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最大瞬間風速105メートルの世界
 

平成25年11月12日

 
フィリピンに上陸した台風30号で被災した方々に心よりお見舞い申し上げます。

この台風、米軍合同台風警報センターが、台風30号がフィリピンに上陸した際の最大風速を秒速87.5メートル、最大瞬間風速を同105メートルと算定している と11日、発表しました。 (日本の気象庁観測の最大風速は秒速64メートル、最大瞬間風速は同90メートル・・・最大風速の解析方法として、米国は1分平均、日本は10分平均であるため米国の方が大きく出る)

英紙ガーディアンによると、センターが観測したのは上陸の約3時間前。その後も勢いがほとんど弱まらなかったことが衛星データで確認され、上陸時のスピードを同程度と算定し ました。専門家は「上陸した台風の中では、史上最強クラスだ」としています。

最大瞬間風速105メートル/秒とはどんな世界なのでしょうか?その前に風速の定義をおさらいします。

風は、一定の速さで吹いているものではなく、ある時は強く、ある時は弱く、刻々とその速さが変化しています。
風速は、平均風速や瞬間風速というように風速を求める時間によって様々な風速表現があります。また、最大風速などのように最大値を表す風速もあります。

例えば10分間の風速の変化を見るとします。一番風速が小さいときで2.5メートル/秒、一番大きいときで25.0メートル/秒の風が吹いたとします。この瞬間毎の風を「瞬間風速」と言います。 瞬間風速は3秒平均(風速計の測定値(0.25秒間隔)を3秒間平均した値(測定値12個の平均値))をいいます。また、この10分間の風速を平均すると13.8メートル/秒になり、これを「平均風速」といいます(※最小値最大値の単純平均ではなく、あくまで10分間の平均(スカラーまたはベクトル)であるため、「average(最小2.5,最大25.0)≠平均13.8」)。 また、平均風速や瞬間風速の最大値を「最大風速」、「最大瞬間風速」といい、「最大風速」は10分間の平均風速の最大値、「最大瞬間風速」は瞬間風速の最大値ということになります。

天気予報や気象情報などで「風速○メートル」という場合、10分間の平均風速を指します。
一般的に、瞬間風速は平均風速の1.5から2倍近い値になります。暴風警報が発表され、「25メートルの暴風の恐れがある」といった場合、瞬間風速では50メートル近い風が吹く可能性があるということになります。

では日本では過去にどのくらいの最大瞬間風速を記録しているのでしょうか?気象庁の統計データから抽出してつくったのが下表です。トップは沖縄県宮古島で1966/9/5に観測された85.3メートル/秒です。やはり風が強いのは島や半島の観測地点ですが、最大瞬間風速60メートル/秒を超えるのは年に1回あるかないかです。今回観測された105.0メートル/秒(気象庁発表では90メートル/秒)というのは全くの想定外ということになります。
 

順位 都道府県 地点 観測史上1位の日最大瞬間風速 統計開始年
(m/s) 風向 年月日
1 沖縄県 宮古島 85.3 北東 1966/9/5 1938年
2 高知県 室戸岬 84.5 西南西 1961/9/16 1921年
3 鹿児島県 名瀬 78.9 東南東 1970/8/13 1937年
4 沖縄県 那覇 73.6 1956/9/8 1953年
5 愛媛県 宇和島 72.3 西 1964/9/25 1939年
6 沖縄県 与那国島 70.2 欠測 1994/8/7 1957年
7 沖縄県 石垣島 70.2 南東 1977/7/31 1941年
8 沖縄県 西表島 69.9 北東 2006/9/16 1972年
9 鹿児島県 屋久島 68.5 東北東 1964/9/24 1937年
10 東京都 八丈島 67.8 1975/10/5 1937年
11 静岡県 石廊崎 67.6 東北東 2004/10/9 1940年
12 徳島県 徳島 67.0 南南東 1965/9/10 1940年
13 熊本県 牛深 66.2 東北東 1999/9/24 1949年
14 沖縄県 南大東(南大東島) 65.4 北東 1961/10/2 1947年
15 沖縄県 志多阿原 63.8 南南東 2010/9/19 2009年
16 長崎県 雲仙岳 63.7 2004/10/20 1938年
17 静岡県 網代 63.3 2004/10/9 1937年
18 沖縄県 久米島 62.8 2007/9/15 1958年
19 鹿児島県 枕崎 62.7 東南東 1945/9/17 1942年
20 沖縄県 宮城島 62.6 西北西 2012/9/29 2008年

気象庁統計情報から抽出

 では風速105mとはどんな体感となるのでしょうか。

 下表は「日本風工学会風災害研究会HP」からの引用表です。風速10メートルで傘がさせなくなり強風注意報が発表されます。20メートルで電線が鳴り始め、30メートルでは何かにつかまっていないと立っていられなくなります。50メートルでは多くの樹木が倒れ、60メートルでは木造住宅の倒壊が始まったり、鉄骨構造物が変形したりします。

 参考表があるのはここまでで、風速105メートルの世界は想像も出来ません。時速に換算すると378キロメートル、新幹線よりも速くなります。

瞬間
風速
(m/s)
10 20 30 40 50 60以上
風の
呼び方
やや強い風 強い風 非常に強い風 猛烈な風
歩行者や屋外作業者 風に向かって歩きにくくなる。
傘がさせない。
風に向かって歩けない。
転倒する人も出る。
高所での作業はきわめて危険。
何かにつかまっていないと立っていられない。

屋外での行動は危険。

樹木・電線など 樹木全体が揺れ始める。
電線が揺れ始める。
樹木全体が揺れる。
電線が鳴り始める。
細い木の幹が折れたり、根の張っていない木が倒れ始める。
電線が大きく揺れる。
多くの樹木が倒れる。
屋外設置物 看板やトタン板がばたつき始める。
アンテナが揺れる。
看板やトタン板が外れ始める。 看板が落下・飛散する。 看板が飛散する。
道路標識が傾く。
電話ボックスや自動販売機が倒れたり、移動したりする。
電柱や街灯が倒れる。
ブロック壁が倒壊する。
走行中の車 道路の吹流しの角度が水平になり、高速運転中では横風に流される感覚を受ける。 高速運転中では、横風に流される感覚が大きくなる。 通常の速度で運転するのが困難になる。

走行中のトラックが横転する。
車の走行は危険な状態になる。

建造物 樋が揺れ始める。 屋根瓦・屋根葺材がはがれ始める。
雨戸やシャッターが揺れる。
屋根瓦・屋根葺材が飛散し始める。
外装材がはがれ始める。
自転車置き場などのひさしが変形する。
固定されていないプレハブ小屋が移動、転倒する。
パイプハウスのフィルム(被覆材)が広範囲に破れる。
屋根瓦・屋根葺材が広範囲にわたって飛散し始める。
外装材が飛散し、下地が露出し始める。
カーポートなどの屋根が変形する。
固定の不十分な金属屋根の葺き材がめくれる。
養生していない仮設足場が崩落する。
脆弱なパイプハウスでは骨組みが曲がり始める。
屋根瓦・葺材および野地板・下地板が飛散し、小屋組が露出する。
外装材が広範囲にわたって飛散し、下地材が露出し始める。
老朽化した木造住宅が倒壊する。
木造小屋の屋根が骨組みごと飛散し始める。
金属屋根の葺き材が広い範囲で剥がれる。
固定していない雨戸や窓シャッターが外れはじめる。
堅牢な作りのパイプハウスが倒壊し始める。
木造住宅の倒壊が始まる。
鉄骨構造物が変形する。
                                       ※日本風工学会風災害研究会HPから引用

 強風というくくりでは、竜巻があります。有名な藤田スケールでは以下のように100メートル/秒を超える体感もあり、今回の台風は、藤田スケールでのF4に相当し、「住家がバラバラになってあたりに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する。1 トン以上もある物体が降ってきて、危険この上もない。」という表現となります。
 

藤田スケール
F0:17 〜32m/s
(約15 秒間の平均)
テレビアンテナなどの弱い構造物が倒れる。小枝が折れ、根の浅い木が傾くことがある。非住家が壊れるかもしれない。
F1:33 〜49m/s
(約10 秒間の平均)
屋根瓦が飛び、ガラス窓が割れる。ビニールハウスの被害甚大。根の弱い木は倒れ、強い木の幹が折れたりする。走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる。
F2:50 〜69m/s
(約7 秒間の平均)
住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。大木が倒れたり、ねじ切られる。自動車が道から吹き飛ばされ、汽車が脱線することがある。
F3:70 〜92m/s
(約5 秒間の平均)
壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車が持ち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半は折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。
F4:93 〜116m/s
(約4 秒間の平均)
住家がバラバラになってあたりに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する。1 トン以上もある物体が降ってきて、危険この上もない。
F5:117 〜142m/s
(約3 秒間の平均)
住家は跡形もなく吹き飛ばされるし、立木の皮がはぎとられてしまったりする。自動車、列車などが持ち上げられて飛行し、とんでもないところまで飛ばされる。数トンもある物体がどこからともなく降ってくる。

 

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