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いさぼうコラム
田舎の技術屋爺

令和8年6月25日

第9話 「食い物の話3―春の山菜」

 踏査している時に見つける自然の食い物は楽しみなものです。収穫があった所は不思議とよく覚えています。
 春、山に行くと昼休みも取らずに仕事を終わらせ、山菜取りを楽しむ人がいて、仕事ながら楽しみも多くありました。最近は山の食べものが分からない人が多くなったのでしょうか、仕事の合間に食えるものを探している人は見かけなくなりました。もったいない。
 私の住む田舎は3月後半から4月初旬の雪溶けとともに地面に出る黄色いフキノトウから山菜採りが始まります。
 フキノトウは雪が積もって水の流れる付近や陽が当たるところに黒い地面が少し出てくると、黄色い花が顔を出します。春が来たと知らせるこの山菜は少し苦味がありますが独特の香りがある山菜です。
 天ぷら、フキ味噌などにして食べますが、雪に囲まれた長い生活からフキノトウの天ぷらを食べると「あ〜、春が来るぞ〜」と毎年思うのです。

春のフキノトウ
春のフキノトウ
旨そうなウド
旨そうなウド

 もっと、雪解けが進むと平地に「コゴミ」がニョキニョキと出てきます。若い芽と茎を採って、天ぷらや胡麻和えにして食べます。時期が過ぎると茎は硬くなり、食べられなくなるのですが、雪が後退するところに次からつぎへと新しく出てきますので長い間取れます。
 少したつと山の南東向きの斜面に「ウドとゼンマイ」が出てきます。山の斜面の上の方から雪は解け、順番に出てくるのですが、採りに行くタイミングを間違うとウドは硬くなり、ぜんまいは葉が出てしまいます。
 この地域の山菜の取れる斜面は軟い泥岩でできているため、斜面はよく滑り、枝や木につかまりながら収穫するのですが足の踏ん張りが必要です。
 年寄りには年々、斜面で踏ん張るのが大変になりロープを持って山菜採りに行きますがそれも最近はきつくなりました。
 ウドの最高級品は崩れた土砂(崩土)の中に埋まった白い部分が太い20cm前後の物ですが1〜2本採れれば良く、昔兄弟で採りに行くと争って探したものです。
 ウドは捨てるところがありません、先端部の若芽と軟らかな茎は天ぷらに、真ん中の緑の茎は拍子木切りにして、唐辛子を入れたピリ辛きんぴらに、白い部分は酢味噌和えなどにして食べます。キンピラは何度食べても飽きませんが、この時期だけです。
 田舎で採ったウドを昔、東京でご近所に配ったら、「あら、このウドは白くなく緑ですね」と言われました。店で売っているウドは穴倉のような暗いところで栽培したもので緑にならない様で、苦味とか香りが強くなく食べ易いです。自然のウドにはアクがあり、食べなれた人には栽培ウドは物足りません。

 ゼンマイはウドと同じころ山の斜面で採りますが写真のように一株に何本も出ます。最初は先端部が膨らんだ男ぜんまいが伸びて来て、その次に女ぜんまいが出てくるようですが、プロは女ぜんまいしか取らないそうです。味が違うと言いますが私にはわかりません。
 採ったゼンマイは天気の良い日に茹でて、天日に干しながらもんで、乾燥させると十分の一くらいの量になります。晴れる日を見込んでゼンマイを採らないと上手く干せません。
 昔からゼンマイ採りはお年寄りの良いお小遣い稼ぎの山菜で、雪解けとともに山でお年寄りが山菜取りをしていましたが、最近は山に入るお年寄りもいなくなりました。その結果、山の道は荒れてわからなくなったり、雑木が生えて通れなくなりました。
 山菜採りにはマナーがあります。一株を全部は採ってはいけません、少し残すのがマナーですが、知らない人は全て根っこから取ったりして、山を荒らす人が居て困るそうです。採ったものを捨てていく人が多いそうで、昔は「山に入るな」の看板をよく見かけましたが、最近は「熊が出ます」に変わってきました。マナーを守れば春の山菜取りは楽しいです。
 同じ時期に関西の人が干して食べるスッカンポ(大イタドリ)が採れ、少し遅れてコシアブラが採れます。

ぜんまい
ぜんまい
女ぜんまい
女ぜんまい
コシアブラ
コシアブラ

 5月の前半になると最近は家の周りで花わさびが取れるようになりました。昔からワサビは好物の一つなので山で見つけたワサビを採り、半日陰で水があるところを選び色々なところに移植したのですが、条件が悪いのか十年以上失敗ばかりで諦めていました。
 最近、つぶれた横穴から出る水のところで数本のワサビの葉を発見し、喜んでいたところ、翌年近くの鯉の越冬用の横穴の所にワサビの花を多量に発見しました。
 10年以上も前に移植したのを忘れていたのです、ワサビ根が取れるのはまだかかるでしょうが、毎年咲くワサビの花は可憐で花と茎を食しています。
 わさびの花と茎を採って、サ〜と湯通ししてから瓶や袋に入れ、振って冷蔵庫に入れておくと1日でツ〜ンとした、わさびの香りがする辛いワサビ漬けができ、それに麺つゆを少しかけて食べます。酒のつまみや熱いご飯の上にのせて食べるとツーンとする辛さと香りが何とも言えないです。

山わさびと花
山わさびと花
たけのこ
たけのこ

 横穴というのは砂地盤に横穴を掘り、夏はスイカやウリなどを入れて冷蔵庫として、冬はサトイモやジャガイモなどの保温庫として皆さん使っています。昔は、雪が多いので池の鯉なども水を貯めた横穴で越冬させていたそうです。
夏は冷たく、冬は暖かい電気が不要の天然の横穴は見直すべき施設です。
 5月の中旬になるとタケノコ、フキ、ワラビなどが採れます。タケノコの時期に合わせるように木の芽(山椒の葉)が出るので、この若芽をたっぷり使って、好物のタケノコご飯や若竹煮を作ります。
 フキは外で鍋を使って一日かけて煮詰めて佃煮(キャラブキ)を作っていましたが、評判があまり良くないので、最近はあく抜きして、油揚げを入れたフキ煮を作っています。

フキと蕨
フキと蕨
木の芽(山椒の葉)
木の芽(山椒の葉)

 私の野菜畑は虫がついて困りますが、山菜は虫もつかず、肥料を与えもしないのに毎年、同じように出て来て採れます。自然に採れる山菜は不思議なものです。

 田舎は年寄りばかりになり、若い人は山に入らず、山にある自然の食べものを知らない人が増えています、町に住む人は山菜と毒草を間違えて食べたなどと毎年、ニュースになります。田舎でも春に山菜教室でも開いて、山菜を採る楽しみや料理法を教えるのもいいかもしれません。
ここに書いた山菜は周辺で取れる自然食で私の周りには食べきれないくらいあります。これを採って料理して、食べるのが田舎生活の楽しみです。

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