2023年12月20日
今年(2023年)のユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に、「アレ(A.R.E)」が選ばれた。言わずと知れた、阪神タイガースを38年ぶりの日本一に導いた岡田彰布監督の隠語、目標フレーズだ。シーズン当初は阪神ファン以外では然程話題に上ることも少なかったと記憶しているが、優勝が近づくにつれ頻繁にメディアに取り上げられる様になり、日本中に知れ渡った。リーグ優勝である「アレ」の達成後は、「アレ」に続けとばかりに「アレのアレ」まで掲げ、見事日本一まで手繰り寄せた。そんな良い流れに気を良くしたのか、まだ年も明けていないのに、早くも来季の目標フレーズが話題になっていて、「アレ」と「連覇」を掛けて「アレンパ」などという、洒落た新語まで飛び出している。いずれにしても、関西特有のノリもあって、久しぶりに明るい新語・流行語が選ばれ、大いに盛り上がっている。一年の締めくくりとしては大変良かった。それに比べると、政治の話題は混迷を深めるばかりで…。気分が悪くなる、止めておこう!
新語・流行語に話を戻そう。「アレ(A.R.E)」以外では、同じ野球の分野から「ペッパーミル・パフォーマンス」が、地球温暖化の影響で熱波に襲われる様子を言い表した「地球沸騰化」が、また珍しいところでは被害が多発している熊に関して「OSO18/アーバンベア」が、更には安易に犯罪に手を染める若者の「闇バイト」などが、トップテン入りしている。そうか、そうだったな、と頷く言葉ばかりだ。その他、正に「今時だなぁ〜!」と思わせる言葉がトップテン入りしている。「生成AI」(generative AI)だ。恐らく、他のトップテン入りした言葉と違い、この単語は、今後何十年もニュースに登場し続けると思われる。それほど、これから先、多くの人間に影響を与えることになる、インパクトのある新語だ。ひょっとしたら、我々の生活を劇的に変えてしまう可能性すらある。
その基本技術であるAIは、Artificial Intelligenceの略で、日本語では「人工知能」と訳されている。阪神タイガースの陽気なノリなら出てきそうな、「エエ、アイデア」の頭文字から取ったものではない。オッと失礼。将棋界では早くから話題になっているこのAI、「ビッグデータと呼ばれる膨大な情報の中から最適解を選び出す優れもののソフトウェア」と勝手に理解しているのだが、意外と我々の身近な所でも用意・利用されていて、小生も暫く前から随分お世話になっている。
ほぼ毎回、この四方山話では花を中心とした植物の写真を掲載しているのだが、その時にお世話になっているのだ。名前を知らなかったり、知っていても不安だったりすると、スマホで名前を調べ、確認している。余程の悪条件でない限り瞬時に名前を教えてくれる、大変ありがたいサービスだ。これなど正にAIのなせる業だ。最近では、左手人差し指の爪の異変を写真に撮ってこのシステムに照会したところ、「緑膿菌」に感染していることを突き止めることができ、大変驚いている。最早、(皮膚疾患に限られるのかもしれないが)特徴的な症状が表れていれば、写真を通して何の病気に罹患しているか調べることが可能になった、と言えそうだ。病気であることを認識させて早期に医者に掛かる手助けをするツールとして使うならば、大変便利だと言える。何とも凄い時代になったものである。
凄い時代と言えば、「生成AI」の代表的なソフトウェアである「ChatGPT」(開発元はOpenAI社)は、その革新的な技術とサービスで、まるで生身の人間がするように、会話が出来たり文章を作成できたりして、世間をアッと言わせている。感情があるのではないかと思える程の、その成果の見事さには、本当に驚かされる。生成された文章を見せられると、文章を書くのが苦手な人間にとっては書くのが恥ずかしくなってしまう程だ。
『いさぼうネット』で「社会を支える人工知能」のコラムを執筆している荒木光一氏が、第17回『話題のchatGPTを利用してみよう!』(https://isabou.net/knowhow/colum-ai/colum17.asp)で、小生が四方山話に載せた『パンク』(第1042話)の内容から事故報告書をChatGPTに書かせているのだが、思わず笑ってしまう程見事な出来栄えだ。実際に体験したかのような内容が網羅され、理路整然と書かれていて、事故報告書としてそのまま使えそうだ。凄いものが出てきたものだ。
更にその後、面白がって、@7個のキーワードだけを与えた場合、A7個のキーワードとタイトルを与えた場合の2つのケースについて、『BLACK FRIDAY と恵比須講』(第1058話)にかぶらせる形で書かせて見せたのだが、簡潔で分かり易い文章には嫉妬さえ覚えてしまう。いずれ荒木氏がコラムで紹介すると思うが、もうここまで進化しているのかと驚かされるばかりだ。ただ、単純に驚くと同時に、人間の手を煩わさないでここまで出来てしまう怖さも感じている。真偽を見極められるのか、という不安が大きくなってくるからだ。「生成AI」に限らず、AIを利用する人間のリテラシー向上は勿論だが、その人間性の研鑽も必要不可欠だと言えるだろう。戦争や犯罪に使われたら…。
なお、『テレ朝news』に、「ChatGPT」に新語・流行語大賞の受賞理由を聞いた時の答えが載っている(https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/900000869.html?page2)ので、是非ご覧になっていただきたい。恐らく、その秀逸な答えに脱帽してしまうだろう。
【文責:知取気亭主人】
緑膿菌に侵された人差し指の爪
|
|