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 FEM教育シリーズ

 
 21世紀に入り、我が国の土木・建築にかかわる設計方法は大きく変わろうとしています。
その設計方法は「性能設計」、「限界状態設計法」、「信頼性設計」などという言葉で表現され、今後急速に進んでいくと考えられます。

 「性能設計」への動きは、1つには従来の仕様規定に基づいた許容応力度法的な設計法では、発注者の構造物に対する要求性能を十分に満たすことができないという反省からきています。もう1つはあとで述べるように経済のグローバリゼーションに伴う外圧 によるもの(?)です。

 新しい設計法は、性能マトリクスなどを用いて要求性能レベルや照査に用いる荷重レベルとの関係を明瞭に示したり[性能明示型設計]、あるいは、要求する性能だけを示し、その設計に対しての詳細な規定はせずその照査は設計者に委ねる[性能照査型設計]というものです。具体的には「設計供用期間」を定め、限界状態設計法と呼ばれる方法で、「安全性」「使用性」「修復性」などの基本要求性能を満たすように設計し、その要求性能を「検証(または照査)」することになります。その場合、構造物に対する作用(または外力)や材料特性の不確実性を確率論で評価した信頼性設計法(ISOが推奨)が採用されることになります。

 従来の地盤・構造物関連の設計法(許容応力度法的設計法を含む)は、地盤材料・相互作用が複雑なために、いわば、部分的に成立つ理論を理論的にでなく大胆に単純化してつなぎ合わせて全体の設計理論を構成する手法で行われることが多く、許容応力や安全率概念に基づいておおまかな評価しかできず、妥当性の最終評価は経験のウエイトが大きいものでした。それゆえ、 過大設計や危険側設計が発生したのです。このために、仕様規定が必要不可欠で、柔軟性を欠くものになったとも言えます。もちろん、許容応力度法的設計法は失敗経験等や新理論を反映してより妥当なものへと進化してきたのも事実です。

 しかし、今、世界経済がグローバル化するなかで、1国のみにしか成り立たないような不透明な設計法は、材料調達や業務受注機会均等に大きく影響するわけですから、排除されていくのは当然のことといえます。 日本が加盟している、1995年1月に発効したWTO/TBT協定では

(1)政府発注は性能でおこなう
(2)国内の強制規格は国際規格(ISO)に対応する

ようになっています。これを受けて、今、 建築や土木の世界では設計基準等の「性能規定化」が進行しています。 新しい設計法の最大のメリットは、新技術・新工法への対応が可能になり機能・安全度を選択できるなど、設計に対する自由度や柔軟性が増すことでしょう。その結果、コストの縮減や発注者の構造物機能に対する満足度が上がります。一方、今後の典型的な性能設計においては、従来の仕様規定とは異なり、基本要求性能を満たすことを設計者みずから示す必要があります(この場合、実際には公の機関または事業主体の審査を受けることになるか、または、公の機関または事業主体で規定した照査方法に従うことになります)。

 実務の力学・水理学的検討では応力度の検討と変形・変位の検討や地下水(間隙水圧)の検討は、実際は連成しているにも関わらず、単純化した考え方で個別に行われたりすることが多いわけです。このため、最終的な検討結果が応力、変形・変位、間隙水圧・流速・流量などの変数(物理量)間で整合していないことが普通に生じます。このような各物理量が整合しない設計の検証では合理的な形で検証することが困難で、成果物は一般に過大な設計になります。検証で最も有効なものは構造物モデルや実構造物を用いた特性試験などで得られた計測値に基づいて性能を評価する方法ですが、費用・時間を考えると現実的でない場合が多いでしょう。

 そこで登場するのが、FEMのような力学の基本原理や連続体力学をきちんと取り込み、より正当に各物理量を評価できる数値解析的/計算工学的手段です。この方法では途中の段階の構造物の状態の検討も簡単にできます。

 いさぼうネットでは、これら最新の動向を見据えながらコンピュータを利用した解析手法のひとつであるFEM理論を基本から応用まで理解できるよう、インターネット講座「FEM教育シリーズ」を開催いたします。

参考文献
1)
本城勇介 :「基礎構造物の性能設計と耐震設計」,地質と調査,第4号pp.2-8,2001年
本城勇介氏プロフィール: http://www.cive.gifu-u.ac.jp/lab/up3/honjo_biod_j.htm
2)
国土交通省 :「土木・建築にかかる設計の基本」,平成14年10月
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/13/131021_.html
3) 地盤工学会ハンドブック :「地盤構造物の設計法」,pp.441-473
4) 中島賢二郎 :「性能設計に関するメモ」,JACEM 35号,H14.12.16
FEM教育シリーズ
FEM理論をはじめるまえに
FEM入門シリーズを始める背景(性能設計への移行)を簡単に説明します。
国土交通省「土木・建築にかかる設計の基本」からわかること
設計法はどう変わる?
現行設計法の問題点を他の方法と比較します。
明らかになった問題点が「土木・建築にかかる設計の基本」では重要であることを説明します。
こんなに違う構造物
事例を使いながら「現行法」と「FEM」の違いを明らかにし、FEMが問題点解決の有力な方法であることを示します。
FEMを使いましょう
「FEMの歴史」と「どんなところで利用されているか」、及び「将来の可能性」について説明します。

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