いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
 シリーズコラム 「社会を支える人工知能」 
【第18回】:建設工事事故データベースの分析(その1)
 

 いさぼうネットのメールマガジン(2月15日付)でもお伝えしたように、今年の2月2日に,国土交通省から建設工事事故データベース[1]が公開されました。この建設工事事故データベースを数回に渡って分析してみようと思います。本来は、分析前に目的を細かく設定する必要がありますが、今回は事故の傾向をザックリと確認することを目的とします。

 まずは、国土交通省のサイトから建設工事事故データベース(エクセルファイル)をダウンロードして、中身を見てみましょう。報告件数は1,564件で、工事分野や事故分類など様々な項目が記載されています。サーっと全体を見てみると、自由記述の項目では一部空欄になっている報告もあります。中には、分析で重要になりそうな「事故に至る経緯と事故の状況」、「事故の要因(背景も含む)」と「事故発生後の対策」が全て空白の報告もあります。

 表1に、建設工事事故データベースに記載されている項目を示します。国交省のサイトには概要と利用規約に関するPDFもあり、このPDFの【参考】には各項目のコード表が記載されています。

表1 建設工事事故データベースの項目
項目 備考
工事分野 20種類(コード表より)
工事の種類 23種類(コード表より)
工種 77種類(コード表より)
工法・形式名 自由記述
災害分類 自由記述
事故分類 13種類(コード表より)
天候 自由記述
事故発生年・月・時間 自由記述
事故発生場所(都道府県) 自由記述
事故に至る経緯と事故の状況 自由記述(長文)
事故の要因(背景も含む) 自由記述(長文)
事故発生後の対策 自由記述(長文)

 今回はコード表に種類が記載されている項目(工事分野、工事の種類、工種、事故分類)を分析してみたいと思います。自由記述の項目を絡めた分析は、次回以降、複数回に渡ってご紹介する予定です。

 はじめに、4項目のヒストグラムを見てみましょう。図1に、項目毎のヒストグラムを示します。ここではトップ10となる種類をヒストグラム化しています。工事分野と工事の種類では、それぞれ「道路」と「土木一式」が飛びぬけています。工種では、「その他土木一式工事」が最も多いですが、具体的ではないので、自由記述の項目を参照する必要があります。事故分類に関しては、「墜落」と「その他」が多くなりました。




図1 4項目のヒストグラム

 次に、工事分野でトップ3である「道路」、「河川」と「砂防・地滑り」のそれぞれにおいて、工種と事故分類がどのようになっているかを見てみましょう。表2〜4に、各工事分野における工種と事故分類を示します。ここでも、トップ10を表にしました。なお、工種と事故分類を1つの表にまとめていますが、これらの関係性はなく、独立して集計しています。

表2 「道路」における工種と事故分類(トップ10)
工種 事故分類
その他土木一式工事 209 その他 173
維持修繕工事 135 建設機械等の転倒、下敷、接触、衝突等 138
コンクリート構造物工事 83 墜落 131
アスファルト舗装工事 78 自動車の転倒、下敷、接触、衝突等 76
トンネル工事 49 工具等取り扱い 75
鋼橋上部工事 26 飛来、落下 62
法面工事 24 取扱運搬等 36
PC橋上部工事 18 クレーン等の転倒、下敷、接触、衝突等 27
護岸工事 15 倒壊 11
水路・管路工事 14 土砂崩壊 6
表3 「河川」における工種と事故分類(トップ10)
工種 事故分類
護岸工事 113 建設機械等の転倒、下敷、接触、衝突等 84
維持修繕工事 61 墜落 56
その他土木一式工事 49 その他 54
築堤工事 34 自動車の転倒、下敷、接触、衝突等 43
浚渫・床堀工事 16 工具等取り扱い 31
樋門・樋管工事 10 飛来、落下 31
ダム工事
(高さ15m未満を除く)
8 取扱運搬等 14
コンクリート構造物工事 8 クレーン等の転倒、下敷、接触、衝突等 10
トンネル工事 7 倒壊 9
土工事 4 土砂崩壊 2
表4 「砂防・地滑り」における工種と事故分類(トップ10)
工種 事故分類
砂防工事 75 墜落 42
法面工事 14 建設機械等の転倒、下敷、接触、衝突等 18
その他土木一式工事 13 その他 16
地滑り防止工事 3 工具等取り扱い 12
その他のとび・土工・コンクリート工事
(その他のとび、コンクリート等工事)
2 土砂崩壊 9
維持修繕工事 2 飛来、落下 9
護岸工事 2 自動車の転倒、下敷、接触、衝突等 9
根固・水制工事 2 取扱運搬等 4
土工事 1 爆発、火災等 2
現場杭打等工事 1 クレーン等の転倒、下敷、接触、衝突等 1

 事故分野「道路」では具体的でない「その他土木一式工事」と「その他」が最も多いので、詳細を知るには自由記述を分析する必要がありそうです。事故分類を見てみると、建設機械、自動車やクレーンなどの事故が多くの割合を占めているように感じます。「河川」においては、「護岸工事」での事故が多く、建設機械に関する事故が多いです。「砂防・地滑り」では、「砂防工事」と「墜落」が多いです。「墜落」のイメージがイマイチ掴めなかったため、自由記述の「事故に至る経緯と事故の状況」を簡単に見てみると、踏み外しや転落などの事故でした。

 今回は、建設工事事故データベースの4項目について見てみました。次回は自由記述の部分を含めて分析をしていこうと思います。皆様、事故にはくれぐれもお気お付けください。

[1]
国土交通省大臣官房技術調査課が提供する「建設工事事故データ」
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001048.html
Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.