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シリーズコラム ダム用アンカーを語る |
【はじめに】 連載にあたって |
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アンカー工法とは、対象物を締め付けることで、その安定性を高める工法で、欧米豪など世界的にアンカーの使用はこの40年で著しく増えています。
海外の現代アンカーの特徴は、岩盤やコンクリートが対象のロックアンカーが多いことで、その多くを堤体の補強などダム関係が占め、経済性、安全性の優位性から使用事例が急増しています。これらダム用アンカーの特徴は、大口径・長尺の削孔、大容量の緊張力、材料の徹底した防食仕様、高品質グラウトによる定着体形成、高精度の計測管理などです。
一方、国内でのアンカー対象の大半は、緊張荷重の高くないソイルアンカーまたは斜面安定用であるため、日本はアンカー荷重の大容量化に遅れており、「削孔速度、削孔精度、グラウト品質、計測」等の最新技術において遅れています。
しかし、近いうちに日本でも欧米豪同様にダム用アンカーの出番は確実に増えてくると予想されます。現実に、一昨年度から三保ダムや川俣ダムのアンカー全面更新工事が始まり、5月には国内第1号の堤体PSアンカーの施工が始まります。この絶好の時宜を迎えて、両ダムで設計を主導してきた筆者としては、長年の研究による知識を存分に活かして、ダム用アンカーについて語りたいと思います。
今後、国内のダムにおいてもアンカー補強の実施が増えると予想されますが、本連載がその参考になるとともに、ダム用アンカーの発展と普及につながれば幸甚です。また、本連載を読まれた各位が、アンカー技術の本質やだいご味にも触れることができれば幸甚です。
最後に、筆者の十数年にわたるダム用アンカーの国内適用の研究において、久保弘明先生(日本アンカー協会名誉会員)と大町達夫先生(東京工業大学名誉教授)には、ずいぶん助けて頂きました。ここに両先生の御名を挙げて感謝の念を示したいと思います。
当面の掲載の予定を以下に示します。
掲載予定 |
タイトル |
キーワード |
はじめに |
連載にあたって |
主旨 |
第1回 |
ダム用アンカーの全体像 |
アンカーの種類、用途(斜面安定用、構造物固定用)、
各タイプの特徴、長期信頼性 |
第2回 |
国内外比較のアンカー史 |
アンカーの歴史、海外概況、海外事例、国内概況、
国内事例、内外対比
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未定 |
アンカーの力学メカニズム |
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要求性能と基本仕様 |
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ダム用アンカーの設計 |
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ダム用アンカーの施工 |
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緊張管理と維持管理 |
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技術課題と今後の方向 |
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以下の記事は、堤体PSアンカーに焦点を当てて、ダム用アンカー最新状況を総括的に記している。
参考にお読み下さい。
建設通信新聞2015年(平成27年) 11 月27日(金曜日)