復興に対する基本的な考えと法案が明らかになりました。内容は各新聞社から公表され、政府からはまだ発表されていません。記者会見によるものなのか、そのため各社内容は細かい点で若干の差があります。それらをまとめると概ね以下の通りです。 |
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■基本的考え |
政府が複数年度にわたる復興財源を確実に措置し、地方自治体の財源確保を後押し
▽復興に関する基本法を制定し、復興再生庁(仮称)を設置 |
■被災者への支援 |
復興につながる設備投資の税負担を軽減
▽住宅を再取得する際の固定資産税や不動産取得税、自動車取得税などを減免
▽倒壊住宅に住宅ローン減税を継続 |
■被災地自治体への支援 |
特別交付税、地方交付税を増額
▽復旧事業への国庫補助対象を拡大し、補助率を引き上げ
▽がれき撤去費用の全額を国が負担
▽災害救助法が適用される際の経費をできる限り国が負担
▽使途に制限のない基金を地方に創設し、国が特別に支援
▽被災地自治体へ一括交付金を交付
▽福島第1原発事故の関係自治体向けに全額国庫負担の新たな交付金を創設
▽災害対策債などを複数年発行
▽市町村合併の手続きを簡素化
▽被災地自治体に全国の公務員を大規模派遣 |
■経済対策 |
法人税引き下げの見直しは慎重に検討し、見直しの場合は租税特別措置(租特)の廃止、縮減の見送りも必要
▽日銀は政府と緊密に連携し、金融緩和を適切かつ機動的に実施 |
■その他 |
郵政改革法案、地域主権改革関連3法案、総合特区法案などを早期に成立
▽国の対策を進める態勢として、首相を本部長に全閣僚で構成する「復旧復興戦略本部」で基本計画を策定する
▽新設する「復旧復興庁」に各省庁から一時的に権限を移管し、復旧復興担当相を置いて同庁長官に充てる
▽戦略本部の諮問機関として有識者や被災地の議員・住民からなる「復旧復興委員会」を置く |
復興へ新税検討、震災国債も発行 民主の復興法案原案 H23.04.01 |
民主党がまとめた「東日本大震災復旧復興対策基本法案」の原案と関連法案17本の全容が判明した。復興財源として特別消費税の創設や震災国債の日銀引き受けの検討を明記。津波で水没した土地や原発事故で住めなくなった土地の買い上げの検討も盛り込んだ。
民主党政策調査会と衆参両院の委員会の筆頭理事らでつくる特別立法チーム(座長・中川正春衆院議員)を中心に作成し、近く復旧・復興検討委員会(委員長・岡田克也幹事長)が提言する。菅内閣は5月の大型連休明けにも基本法案をまとめて国会へ提出し、野党の理解を得て成立させることを目指す。
「復興は単なる原形復旧ではなく新たな『地域社会の再生』」とし、「我が国の再興(再創造)を目指す」と強調。基本法施行から5年間をヒト・モノ・カネを投入する「集中復旧復興」期間と位置づける。
震災の被害額を16兆〜25兆円と試算。未曽有の災害として増税を柱とする財源確保策に踏み込んだ。税率を引き上げてその使途を復興財源に限る「特別消費税」や「法人特別税」、被災地以外の人の所得税に一定割合を上乗せする「社会連帯税」を創設し、安定財源の確保を目指す。
また、被災世帯の住環境整備や生活再建支援、道路・河川・公園・下水道、農水施設、社会福祉施設などの復旧財源として「震災国債」の発行に言及。国債増発による金利上昇を避けるため「日銀引き受け」も検討するとした。
被災自治体への手当ても厚くする。「復旧復興交付金」を創設し、市町村が設ける復旧復興基金に拠出金を出すことも検討する。
津波被害や原発事故で暮らせなくなった土地の国による買い上げも検討。集団移転を後押しするとともに「移転が完了するまで被災世帯の『人々の絆』が保たれるよう努める」と強調。津波被害を受けた地域の土地所有権の内容や範囲、売買に特別な制限を課すことも検討する。
エネルギー政策についても「原子力に依存しているエネルギー政策を見直す」と明記し、国と電力会社が協力して「電力供給計画」を策定する。
復興を指揮するのは、首相を長とした防災復興府。府省庁の一部再編を念頭に、防災復興相のもとに副大臣、政務官、事務次官を置き、職員に官民を問わず専門知識や危機管理の経験がある人材を登用するとした。
菅政権は復旧復興の第1弾として、4月中に2011年度の第1次補正予算案を編成する。2兆〜3兆円規模とし、大部分を赤字国債で賄う方針だ。
【復興基本法案の骨子】
○防災復興府を設置。防災復興相を置く
○5年間を集中復興期間に設定
○水没した土地や原発事故で住めなくなった土地の買い上げの検討
○国が電力供給計画を策定。東京電力への財政支援を検討。原発事故の被災失業者への休業補償
○震災国債の発行と日銀の引き受けを検討。法人特別税、特別消費税、社会連帯税の創設検討
(asahi.com) |
平成23年4月1日(金) 菅総理の発言の中で、一つの考え方の案を示しています。「山を削って高台に住むところを置き、そして海岸沿いに水産業、漁港などまでは通勤する。更には地域で植物、バイオマスを使った地域暖房を完備したエコタウンをつくる。そこで福祉都市としての性格も持たせる」
津波対策をハード対策に頼ることを止め、高台における大規模な開発行為で1から街を造ります。そのため全ての土木の技術者としても活躍の場はありそうです。
菅内閣総理大臣記者会見 平成23年4月1日(金)
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(前略)
次いで、いよいよ復興に向けての準備に入らなければなりません。復興は従来に戻すという復旧を超えて、素晴らしい東北を、素晴らしい日本をつくっていく。そういう大きな夢を持った復興計画を進めてまいりたいと思っております。この間、被災を受けられた自治体の市町村長の皆さんと電話などでいろいろと御意見を伺いました。そうした御意見も踏まえて、例えばこれからは山を削って高台に住むところを置き、そして海岸沿いに水産業、漁港などまでは通勤する。更には地域で植物、バイオマスを使った地域暖房を完備したエコタウンをつくる。そこで福祉都市としての性格も持たせる。そうした世界で1つのモデルになるような新たな町づくりを是非、目指してまいりたいと思っております。
(後略) |
各県の復興に関する情報は以下の通りです。
■岩手県
岩手県は、4月中に東日本大震災の復興ビジョンの策定作業に着手し、本年度の前半に中間報告をまとめる考えを示しました。
「いわて災害復興情報リンク集」 ⇒ http://www.iding.org/hukko/
岩手県、復興構想に月内着手 2011年04月02日土曜日 |
達増拓也岩手県知事は1日の定例記者会見で、今月中に東日本大震災の復興ビジョンの策定作業に着手し、本年度の前半に中間報告をまとめる考えを示した。
外部の専門家も含めた委員会を設置して検討する方針。達増知事は「水産業の復興や教育、医療、福祉の在り方について幅広く意見を集め検討したい」と述べた。
被災した漁業者の支援については「難を逃れた漁師の中には意欲と技術を持った人が多い。しかし船と漁具を失い困っている。漁協から船や漁具をリースできる仕組みづくりを国に求めていく」と強調した。 |
■宮城県
宮城県は、東日本大震災の復興計画の下地となる震災復興基本方針(素案)をまとめ、発表しています。
宮城県/震災復興基本方針素案/公共・防災施設を再構築、復旧・再生から発展へ 2011年04月12日 |
宮城県は、東日本大震災の復興計画の下地となる震災復興基本方針(素案)をまとめた。向こう10年間を復旧(3年)、再生(4年)、発展(3年)の3期に分け、単なる被災地の復旧でなく、県の将来像を見据え公共施設・防災施設や商工業のあり方を再構築するとの方針を明記。津波被害の大きい沿岸8市7町の原形復旧は不可能だとして、高台に住宅を整備するなど都市計画を抜本的に見直す必要性をうたった。特別立法・特区制度の柔軟な適用や、みやぎ発展税・環境税などの税収を復旧事業に振り向ける方針も示した。
県は今月中にも、学識者ら10人前後による(仮称)宮城県震災復興計画策定懇話会を設置。復興の基本方針を踏まえ、懇話会の意見を聞きながら8月までに復興計画を作成、9月議会に上程する予定だ。懇話会の座長には元東京大学総長の小宮山宏三菱総合研究所理事長が内定している。
素案では、被災者の生活支援や公共土木施設・ライフラインの早期復旧、農林水産・商工業の復興、災害廃棄物の処理など10項目を緊急重点事項に掲げた。災害廃棄物処理では膨大ながれきなどを1年以内に1次仮置き場に移動、3年以内に2次仮置き場に移し、一元的に処理するとした。インフラの復興方針では、道路は、高盛り土の仙台東部道路や常磐自動車道が津波被害の抑止効果を発揮したことを踏まえ、沿岸部の幹線道路には可能な限り高盛り土構造を採用。再生期には、防災道路の機能を果たす新たな幹線道路ネットワーク整備に着手する。
海岸保全施設は、防潮林の整備と合わせ、堤防幅を拡張するなど新たな構造形式を検討。河川は、地盤沈下などで洪水被害の可能性が高まった低平地を中心に、堤防の早期復旧を目指す。港湾・空港は、東北全体の復興を先導する重要な施設となることから、再生期に震災前以上の状態に回復することを目指す。県は先月29日、懇話会ととともに復興方針・計画づくりに取り組むための全庁横断組織「震災復興基本方針策定ワーキングチーム(WT)」を設置。6月議会で復興計画の1次案を上程する予定だ。
(日刊建設工業新聞) |
宮城県は東北関東大震災からの復興計画案を8月までに作成することを決め、県庁内にワーキングチームを作って基本方針の検討を始めました。
沿岸15市町「再構築」 宮城県、復興計画で明記へ 2011年04月03日日曜日 |
宮城県が策定作業を進めている震災復興基本方針(素案)の概要が2日、分かった。沿岸15市町の津波被害が甚大で、原状回復による復興は不可能と判断。地域住民の意見を採り入れ、被災自治体を含む県土のグランドデザインを再構築することを明記する。
復興計画は2020年度までの10年間を想定し、復興期(3年)、再生期(4年)、発展期(3年)に区分。県民一人一人を復興の主体と位置付け、10年後には震災前を上回る県勢発展が実感できるよう、先進的な地域づくりを計画する。
今後3年間の復興期には、被災地に最低限の社会基盤を復活させる。再生期の間は地域コミュニティーを取り戻し、震災前の姿に近づける本格復興を成し遂げる。発展期では「これまで以上に安心し暮らせる社会」(村井嘉浩知事)を構築することを掲げる。
壊滅的な打撃を受けた農林水産業、商工業、製造業の振興と防災対策は抜本的な見直しを行う。復興に当たり無秩序な土地利用を防ぐため、開発には一定の制限を設ける。既存制度の柔軟な運用も図り、特別立法や特区制度などを活用する。
復興財源には国が創設を検討する大規模な復興基金、交付金などを充てる。県独自課税の「発展税」「環境税」「産業廃棄物税」などの税収を課税趣旨を損なわない範囲で、災害復旧費に充当することも視野に入れる。
県は今月中旬に基本方針案をまとめ、県議会や被災市町、有識者の意見を聞く。今月中に外部有識者会議を設置し、復興計画案の策定作業にも着手。県議会6月定例会に計画案の骨子を説明し、9月定例会には議案として提出する。
復興計画の策定後、県は農林水産、産業労働、社会福祉、教育など政策分野ごとの復興計画づくりを始める。被災市町の復興計画検討も本格化する見通し。 |
■福島県
原発の復旧にめどがたたないためか、まだ発表されていません。
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