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『いさぼう技術ニュース』 http://isabou.net/ 平成23年2月24日号
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★ アンカー付杭のブラケットの溶接長について(会検情報) ★
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昨年から今年にかけて、アンカー付杭のブラケットの溶接長について会計検
査で問題となりました。
現在、各都道府県に特別調書の提出が依頼されており、いろいろな情報が
錯綜しています。
今回いさぼうでは、その情報を整理してみました。
先ず、今回の会計検査での指摘事項は以下の通りです。
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■■■擁壁の設計が適切でなかった■■■
[工事の概要]
対象の山留工は、21本のアンカー付の鋼管杭(外径508.0mm、杭長20.5m〜26.0
m)を建て込んだ山留壁(延長計80.0m)で、アンカー頭部には鋼製台座、腹起し
材、ブラケット等が設置されている。
このうち腹起し材は、鋼製台座プラス2段に設置されたH形鋼で構成され、H形
鋼を支えるため三角形に組み立てた等辺山形鋼のブラケットを上下2段に鋼管
杭に溶接して固定している。
同県は、本件擁壁の設計を「グラウンドアンカー設計・施工基準,同解説」
(社団法人地盤工学会編等(以下「基準等」という)に基づいて行っていた。
そして、ブラケットのうち、下段ブラケットについては基準等に基づき設計計
算を行い、下段ブラケットと鋼管杭との溶接部には、腹起し材を介してアンカ
ーの張力により最小77kN〜最大106kNのせん断力が作用するとしていた。
そして、このせん断カに対して安全となる必要溶接長を、溶接部の許容せん断
応力度72N/mm2に基づき135mm〜185mmと算定して、下段ブラケットと鋼管杭と
の接合部分(長さ350mm)の全長を溶接すれば、溶接長が必要溶接長を上回るこ
とから、応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。
しかし、下段ブラケットと鋼管杭との溶接部には、アンカーの張力による鉛
直力と腹起し材の自重により、せん断力と曲げモーメントが同時に作用するこ
ととなる。そして、基準等によると、このような場合には、せん断力と曲げモ
ーメントを合成した応力度に対して安全となるよう設計する必要があるとされ
ているのに、同県では、せん断力のみが作用することとして設計していた。
そこで、本件下段ブラケットについて、基準等に基づき改めて設計計算を行
ったところ、鋼管杭との溶接部(長さ350mm)に作用する応力度は195N/mm2〜266
N/mm2となり、前記の許容応力度72N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安
全ときれる範囲に収まっていなかった。
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これに伴い、平成23年2月10日国土交通省から、「国土交通省道路局の会計検
査における特別調書の提出について」が通達されました。その概要は、以下の
通りです。
■■■特別調書の提出■■■
1.調査内容:
平成20〜22年度アンカー付鋼管杭(H型鋼製杭も含む) 施工実績調(補助)
2.提出期限:
平成23年2月22日(火)
今回、発注者から各技術者のところに問い合わせがあるのは、以上の経緯
からです。理解され着実に対応していただければと思います。
さて、上記指摘ではブラケットはせん断力と曲げモーメントを合成した応力
度で計算するのが正解としています。
一方、土木の世界ではどのように取り扱われてきたのでしょうか。
昔は『せん断力のみ』を受ける構造として設計されていました(ただし、
参考書籍はない)。
一方最近では、安全側に曲げとせん断を同時に受けることを想定して
『曲げ+せん断の合成応力』で設計されることが多くなってきたようです。
この考え方は、以下の参考書(A〜D)に書かれています。
A.「グラウンドアンカー工法の調査・設計から施工まで」
(社)地盤工学会(H9年3月)p.186
B.「グラウンドアンカー工法設計施工指針」
グラウンドアンカー技術協会(1996年6月)p.152
C.「建築地盤アンカー設計施工指針・同解説」
(社)日本建築学会(2001年1月)p.108
D.「山留め設計施工指針」
(社)日本建築学会(2002年2月)p.193
今回の会計検査員の結論は、上記参考書籍(A〜D)がすべて『曲げ+せん断
の合成応力』で設計していることや、逆に『せん断のみ』で検討している参考
書が無かったせいかもしれません。
では、『曲げ+せん断の合成応力』と『せん断のみ』では、設計結果にどのく
らいの開きが出てくるのでしょうか。
今回いさぼうネットでは、簡単な模擬計算を行いました。
結果はページに示しました。この検討結果を見ると、次のことが言えます。
●『せん断力のみで計算する』と『せん断力と曲げモーメントを合成した
応力度で計算する』のでは3.3〜6.7倍の計算結果の開きが出る。
●アンカー角度に着目すると、20°と45°では合成応力で計算の場合
約1.9倍、せん断力のみで計算する場合約2.7倍の開きがある。
●安全側に1枚で計算する場合と2枚で計算する場合では、合成応力で計算の
場合約1.4倍、せん断力のみで計算する場合約2倍の開きがある。
この結果の差(バラつき)は予想以上に大きいものでした。もしこの結果が
無作為に世間に氾濫していたのであればかなりの事故やトラブルがおきそうで
す。あるいはかなり過大な施工がなされていそうです。そのようなトラブルが
起きていないのは技術者の現場での判断と適用がうまくいっていたとも言える
のでしょう。
また、この問題で多くの設計・施工に関わる技術者が右往左往されたのでは
ないでしょうか。いさぼうネットに対しても多くの問い合わせ、意見などが
寄せられました。それらをページでは紹介しています。是非参照して下さい。
いろいろな意見を聞いていると、技術者は、『せん断力のみで計算する』と
『せん断力と曲げモーメントを合成した応力度で計算する』の2つの考え方が
あることを理解した上で、現場現場で使い分けていたように思えます。
そのため事故などは起きなかった。つまりそれなりに安定度は取れているケー
スがほとんどという実績に思えます。とすれば、運用する基準書が土木でない
中で、トラブルの出ていない現場への手直し命令は大きな混乱とコストを要す
ることになり、それが最も適当とはなかなか思えない見方もあります。
技術者のみなさん、是非この問題に対して大いに議論して、土木の基準づく
りの方向に向かいませんか?
いさぼうネットでもいろいろな意見を募集しています。
ご意見は匿名で本ページに記載していきます。結論は出せないかもしれません
が、様々な立場の方が、この問題を考えるご参考となれば幸いです。
▽いさぼう会検情報
「会検情報NOW!」-「速報!2011全国調査−ブラケットの溶接長」
http://isabou.net/Audit/Now/news2011.asp
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☆ いさぼう今週の更新ページ ☆
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■【会検情報】
http://isabou.net/Audit/Now/index.asp
「会検情報NOW!」に「速報!2010全国調査−補強鉄筋工のキャップ」を掲載
しました。
■【知取気亭主人の四方山話】−第399話「神様仏様…、でもやっぱ銭やで!」
http://isabou.net/refresh/yomoyama.asp
17日の朝、毎朝仏壇に手を合わせている私をガッカリさせるニュースが、カ
ーラジオから流れてきた。あの有名な金閣寺、銀閣寺を管理する臨済宗の住職
が国税局から凡そ2億円の申告漏れを指摘されていた、というニュースだ...
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