液状化とは、地震によって地盤が一時的に液体のようになってしまう現象です。埋立地や河口など砂質の地盤で起こり、地盤の上の建物を傾かせたり沈ませたりします。
この現象は、1964年の新潟地震で、アパートの倒壊や新設の橋の崩落などの被害が続出したことにより注目されました。最近では、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)でも、ポートアイランド・六甲アイランドが被害を受けて注目されました。
新潟地震のアパートの倒壊 |
ポートアイランドの液状化 |
|
|
|
液状化は、水分を多く含んだ砂質の地盤、例えば、盆地や沖積平野、砂丘、砂州など、砂の粒子が小さく粒が揃っている場所で発生しやすい現象です。また、埋立地や干拓地など、人工的に造成された地盤も液状化が起こりやすいといわれています。
地震が発生する前、このような地盤は、すき間に水をたくさん含みながらも砂粒同士が接触していることによって上に建っている建築物を支えています。
しかし、地震が発生して地盤が強い振動を受けると、今まで互いに接して支え合っていた砂粒は崩れ、固まりになろうとします。
すると、固まろうとする砂粒の間に含まれている水には、周りの砂から力が加えられ、水圧が上昇します。
そして、この水圧(間隙水圧)が、上に乗っている土(たくさんの砂粒や水)の圧力と等しくなると、間にある砂粒にかかる力がつり合い、力が加えられていないのと同じような状態になります。
すると、砂粒は浮き上がり、液体と同じように自由に動くのです。
このようになると、その地盤には建築物を支えることなどできなくなってしまい、建築物は土の中に沈み込んだり倒壊したりしてしまいます。
このときには、側方流動(流動化現象)という現象が起こることもあります。この現象は、液状化した地盤が水平に流れるというもので、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では建築物の基礎が破壊される被害が起こり注目されました。
このように、液状化が発生すると地盤は一時的に非常に弱くなりますが、そのときには、水圧により水が砂とともに地表に噴き出す現象(噴砂)も起こり、液状化が収まった後には以前よりも水分の少ない固まった地盤となります。
■液状化の判定
液状化可能性の評価については、「道路橋示方書・同解説(1996 年12
月発行)」に準じる手法を採用することが多いようです。この方法は、表層部での地震動計算結果から地中のせん断応力を求め、液状化対象層ごとに液状化に対する抵抗率(FL)を求め、地層全体の液状化可能性指数(PL)を評価するものです。
ただし、地震時せん断応力比(L)については、東海地震では等価線形計算(SHAKE)により各層のせん断応力を直接求めているケースもあります。また非線形計算(DYNES3D)を用いている場合は、計算で求められた各層のせん断応力が等価線形計算と同等には扱えないことから、地表震度の値から下記のように換算してL
の値を求めるようにしています。
■液状化の対策工
一般的な液状化の対策工は以下の通りです
設計上の区分 |
実務上の考え方 |
代表的対策工法 |
地盤改良
(液状化条件排除) |
密度を増大したり、粒度の改善を行なったり、間隙水圧の逸散を促進するドレーン材を打ち込む工法であり、設計上は全体を改良地盤体として取り扱う。 |
サンドコンパクションパイル工法
振動棒工法・グラベルドレーン工法
バイブロフローテーション工法
コンパクショングラウチング工法 |
地盤改良
地盤の構造物化
(固結工法による対策工) |
地盤改良であるが、セメントや薬液を注入して当初と全く異質の地盤にする。液状化対象地盤の下位まで固結化し、改良した柱や地中壁に置き換えたものとして取り扱う。 |
深層混合処理工法・グラウト工法 |
構造物による対応
(鋼材や構造物による対策工) |
地盤材料とは異なる鋼材や杭を非液状化層や支持層へ打ち込み、液状化による障害を抑止する構造体を構築する。過剰間隙水圧を排水する排水機能付き鋼材も開発されている。 |
杭基礎・鋼矢板・地中壁
排水機能付き鋼材(鋼管・鋼矢板)
|
■液状化の基準
液状化の判定基準は、1つではありません。基準の対象物や目的によってかくかくで制定されています。
指針・基準書 |
発行元 |
発行年度 |
備考 |
道路橋示方書・同解説 X耐震設計編 |
(社)日本道路協会 |
H14 (2002) |
|
下水道施設の耐震対策指針と解説 |
(社)日本下水道協会 |
H18 (2006) |
概ね1に準じている |
水道施設耐震工法指針・解説 |
(社)日本水道協会 |
H21 (2009) |
概ね1に率じている (判定深度は25mまで) |
高圧ガス設備等耐震設計指針 (レベル1もレベル2耐震性能評価) |
高圧ガス保安協会 |
H18,13 (2006.2001) |
概ね1に準じている (KH;設計水平震度が違う) |
河川堤防の液状化工法設計施工マニュアル(案) |
土木研究所 |
H9 (1997) |
概ね1に準じている (Cw:地震特性による補正係数.K;設計水平震度違う) |
建築基礎構造設計指針 |
(社)日本建築協会 |
H13 (2001) |
|
共同溝設計指針 |
(社)日本道路協会 |
S61 (1986) |
|
港湾の施設の技術上の基準・同解説 |
(社)日本港湾協会 |
H19 (2007) |
|
埋立地の液状化ハンドブック改訂版 |
(財)沿岸技術研究センター |
H9 (1997) |
|
危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(S51、H6改正) |
自治省(総務省消防庁) |
S49告示 (1974) |
|
■参考書
対策工設計の参考書として役に立つ書籍をあげてみました。
状化対策工法設計・施工マニュアル(案)平成11年3月 |
当時の建設省土木研究所耐震技術研究センターを中心に各ゼネコン、メーカの共同研究報告書としてまとめられています。細かく実践的にまとめられておりとても参考になります。ただ公開されているわけではなく、入手しにくい書籍です。 |
液状化対策工法 地盤工学会 |
学会がまとめた液状化の参考書。液状化のメカニズムから各設計指針での取り扱い、対策工が幅広くまとめられています。液状化そのものを理解するには最適の書籍ですが、対策工の実施設計レベルでは物足りなさを感じます。市販されており誰でも入手可能です。 |
今回の震災では多くの液状化災害のニュースや動画が流れています。これらを集めてみました。
国交省/民間宅地の液状化対策強化/技術基準見直し、対策工法も調査 H23.05.31 |
国土交通省は、東日本大震災で大規模な液状化の被害が出たのを受け、民間宅地の液状化対策を強化する。宅地造成等規制法の施行令にある技術基準に液状化対策を盛り込む方向で検討を進めるほか、既に住宅が建設された宅地で液状化の被害を防ぐのに有効な工法も調査し、広く周知する方針。対策立案に向けて有識者の意見を聞く場を今夏までに設置する考えだ。
今回の震災では千葉県や茨城県などを中心に大規模な液状化現象が発生し、住宅が傾いたり沈下したりする被害が発生した。国交省は、既に道路や下水道などの公共施設を対象にした液状化対策を検討する有識者会議「液状化対策技術検討会」を設け、今月11日に初会合を開いている。民間の造成宅地についても被害の再発防止に向けた取り組みを強化する必要があると判断した。
民間宅地については、宅地造成等規制法施行令に「宅地造成に関する工事の技術的基準」が定められており、宅地造成で盛り土や切り土の工事を行う場合に、地盤の安全性を高めるために講じる措置(締め固めなど)を明記している。この基準の中に、新たに液状化対策を加える方向で検討を進める。液状化対策を行う場合の助成金などの公的支援制度のあり方や、都道府県知事などが行う開発許可制度の見直しも合わせて検討する。
さらに液状化の被害を防ぐのに有効な、工法の調査・選定と周知方法の検討も進める。現在、宅地開発に伴うがけ崩れや土砂流出などによる災害、地盤沈下などを防止するため、切り土や盛り土、軟弱地盤対策などについての基本的な考え方、設計・施工の留意事項などを整理した「宅地造成マニュアル」があるが、これに盛り込まれた対策工法などは主に新規の宅地造成を対象にしている。このため、既に住宅が建っている既存宅地の液状化対策にも有効な工法を検討し、これを広く周知していく考えだ。
(日刊建設工業新聞) |
繰り返す液状化、150カ所で過去にも発生 研究者分析 H23.05.10 |
東日本大震災で、東京湾岸などで被害があった地盤の液状化が、全国約150カ所で過去に繰り返し発生、最大11回も再発した地域があったとする研究を関東学院大の若松加寿江教授がまとめた。防災上、過去の発生を把握することが重要だと指摘している。
若松さんは、古文書や学術文献を使って、416年から2008年までの約1600年間に起きた地震約1千件を調べた。その結果、噴砂や噴水、噴泥、地中構造物の浮き上がり、という液状化に伴う現象が150の地震で確認できた。
液状化は計約1万6500カ所で起き、うち150カ所では、複数の地震で起きていた。平野や盆地ごとに集計すると、濃尾平野と新潟平野が各11回、秋田・能代平野が10回、大阪平野が9回、関東平野が8回。釧路、十勝平野が各6回、京都盆地が6回、長野盆地が3回だった。福岡平野でも2回あった。
液状化は、地下水位が高く、砂が緩く堆積(たいせき)した地盤で起こる。海岸近くの平地や埋め立て地、内陸では大きな川の流域で起きやすい。液状化の危険度予測地図を作って公表している自治体もあるが、過去の被災履歴も踏まえた判断が有効だと若松さんは考える。「数十年から百数十年の単位で見た場合、一度液状化した所は、強い地震で再び液状化する可能性が高いと考えた方がいい」
再発について、若松さんは「液状化で地下水が噴出しても、地盤は締まらずに、かえって緩んだとの計測結果もある」と指摘。原因は、(1)液状化で一度バラバラになった砂粒の結びつきが以前より弱くなり、土の強度が低下する(2)地震の揺れは、砂の層がまんべんなく締め固められるほど長くは続かない(3)地下水が噴出する際に砂の地盤が攪拌(かくはん)されて再び緩く積もる、などの説があるという。
若松さんは、液状化地点を地図上で検索できるデータベースをまとめ、DVD「日本の液状化履歴マップ
」(東京大学出版会、税込み2万1千円)を出版した。「印税は震災復興に寄付したい」と話している。
(asahi.com) |
液状化の住宅、傾斜5%・沈下1mは「全壊」に H23.05.04 |
内閣府は2日、東日本大震災による液状化現象の被害を受けた住宅の再建を、被災者生活再建支援法に基づく支援金の支給対象とするための新たな基準を発表した。
新基準では、液状化による住宅の傾きが生活上の障害となっている実態を重視し、〈1〉住宅の基礎部分と床が5%以上傾斜した場合や、1メートル以上の地盤沈下は「全壊」〈2〉傾斜や地盤沈下の程度が低い場合は「大規模半壊」や「半壊」――と認定することにした。
震災では、千葉、茨城両県や東京都など広範囲で液状化被害が発生しており、内閣府は基準変更により、数千戸が新たに支援金(上限300万円)の支給対象となると見ている。
(読売新聞) |
政府、液状化救済に新基準 大規模半壊と半壊を新設 H23.05.03 |
松本龍防災担当相は2日の閣議後会見で、東日本大震災による液状化被害を救済する新たな基準を発表した。家屋の傾き度合いで「全壊」か対象外かを認定していた従来の基準に加え、「大規模半壊」「半壊」を新設。大規模半壊で最高250万円を支給することにした。新基準は被災者生活再建支援法の適用を広げるのが狙いだ。
内閣府によると液状化被害の主な対象は、浦安市を中心に約1万2千世帯が被害を受けた千葉、茨城両県の計約1万6千世帯で、この他に東京都、埼玉、神奈川両県でも被害を見込んでいる。菅政権は2日、関係しそうな自治体に新基準を通知した。
これまでの基準では、家屋の柱や壁が壊れていない液状化被害は一部損壊と認定されることが多かった。これに対して、新基準は住宅の傾きや地盤沈下などの要素も重視。従来の基準では、四隅の傾斜が高さ20センチに対して水平方向に1センチ以上ずれている場合のみを全壊としていたが、これより小さな傾きも大規模半壊や半壊として位置づけた。
この他、家屋の地盤への潜り込みについても新基準をつくり、床上1メートルまでを全壊、床までを大規模半壊とし、基礎の上部より下の25センチまでを半壊とした。新基準は今回の震災に限らず今後も適用する方針だ。
(asahi.com) |
日本大震災:東京湾沿岸で液状化42平方キロ 世界最大 H23.04.17 |
東日本大震災に伴い、東京湾沿岸で液状化が確認された面積は少なくとも約42平方キロと世界最大だったことが地盤工学会の現地調査で明らかになった。阪神大震災の4倍以上の規模。茨城など他県でも液状化が確認されており、今後の調査で被害範囲はさらに拡大する見通しだ。
東京電機大の安田進教授(地盤工学)らは3月12〜23日、東京・お台場から千葉県浦安市、千葉市にかけての東京湾沿岸を調査し、液状化が確認できた場所の面積を積算した。
その結果、同エリアだけで東京ドーム約900個分に相当する42平方キロと推計された。過去最悪とされた今年2月のニュージーランド地震の被害面積(約34平方キロ)を上回る。
地下水と砂が一緒に噴き出す噴砂は、浦安市や東京都江東区などで厚さ約30センチと国内最大だった。一方、東京ディズニーリゾートや幕張メッセなど、液状化対策の地盤改良を施した地区に大きな被害は見られなかった。
液状化被害が大規模になった原因について安田教授は「液状化が起きた後も地盤が大きく揺さぶられ続けたからではないか」と、揺れの長さが被害を拡大させたとみている。3月11日の地震では、東京都心や千葉市などで震度4以上の揺れが2分以上続いた。
沿岸の埋め立て地のほか、埼玉、千葉、茨城各県の内陸部でも河川や湖沼沿いに液状化が確認されており、今後の調査で被害面積はさらに広がるという。安田教授は「今後、規模の大きな余震や誘発地震で液状化が再発する可能性がある。復旧は原状に戻すだけでなく、費用をかけても再発を防ぐ地盤対策を行うことが理想的だ」と指摘する。
◇液状化
地下水を含んだ砂の地盤が強い震動を受け、液状となる現象。構造物が傾いたり、砂が地下水と共に噴き出す(噴砂)。地下水が浅い所を流れている場所や埋め立て地で起きやすく、阪神大震災(95年)、ニュージーランド地震(11年)などで深刻な被害が出た。一度液状化した場所は再び液状化しやすい。
(毎日新聞) |
測範囲外も液状化 県、地質など調査へ H23.04.16 |
東日本大震災で、横浜、川崎両市を中心に、県内でも液状化現象が起き、住宅や道路など計七十二件で被害が出ていたことが、県のまとめで分かった。被害想定をしていなかった場所もあり、県はプロジェクトチームを立ち上げ、調査に乗り出す。
県流域海岸企画課によると、横浜市港北区と金沢区の住宅計三十九軒が地盤沈下で一部損壊した。下水道のマンホールが隆起した場所もあった。川崎市川崎区でも、道路の舗装がひび割れたり、段差ができるなどした。
これまで、県は「液状化
予測図」を作成し、危険性を周知してきたが、今回の被害場所には、予測範囲外のところがあった。
このため、県はプロジェクトチーム設置を決定。ボーリング調査などで地質を解析するとともに、横浜市と情報交換などし、対策を検討していく。
国の被災者生活再建支援制度は、十世帯以上の住宅で全壊被害が発生した市町村を支援対象としている。今回は対象外のため、県と横浜市は十五日、内閣府と国土交通省に、制度適用の緩和を求める連名の要望書を提出した。
(東京新聞) |
東日本大震災:液状化で下水1万戸不通 千葉 H23.04.11 |
千葉県内で震災の犠牲者は18人に上り、けが人は重傷11人を含む208人。2人が行方不明だ。犠牲者のうち13人は津波で被災した旭市沿岸部の住民で、その多くは地震から2時間半後に押し寄せた7メートル超の巨大津波にのまれたとみられる。
県内の避難所と避難者数は4月8日現在、117施設863人。このうち県内の被災者は6施設263人(旭市233人、香取市28人、浦安市2人)で、他は福島県など県外からの避難者。ピークは震災翌日の3月12日で、593施設4万7270人に上ったが、多くは交通機関マヒに伴う帰宅困難者とみられる。
火災は東京湾岸部を中心に13件発生。市原市ではコスモ石油のLPG(液状石油ガス)タンクが地震直後に爆発炎上して10日間燃え続け、3月21日にようやく鎮火した。家屋被害は、全壊683戸▽半壊1651戸▽一部損壊1万4998戸で、浸水は床上・床下を合わせて1313棟。被害の大半は津波によるものだった。
一方、東京湾岸部の埋め立て地では液状化が起き、上下水道などのライフラインが広範囲に破壊された。最も被害が大きかったのは、埋め立て地が市域の4分の3を占める浦安市。最大3万3000戸が断水し、下水道も同1万3000戸が不通に。海上自衛隊は浄水を運ぶための専用艦を災害史上初めて派遣した。東京ディズニーリゾートでも駐車場などで液状化の被害が出た。
浦安市の断水は4月6日に復旧したが、下水道は8日現在も4600戸が不通で、トイレも風呂も使えない生活を強いられている。習志野市も被害が大きく、5600戸の下水道が不通だ。
◇水田3分の1壊滅 香取
液状化は、干拓地などで地盤の弱い香取市や我孫子市でも起きた。香取市では北部を中心に水田が壊滅。その面積は市内の水田の3分の1近い2500ヘクタールにも及ぶ。加えて香取市、多古町、旭市では、福島第1原発の事故のため、ホウレンソウなどの野菜の出荷停止も続いている。
(毎日新聞) |
神奈川県の分譲地でも液状化 半世紀前に池を埋め立て H23.04.09 |
横浜市港北区の住宅街でも地表から砂や水が噴き出し、家が傾いたり、道路に亀裂が入ったりした。横浜市などが応急危険度判定をした66軒のうち「危険」が1軒、「要注意」が12軒。港北区も27軒を対象に、罹災(りさい)証明書を発行するための調査を進めている。
50代の男性会社員宅は11日の地震直後に家が傾き、玄関ドアが開かなくなった。庭から砂や水が噴き出して土が盛り上がり、亀裂が入った。駐車場が沈み、道路との間に段差ができて車が出入りできない。10センチほどだった段差は余震で20センチほどに広がり、屋根も傾いてきたという。
修理には1千万円ほどかかりそうだ。男性は「修理の前に地盤を調べないと、また同じ被害に遭う。自己負担になれば生活のめどが立たない」と訴える。近所には、玄関ドアを開けると家が崩壊するおそれがあるとして庭先のガラス戸から家に入る人もいる。
神奈川県によると、一帯は約50年前に池を埋め立てて県が分譲した土地。港北区の担当者は「土壌に問題があった」という。住民は県の負担による地盤調査を求めている。神奈川県は「約50年前に分譲した責任を負うのは難しい」としつつも「被災者救済は大切。県の調査が可能かも含め検討中」としている。
(asahi.com) |
傾く家…液状化の浦安 住民「ローンあと30年分」 H23.04.09 |
市域の4分の3が液状化した千葉県浦安市の今川地区に住む会社員(44)の家は傾いており「いると気持ち悪くなってくる」。玄関ドアが閉まらず、室内のドアは「自動ドア」のように勝手に閉まる。下水道が使えず、一家4人は友人宅やホテルの風呂を使う。
損害保険会社の鑑定人は「傾いてますね。1度から2度」と言った。県建築士事務所協会支部の無料相談では「500万〜800万円。住みながら直せばもっとかかる」と言われた。
会社員は「多重債務者になってしまう」と頭を抱える。5年前に購入し、市内の賃貸マンションから住み替えた。「治安はいいし知人もできた。家族のためにがんばった」。上の子どもは小学校に入ったばかり。ローンはあと30年分、3500万円近く残る。「埋め立て地と知っていて住んだ私たちの自己責任なのか。行政側に責任はないのか」
浦安市は、液状化した地区の戸建て約9030戸を対象に、家屋の被害調査の最中だ。被災者生活再建支援法に基づく公的支援は、市の調査に基づく罹災(りさい)証明書がもととなる。
千葉市美浜区も液状化で355棟が全半壊した。磯辺地区の会社員西村広行さん(45)宅は約9センチ陥没。母さき子さん(74)は室内にいると気分が悪くなるという。3月末に調査した施工業者は「傾きは1度未満。水平に戻すだけで1千万円かかる」と言われた。
9年前に建て替え、住宅ローンが15年以上残る。建物自体は壊れておらず、西村さんは「公的支援の対象にならないのではないか」と心配する。
市内の約2900ヘクタールで液状化が起きた香取市では、住宅がほぼ水平に沈む「垂直沈下」の被害がかなり出た。上下水道が破損するなどの支障が出ているが、外観上は全壊扱いになるほど傾いていない。はっきりした基準もないといい、市の担当者を悩ませている。
(asahi.com) |
茨城南部の液状化、補助対象の「かさ上げ」も H23.04.09 |
茨城県南部の潮来市日の出地区では玄関が地中に沈んだ家や、正面が約50センチ沈んで裏側が50センチほど浮き上がった新築の家などが、いたるところにある。地区はかつて川の一部だったが干拓で水田になり、1977年に196ヘクタールの宅地になった。
下水道が使えず、主婦(48)が空き地で食器を洗っていた。自宅は地面のコンクリートが隆起し、玄関のドアが半分しか開かない。車庫の地面も波打っている。「ローンが残っており、引っ越しは簡単にできない」と嘆く。
元会社員の吉野一夫さん(62)宅は無傷に見えるが15センチ傾いているという。「東北の人に比べればまだ良い方だが、いくらかでももらえるならうれしい」
茨城県南部の神栖市、鹿嶋市などでも被害が出ている。神栖市の担当者は「瓦も壁も基礎も大丈夫なのに、傾いている住宅は直すのに多額のお金がかかる。何とかしてあげたい」と話し、被災者生活再建支援制度の支給対象になる「大規模半壊」にかさ上げできないか検討している。
茨城県災害対策本部によると、県内の住宅被害は7日現在で全壊496棟、半壊2758棟、一部損壊が6万9606棟。市町村による被害認定を経て罹災(りさい)証明を受け、被災者生活再建支援制度が適用される住宅は「全体でどのくらいかまだ分からない」という。
(asahi.com) |
液状化範囲は過去最大 「危険低い」と自治体認定の我孫子でも 2011.4.6 |
東日本大震災で、液状化現象が関東地方から東北地方まで、過去最大規模の広範囲にわたって発生していたことが6日、地盤工学会の現地調査で分かった。揺れた時間の長さが一因とみられ、沿岸部の住宅地を中心に被害が拡大した。中には自治体が「危険度が低い」と認定していた地域で被害が出たケースもあり、液状化対策の抜本的な見直しを迫られそうだ。
液状化は、水分を含んだ砂質の地盤が地震の震動を受けて液体のように動く現象で、埋め立て地や河口で起きやすいとされる。泥状の土が噴き出したり、建物が土の中に沈み込み、倒壊に至る危険性もある。
昭和39年の新潟地震では橋が崩落し、アパートが倒壊。阪神・淡路大震災(平成7年)でも神戸沖の人工島・ポートアイランドで建物が傾くなどの被害があった。
地盤工学会などによると、東日本大震災で液状化が確認されたのは、千葉県浦安市▽千葉県我(あ)孫(び)子(こ)市▽東京都江東区新木場▽横浜市金沢区の八景島周辺▽茨城県ひたちなか市−などで、東京湾沿岸での被害が目立った。また、東北地方でも、宮城県北部を流れる江(え)合川(あいがわ)周辺で、液状化により堤防が壊れるなどの被害が確認されている。
液状化が震源から離れた関東地方を含む広範囲に及んだ要因について、調査にあたった東大大学院工学系研究科の東畑(とうはた)郁(いく)生(お)教授(地盤工学)は「揺れの強さというより、比較的長い時間揺れが続いたことにある」と分析している。
住宅地での被害が顕著だったことも特徴の一つだ。
埋め立て地を中心に、面積の約4分の3にあたる1455ヘクタールで液状化が発生した浦安市では、市の調査で8戸が全壊、466戸が半壊に相当すると判定された。横浜市の八景島に近い集合住宅は地盤が約60センチも沈下し、一時、下水道が使用できなくなった。
東畑教授は「造成時に『締め固め』と呼ばれる工法などで液状化対策を行う工業用地に対し、住宅地の対策は所有者まかせになっているのが実情。建設コストを抑えるために、対策を行わないケースも多い」と指摘している。
一方、我孫子市では市が作成した液状化危険度マップで「対象外」とされた地区でも、一部の住宅が傾くなどした。東畑教授は「各自治体が作成するマップの精度も含めて、対策を再検討する必要がある」と話している。
(MSN) |
曲線施工で液状化対策/構造物直下の改良可能/三信建設工業ら 2011/04/04(月) |
三信建設工業と東興ジオテックは、曲線ボーリングを併用した静的圧入締固め工法(コンパクション・グラウチング工法:CPG工法)を開発した。CPG工法は、流動性が低いモルタルを地盤に圧入する液状化対策工法。これまでは直線的な施工しかできなかったが、半径30m程度までの曲線施工を実現した。滑走路や護岸、石油タンク、歴史的建造物など既設構造物への影響を最小限に抑えながら、構造物直下の地盤を改良できる。
曲線施工には、専用開発した削孔・注入兼用機や独自に開発した資機材を使う。内径50mmの注入管の先端に、角度を持たせた曲線ボーリング用の先端ヘッドを装着して削孔するが、さまざまな工夫が導入されている。削孔を終えると、吹き矢のような原理で水圧によって先端ヘッドのインナーピースを土中に飛ばし、管の内部を貫通させる。その後、モルタルの注入作業に移るという流れだ。
兼用機での削孔は、回転のみと回転と打撃の組み合わせを選択可能なほか、最大45度までの角度で削孔できるため、多様な土質でのさまざまな曲線施工に対応できる。削孔時はジャイロセンサーを使い、精度を確認ながら曲線施工する。また、通常の削孔機に比べ2倍のパワーを持たせたことで、最大120m程度の長距離削孔も可能とした。
CPG工法は液状化対策として多くの実績を持つが、直線的な施工しかできないため、既設構造物の直下を改良する場合は構造物に削孔用の穴を開ける必要があった。曲線施工が実現したことで、既設構造物への影響を最小限に抑えながら直下の地盤改良が可能になる。今後、潜在需要の掘り起こしを進める方針だ。
(建設通信新聞) |
泥土・ヘドロ臭・傾いた家…浦安、液状化の爪痕 H23.03.25 |
東日本巨大地震は、関東地方にも深い爪痕を残した。
千葉県では津波や転倒で17人が死亡し、浦安市など東京湾沿岸で液状化現象が起きた。「私たちも被災者。でも、東北の人たちのことを考えると……」。住民は静かに耐えている。
◇
亀裂や段差が走る道路、傾いた住宅や電話ボックス、1メートルの高さに飛び出したマンホール……。
東京都に隣接する千葉県浦安市は、舞浜や新浦安など、市内の約4分の3を占める埋め立て地が、液状化現象に見舞われた。
25日午前の時点で市内4000世帯で断水。9600世帯で下水道の使用が制限され、約4000世帯でガスが止まっている。東京ディズニーリゾートも、建物などの被害はなかったが、一部の駐車場が液状化で泥に覆われた。電力の供給状況などを踏まえて休園中だ。
毎日朝と夕方、ペットボトルを持って市の給水車へ向かう主婦(38)は「水道が使えず、一家4人、入浴も洗濯もできない。食事もパンやコンビニ弁当ばかりです」と疲れた表情で話した。
23日の夜は計画停電のため、3時間、懐中電灯の明かりだけの家で、ラジオのニュースに耳を傾けた。「東北で被災した人たちのことを考えると、我慢しなければと思うけれど、つらい」。この主婦はつぶやいた。
地震と液状化のその時を、別の主婦(45)は「路面がうねり、あちこちで舗装がきしみ声を上げた」と話した。会社員の男性(54)も「地面から、滝を逆さまにしたように泥水が噴き出し、埋まってしまうと思って必死に逃げた」と振り返る。
街を覆った泥土は、市民やボランティアらの尽力で道路脇に撤去されたが、市などの回収が追いつかず、高さ1メートルほどの山になって並んだまま。乾燥すると土ぼこりを上げて舞い、雨が降ると下水やヘドロのような臭いを漂わせる。一日中、マスクが手放せない。
上水道とガスは月末に復旧する見通しとなった。しかし、下水道は、どこが破損したか確認が難しく、市災害対策本部は「いつ使えるようになるかメドが立たない」と説明する。
住民にとっては、資産価値の下落も気がかりだ。薬剤師の女性(56)は「子供が独立したら、今住むマンションを売って老後の資金にするつもりだった。でも、街にこんな被害が出ては……」と嘆いた。
こうした中、市外の親類などの家に避難する家庭も。そこを狙った空き巣や車上狙いの被害が出ている。 (読売新聞) |
湾岸の人気タウン・浦安、液状化の三重苦 2011/03/22(火) |
東日本巨大地震で液状化被害を受けた千葉県浦安市では、埋め立て地の中町、新町地区でライフラインの途絶が続き、震災発生11日の今も、断水と下水道使用制限、ガス供給停止の「三重苦」を抱える地域がある。
市は、上下水道や道路などの被害額を約734億円と推計。高級住宅地として人気を集めてきた街は、波打つ道路、傾いた住宅と電柱、数え切れない地割れや陥没と、痛々しい姿をさらけ出している。
◆給水所に行列◆
断水と下水道の使用制限があった高洲地区では連日、給水所に長蛇の列が作られた。同地区のマンション6階に住む児玉恭子さん(44)はポリタンクを手に、「給水所を往復するのは重労働。夜間に仮設トイレへ行くのも怖いし、寒い。毎日、水と食料の心配ばかり」とこぼした。
東京湾埋め立てで市域を4倍に広げた市では、液状化被害は予測されていた。今回、被害範囲は想定より小さかったものの、市面積の4分の3に及んだ。市によると、21日現在、液状化により水道は約4000戸で断水、下水道は約1万1900世帯で使用を制限、ガス供給の停止は約5800件に上っている。
下水道の復旧が特に難航している。市によると、損傷箇所には、余震によって新たに泥土や水が流れ込むため、いまだに被害の全容がつかめないという。すべての下水管をチェックした上での完全復旧には長期化が予想されている。
◆各地に泥の山◆
街中に積み上げられている泥土の山も、「重く、硬く、粘る。際限がない」(34歳男性)と頭の痛い問題。21日は雨となり、ボランティアらによる撤去活動は中止となった。入船地区の吉田朝子さん(53)は「水分を含むとヘドロ臭く、乾くと黄砂のように飛び、室内にも入り込む。マスクがないと生活できない」と顔をしかめた。
市によると、市内の幹線道路上の泥土は21日までにほぼ撤去され、残っているのは住宅地の生活道路周辺だけとなった。しかし、各所の集積所で回収した後の処理はめどが立っていない。県廃棄物指導課によると、民間事業者にコンクリートやアスファルトの材料として引き取ってもらうか、廃棄物として最終処分場に引き渡すことが想定されているという。
◆治安に不安も◆
生活環境の悪化で、親類宅などに避難する住民が増え、留守中の空き巣対策など治安の維持も重要課題となってきた。市によると、21日現在では2件にとどまっているが、今後、帰宅した住民による発見で被害件数は増加するとみられている。市は24時間体制で防犯車両を巡回させ、ボランティアも拡声機やチラシ配布で注意を呼びかけている。
今川地区の会社経営男性(58)は、14年前に9000万円で購入した約50坪の洋風住宅について、専門業者に被害調査を依頼することにした。「自慢じゃないが、千葉リーヒルズと言われた高級住宅街。それが今では廃虚の街並み。地価の暴落は避けられない」と肩を落としていた。
この苦境に、被害の少なかった元町地区の住民もボランティア参加などで支援に乗り出し始めた。堀江地区の阿部勉さん(48)は言う。「新住民と旧漁師町という色分けをされるが、同じ浦安市民。一緒に乗り切れば一つになれる」
(読売新聞) |
横浜・大黒ふ頭で液状化現象 2011.3.12 |
横浜市鶴見区大黒ふ頭では、桟橋付近の幅約6メートルの測道で、30メートルあまりにわたり路面の亀裂から水や砂が噴き出し液状化した。
横浜市港湾局によると、付近では12日午前、面積1000〜2000平方メートルにわたって液状化が確認されたという。
(MSN) |
ディズニーリゾート周辺で液状化現象 2011.3.11 |
千葉県浦安市舞浜の東京ディズニーリゾート(TDR)周辺の道路や空き地は、液状化により土砂と水があふれ、埋め立て地の脆弱(ぜいじゃく)さをあらわにした。道路も至る所で波打ち、バス停や電柱が大きく傾いた。1メートルほどの段差や亀裂が各所に見られた。JR舞浜駅のバスターミナルのデッキも支柱部分の舗装が大きくめくれた。
地震発生と同時に東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)のアトラクションは運転を中止。TDRを運営するオリエンタルランドによると、12日は点検などのため両パークとも臨時休園する。13日以降は未定という。
当時TDSにいた東京都多摩市からグループで訪れた女性(18)は「従業員から頭を下げるよう指示された。揺れが収まって広場に集まったが、再開は無理と思い、帰ることにした。アトラクションに3つしか乗れなかったが、地震なので仕方ない」と話し、運行を見合わせたJR舞浜駅前にシートを敷き、途方に暮れていた。
TDRの複合商業施設イクスピアリでは、近くの浦安市運動公園体育館に客を一時避難させた。
(MSN) |
■液状化の動画(Youtube)
20110317
千葉県浦安市液状化被害
新浦安液状化
東北地方太平洋沖地震
千葉市美浜区の激しい液状化現象
飛び出したマンホール...液状化の爪痕
浦安
東北地方太平洋沖地震
液状化現象(千葉幕張)
東日本大震災
浦安 高洲地区 液状化現象
■液状化の調査結果
東日本大地震における辰巳の被害調査結果.
東京電機大学理工学部 安田進
各県の液状化に関する資料が公開されています。
■千葉県
想定地震と震度分布予測・液状化危険度予測(H19被害想定調査)
■東京都
東京の液状化予測図
■神奈川県
被害が大きくなりそうな地域とは
- 神奈川県防災・災害情報
■埼玉県
埼玉県・液状化マップ
浦安市液状化被害調査(11/03/28)
東北地方太平洋沖地震による東京湾岸埋立地での液状化−流動化被害(第1
報)千葉県環境研究センター
柏市被害想定調査
2011年3月東北地方太平洋沖地震千葉地区被害調査速報(No.1)木更津工業高等専門学校
環境都市工学科 鬼塚研究室
|