前回
【第18回】 安くても誤差数センチ?RTK-GNSSにチャレンジ!(その二)からの続きです。
今回は今まで集めた部材を基に、一気にRTKの基準局(Base)構築までやってみます。
基準局の構築は、単体GNSSで長時間やる方法と、RTKで行う方法がありますが、約7.1kmの地点に国土地理院が設置した電子基準局があったので、そちらで計測した30秒間隔の測位データをBASEとし、弊社の屋上に設置した新基準局用GNSSアンテナの測位データをRoverとして、RTKのPOST解析(後解析)を行い、誤差1cm以内で座標決めした基準局設置を目標として、構築してみました。
(13) 基準局用アンテナ(Tallysman tw3740)と基準局用オプションを注文する。
Tallysman3740(40db:基準局用)
価格 \14,162 + 消費税(\1,000)
(その他購入品)
・Tallysman tw3740 用のSMA変換アダプタ+5Mケーブル \4,910
・ポール取付金具 TW3000 ALUMINUM L BRACKET \754
・マスプロ電工 サイドベース BS・CSアンテナ50cm以下用 溶融亜鉛メッキ
SBM45EBSアンテナ用 ¥ 2,769
(14) ホームセンターで1mmのアルミ板を購入し、グランドプレーンを作成する。
・ホームセンターで1mmのアルミ板(20cm x 30cm)を購入し、15〜20cm程度の直径で円形又は多角形のプレートを切り抜き、中心に直径20mmの穴を開ける。
(注)グランドプレーンとはGNSSアンテナ下方からの電磁波を反射するための器具です。
(15) アンテナにグランドプレーンを取り付け、ポール取付金具とサイドベースでアンテナポールに設置する。
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GNSSアンテナにグランドプレーンを取り付けた状態 |
屋上のアンテナポールに取り付けた状態 |
(16) アンテナのSMA端子に前述のCSG-SHOPから購入したM8Tモジュール時計・SMAアンテナコネクタ・USB付き基板を取り付け、USB端子をパソコンに接続する。
・まず、M8TGNSSモジュールにカバーを取り付けます、カバーはダイソーで5個で100円のプラスチックケースがちょうどいいサイズなので、両端に8mmと2mmの穴を開け作成しました。
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GNSSモジュールに自作カバーを取り付けた状態 |
ダイソーのプラスチックケース(5個入り100円) |
(17) インターネットで以下のURLからU-blox社のU-centerというソフトをダウンロードし、パソコンにインストールする。
▽u-center Windows(u-blox)
「英語ページ」
https://www.u-blox.com/en/product/u-center-windows
「日本語ページ」
https://www.u-blox.com/ja/product/u-center-windows
(18) u-centerを使用して、GNSSモジュール(M8T)の初期設定を行う。
・comポートの選択とボーレートの設定
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comポートの選択 |
ボーレートの設定 |
・[CTRL]+F9で初期設定メニュー選択へ
[CTRL]+F9 で表示される選択画面
・受信する衛星の選択
GNSS(GNSS Config) を選択して、計測するGNSSを選択して、Sendボタンを押す。
(注)GPS+BeiDou、GPS+GLONASSは可能だがGPS+BeiDou+GLONASSは不可。
これは、受信波の種類は2通りまでなため。
・基準局、移動局の両方可能な設定
MSG(Messages)を選択して、Message:02-13 RXM-SFRBX を選択して、USBをOnにチェックして、Sendボタンを押す。
MSG(Messages)を選択して、Message:02-15 RXM-RAWX を選択して、USBをOnにチェックして、Sendボタンを押す。
(これで、基準局にも、移動局にも使用できるようになります。)
・設定をフラッシュメモリに書き込む。
CFG(Configration)を選択して、Device欄のすべてのデバイス(1〜4)をドラッグして青色にしてから、Sendボタンを押す。
(これで設定がGNSSモジュールに書き込まれます。)
・再度u-centerを起動して、[CTRL]+F9で設定が記憶されているかを確認する。
(19) RTKLIB の RTKNAVI を使用して、U-BLOXフォーマットで24時間のログを取る。
(注)RTKLIBはVer2.4.2を使用しました。
・右上のIボタンをクリックして、(1)RoverのTypeをSerialにして、U-Centerで選択したCOMポートをビットレートを設定して、FormatはU-bloxにする。
・右上のLボタンをクリックして、(6)RoverのTypeをFileにして、出力ファイル名を設定する。
・下欄の[Option]ボタンをクリックして、Setting1>Positioning ModeをSingleにして、最下欄の使用する衛星をチェックする。
・Startボタンを押すと、以下のような画面になり、平行してログを取り始めます。
・12時間〜24時間程度のログをとります。
SINGLEモードでログ取得画面
(20) 国土地理院電子基準点データ提供サービスから、最も近い電子基準点のデータをダウンロードする。(ユーザ登録が必要)
・弊社の場合は、局番号:020973局名:松任が約7.1kmの地点にあるので、このデータをダウンロードしました。
・ダウンロードファイルは観測ファイルと衛星軌道ファイルで、衛星軌道ファイルは(GPS用とGLONASS用をダウンロードしました。)
局番号 |
観測日時(UTC) |
観測ファイル |
衛星軌道情報ファイル |
020973 |
2018/07/02 23:00:00 〜 2018/07/03 13:00:00 |
ダウンロード |
ダウンロード |
観測ファイル 0973184a.gz 1,687Kb
0973184a.18o (観測ファイル)
衛星軌道情報ファイル 0973184a.18N.tar.gz 103Kb
0973184a.18g (GPS 衛星軌道ファイル)
0973184a.18n (Gronas 衛星軌道ファイル)
(21) 国土地理院(FTPによるデータ提供サービス)から日々の座標値(R3)または(F3)を取得。
▽FTPによるデータ取得について(国土地理院)
http://terras.gsi.go.jp/ftp_about.html#coordinates
・POSTRTK解析を行う為に、電子基準点位置を正確に取得する必要があります。
国土地理院のFTPサービスでは日々の電子基準点位置の暫定測地解であるR3値と最終解であるF3値が公開されています。
(注)R3値は翌日には公開されます。F3値は半月程公開が遅れます。
・今回はは暫定値である、R3値を使用することにしました。
・今回使用した局番号:020973局名:松任のR3の2018年7月3日12:00(UTM)のデータ
2018 07 03 12:00:00 -3.7242368560E+06 3.5291467700E+06 3.7762879749E+06 3.6537265708E+01 1.3654068017E+02 5.0421003538E+01
Lat. (deg.) : 36.537265708
Lon. (deg.) : 136.54068017
Height.(m.) : 50.421003538
(22) GNSSの単体観測ログをPOST解析用にコンバートする。
・RTKCONVを起動して、パラメータを設定してコンバートします。
・Intervalは電子基準点データが30秒単位なので、30(S)を選択します。
・RTCM,RCVRAW,or RINEX OBS ?にチェックを付け、ファイルは(19)で取得したGNSSのログファイルを指定します。
・Output Directoryにチェックを付け、は出力ファイルを出力したいフォルダを指定します。
・FormatはU-bloxを指定します。
・[RINEX OBS/NAV/GNAV/HNAV/QNAV/LNAV and SBS]にチェックを付け、適当な出力ファイル名をつけ、拡張子は[.obs]とします。
・Convertボタンを押して、変換を開始します。
・Output Directoryに[.obs]の拡張子を持ったPOSTRTK用計測ファイルが作成されます。
RTKCONVの画面
(23) RTKPOSTでPOST基線解析を行い、My基準点の正確な座標を取得します。
・数値基準点日々の座標値(R3)の座標データをoptions>Positions>Basestation に登録する。(フォーマットはLat/Lon/Height(deg/m))
・Intervalをチェックして、30(s)とする。
・RINEX OBS:Roverに(22)で作成した観測ファイル(xxxxx.obs)を指定する。
・RINEX OBS:Base Stationに(20)でダウンロード・解凍した数値基準局観測ファイル(yyyyy.obs)を指定する。
・RINEX *NAV/CLK,SP3,IONEX or SBS/EMS に(20)でダウンロード・解凍した各衛星の軌道情報ファイルを衛星の種類だけ指定する。
(注)今回はGPSとGLONASSの2種類を使用したので、.18g と .18n を指定しました。
・solution にチェックを入れて、解析出力のファイル名(zzzzzzz.pos)というファイル名を入力します。
・Options>Setting1>Positioning Mode をKinematicにします。
・Options>Setting1>Frequencies/Filter TypeをL1 Forwardにします。
・Options>Setting1>Elevation Mask(°)/ SNR Mask(dBHz)をElevation Mask(°)はL1、SNR MASKはRover Base stationともにチェックを入れて、L1欄をすべて40を入力します。
・Options>Setting1>の最下欄のGNSSのチェックはGPSとGLONASSのみチェックしました。
・Options>Setting2>Integer Ambiguity Res(GPS/GLO/BIDS)はFIx and H OFFとしました。
・上記設定パラメータを保存する為、Options>Positions>Station Position Fileに適当なファイル名を入力して、SaveボタンでPosition Fileを保存します。
(これでパラメータの設定は終了です。)
・Execution ボタンをクリックして、解析データのファイル出力を行います。
・Plotボタンで解析データを確認します。
(左上にある[ALL]をQ=1に切り替えてみるとFIXデータのみのPLOTとなります。)
・出力ファイルをEXCELに取り込み、Q=1以外のデータ行は削除して、latitude(deg) longitude(deg) height(m)の平均値を求めます。
・平均値を基準局座標とします。
(新基準値:tallysman TW 3740)
36.5613126674 136.6140955143 62.4724333119
(注)2週間後ぐらいに 日々の座標値(F3)がダウンロードできれば、その基準局座標をRTKPOSTのOptionsのPositinsに設定し、再計算すれば、より正確な座標となります。)
RTKPOSTによる7.1Km離れた電子基準点を基準局にしたPOST解析画面
(24) 善意の基準局に公開しました。
善意の基準局掲示板というサイトがあるのをご存知ですか?
大学や高等学校、企業等有志が無償で開設し、公開したRTK用基準局の一覧サイトです。
▽善意の基準局掲示板
http://rtk.silentsystem.jp/
今回構築したRTK用基準局を上記掲示板に掲載させてもらいました。
北陸地区にはまだ基準局がなかったので、現在試験公開中ですが利用したい人はぜひ使ってみて下さい。
次回は、今回開設した基準局を使用しての実際のRTK測位作業をご紹介します。
続きは
【第20回】 安くても誤差数センチ?RTK-GNSSにチャレンジ!(実際にRTKを試みる。)です。