丁目の交差点で直径約5m、深さ約10mの道路陥没が突然発生し、走行中のトラックが転落。運転手の男性(74歳)が巻き込まれ、後に死亡が確認されました。原因は埼玉県管理の中川流域下水道管渠の破損による漏水で、老朽化と地下水の影響が指摘されています。現場は瓦礫と下水で埋まり、救助活動は困難を極めました。
この事故は日本全国の地中管路のインフラ老朽化問題を象徴する事例として大きな社会的関心を集めました。国土交通省は、事故直後に、陥没箇所と同様の大規模な下水道管路の緊急点検を地方公共団体に要請、さらに、全国特別重点調査として、内径2m以上、1994年以前に設置・改築された管路を対象に、潜行目視やテレビカメラによる管路内調査を全線で実施することとしました。道路陥没は全国で1日約30件のペースで発生しているとされており、上下水道・道路の計画的更新と維持管理体制の強化が求められています。
《2》岩手県大船渡市山林火災(2月26日〜4月7日)− 平成以降最大規模3,370ha焼失
2月26日午後1時2分、岩手県大船渡市赤崎町合足地区で発生した山林火災は、強風と乾燥により急速に拡大し、焼失面積3,370haに達しました。これは、1992年の北海道釧路市の火災(1,030ha)を上回る平成以降最大規模の林野火災となりました。建物被害222棟、死者1人を記録し、最大1,896世帯4,596人に避難指示が出されました。鎮火まで41日間(3月9日鎮圧宣言、4月7日鎮火宣言)を要し、消防・自衛隊による大規模な消火活動が展開されました。火災が大規模した一因として、例年より降水量が極めて少なく、山林が乾燥していたことが専門家より指摘されました。
《3》トカラ列島群発地震(6月21日〜7月)− 震度6弱含む2,271回の有感地震
鹿児島県トカラ列島の悪石島(あくせきじま)から宝島にかけての領域では、6月21日から地震活動が活発となり、7月3日16時13分にはマグニチュード(M)5.5の地震(深さ約10km)が発生し、悪石島で最大震度6弱を観測しました。(トカラ列島での震度6弱の観測はこれが初)。6月21日以降、有感地震2,271回を記録。地殻変動も確認されており、宝島ではGNSS観測により約4.2cmの水平移動が確認されました。この地震を受け、十島村は、悪石島の希望する住民に対し島外避難を進める事態となりました。
《4》九州北部・北陸地方で記録的豪雨(8月6日〜8月12日)− 線状降水帯が各地で発生
8月6日から8月12日にかけて、日本付近に停滞した前線や前線上の低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだため、北日本から西日本の広い範囲で大気の状態が非常に不安定な状況になりました。
石川県では7日明け方に線状降水帯が発生し、24時間降水量が300ミリを超える記録的な大雨、鹿児島県でも8日未明から明け方に線状降水帯が繰り返し発生し、24時間降水量が500ミリを超える記録的な大雨、九州北部地方でも9日夜遅くから11日にかけて線状降水帯が繰り返し発生し、福岡県、熊本県では24時間降水量が多い所で400ミリを超える記録的な大雨となりました。これら大雨により、142件の土砂災害が発生しました。
国土交通省砂防部では、平成15年以降、土石流等、地すべり、がけ崩れの発生件数を公表しています。令和7年11月30日時点では、土石流等92件、地すべり42件、がけ崩れ437件、合計517件であり、土砂災害は比較的少ない一年となりました。
《5》台風15号による竜巻被害(9月5日)− 静岡で甚大な被害
台風15号が高知県・和歌山県に上陸し紀伊半島を縦断しました。この台風接近に伴い、静岡県牧之原市および吉田町付近では、日本版改良藤田スケール「JEF3」相当(風速約75m/s)の国内最大級の竜巻が発生しました。2,000棟超の住宅が損壊、死亡1人、90人が負傷と、竜巻被害としてはこれまでに類を見ない大規模な被害が生じました。
なお、令和7年の台風発生件数は27件と例年並みでした。
《6》台風22号・台風23号による八丈島災害(10月)− 二週連続で台風直撃
台風第22号は、10月9日朝にかけて伊豆諸島に最も接近。9日は風速30メートル以上の猛烈な風を観測。また、前線や台風本体の発達した雨雲の影響により、9日明け方から朝にかけて線状降水帯が発生。多い所で24時間降水量が300ミリを超える記録的な大雨となりました。
台風第23号は、13日昼前にかけて伊豆諸島に最も接近。13日朝に最大瞬間風速40メートル以上の風を観測。前線や台風周辺の暖かく湿った空気の影響により、伊豆諸島では、台風が接近する前から大雨となり、多い所で11日から13日にかけての総降水量が200ミリを超えました。
2つの台風に見舞われた八丈島では、最大瞬間風速54.7m/s、総降水量430mm超を記録。大規模停電・断水が発生し、900軒以上の住宅が被害を受けました。離島インフラの脆弱性と応急復旧体制の課題が浮き彫りになった災害でした。
出典 令和7年台風第22号及び台風第23号による被害状況等について(第5報)(2025/10/14 08:00現在)
《7》青森県東方沖地地震(12月8日)− M7.5・震度6強、初の「後発地震注意情報」発表
12月8日23時15分、青森県東方沖(八戸市東北東約80km、深さ約54km)を震源とするM7.5の地震が発生し、八戸市で震度6強を観測しました。津波警報が発令され、久慈港で最大約70cmの津波を記録。負傷者51人、建物損壊・交通障害・停電が広範囲で発生し、道路・橋梁・港湾施設に被害が及びました。
この地震を受け、気象庁は令和4年12月の運用開始後初となる「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表し、1週間の警戒期間が設定されました。
出典:北海道・三陸沖後発地震注意情報について、令和7年12月9日02時00分、 内閣府(防災担当)・気象庁地震火山部、報道発表資料
《8》クマの出没が増加 −統計史上最多の死者・負傷者
今年は、全国でクマの出没が大幅に増加し、連日ニュースで、クマによる人身被害が報じられました。2025年の都道府県別Google検索ランキングによれば、クマに関するワードが、なんと26都道府県でベスト5に入りました。
環境省まとめによる令和7年4月〜11月末の人身被害は、死者13人、負傷者217人という統計開始(平成20年)以来過去最悪の記録を更新しました。都道府県別では秋田県66人、岩手県37人、福島県24人と東北地方で被害が集中しています。
新潟県では測量作業中の作業者がクマに襲撃される事件が発生。林業従事者や環境アセスメント調査中の技術者も被害に遭っています。山間部においては、クマが新たな労働災害のリスク要因となっています。東北地方整備局は「クマ対策事例集」を公開し、大音量スピーカー・監視カメラ・電気柵・クマ撃退スプレー携行などのハード・ソフト対策を紹介しています。
《9》道路橋示方書、道路土工構造物技術基準の改定 −令和6年能登半島地震を踏まえ
国土交通省は、道路橋示方書と道路土工構造物技術基準を相次いで改定し、令和8年4月1日から新設計に適用すると発表しました。道路橋示方書の改定では、@性能評価の枠組み充実(新形式橋梁への対応)、A耐久性能評価方法の明確化(「設計耐久期間」概念の導入)、B能登半島地震を踏まえた復旧性向上規定の強化(橋梁接続区間の設定、支承部障害への対応策)、C構造要素に基づく編構成の見直しが柱となっています。一方、道路土工構造物技術基準は能登半島地震での盛土・斜面崩壊の多発を受け、@設計初期段階での地形・地質条件の詳細考慮、A排水対策の強化(地下水・浸透水管理)、B性能規定の明確化を盛り込んでいます。
なお、道路橋示方書・同解説は11月、道路土工構造物技術基準・同解説は12月にそれぞれ日本道路協会より発刊されています。
《10》防災庁創設に向けた体制整備が本格化 −令和8年度中に設置
令和8年度の発足を目指す防災庁の創設準備が本格化し、「骨太の方針2025」に具体案が盛り込まれました。防災庁は内閣総理大臣直属の強力な司令塔として、平時の事前防災から緊急時の初動対応、復旧・復興までを一元管理する約350人体制の組織となる予定。最大の特徴は各省庁への勧告権を持ち、縦割り行政の限界を突破して迅速な災害対応を実現する点にあるとされます。令和6年11月に防災庁設置準備室が発足し、令和8年通常国会に関連法案を提出予定。能登半島地震の教訓を踏まえ、事前復興・複合災害対応・避難所の質向上(トイレ・ベッド・温かい食事の標準化)が重点施策として明記されました。全国に地方拠点(約30人規模)を設置する構想もあり、現場との直結体制を強化するとのこと。専門人材の育成と民間・地域団体との連携強化も目指すとされています。
来年も引き続きいさぼうネットでは、防災・土木に関わる幅広い情報をいち早く伝えることに精進していきたいと思います。今年も1年間ご愛顧いただきありがとうございました。よいお年をお迎えください。
P.S. いさぼう編集部では、「 建民ショーとコラム」を月1回、連載してます。この連載は、読者参加型の企画です。我こそは!との建民の皆様、いさぼう編集部まで、“建民希望”とご記入の上、 こちらまでご連絡ください。お待ちしております。
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