フィリピンに上陸した台風30号で被災した方々に心よりお見舞い申し上げます。 この台風、米軍合同台風警報センターが、台風30号がフィリピンに上陸した際の最大風速を秒速87.5メートル、最大瞬間風速を同105メートルと算定している
と11日、発表しました。
(日本の気象庁観測の最大風速は秒速64メートル、最大瞬間風速は同90メートル・・・最大風速の解析方法として、米国は1分平均、日本は10分平均であるため米国の方が大きく出る)
英紙ガーディアンによると、センターが観測したのは上陸の約3時間前。その後も勢いがほとんど弱まらなかったことが衛星データで確認され、上陸時のスピードを同程度と算定し
ました。専門家は「上陸した台風の中では、史上最強クラスだ」としています。
最大瞬間風速105メートル/秒とはどんな世界なのでしょうか?その前に風速の定義をおさらいします。
風は、一定の速さで吹いているものではなく、ある時は強く、ある時は弱く、刻々とその速さが変化しています。
風速は、平均風速や瞬間風速というように風速を求める時間によって様々な風速表現があります。また、最大風速などのように最大値を表す風速もあります。
例えば10分間の風速の変化を見るとします。一番風速が小さいときで2.5メートル/秒、一番大きいときで25.0メートル/秒の風が吹いたとします。この瞬間毎の風を「瞬間風速」と言います。
瞬間風速は3秒平均(風速計の測定値(0.25秒間隔)を3秒間平均した値(測定値12個の平均値))をいいます。また、この10分間の風速を平均すると13.8メートル/秒になり、これを「平均風速」といいます(※最小値最大値の単純平均ではなく、あくまで10分間の平均(スカラーまたはベクトル)であるため、「average(最小2.5,最大25.0)≠平均13.8」)。
また、平均風速や瞬間風速の最大値を「最大風速」、「最大瞬間風速」といい、「最大風速」は10分間の平均風速の最大値、「最大瞬間風速」は瞬間風速の最大値ということになります。
天気予報や気象情報などで「風速○メートル」という場合、10分間の平均風速を指します。
一般的に、瞬間風速は平均風速の1.5から2倍近い値になります。暴風警報が発表され、「25メートルの暴風の恐れがある」といった場合、瞬間風速では50メートル近い風が吹く可能性があるということになります。
では日本では過去にどのくらいの最大瞬間風速を記録しているのでしょうか?気象庁の統計データから抽出してつくったのが下表です。トップは沖縄県宮古島で1966/9/5に観測された85.3メートル/秒です。やはり風が強いのは島や半島の観測地点ですが、最大瞬間風速60メートル/秒を超えるのは年に1回あるかないかです。今回観測された105.0メートル/秒(気象庁発表では90メートル/秒)というのは全くの想定外ということになります。
順位 |
都道府県 |
地点 |
観測史上1位の日最大瞬間風速 |
統計開始年 |
(m/s) |
風向 |
年月日 |
1 |
沖縄県 |
宮古島 |
85.3 |
北東 |
1966/9/5 |
1938年 |
2 |
高知県 |
室戸岬 |
84.5 |
西南西 |
1961/9/16 |
1921年 |
3 |
鹿児島県 |
名瀬 |
78.9 |
東南東 |
1970/8/13 |
1937年 |
4 |
沖縄県 |
那覇 |
73.6 |
南 |
1956/9/8 |
1953年 |
5 |
愛媛県 |
宇和島 |
72.3 |
西 |
1964/9/25 |
1939年 |
6 |
沖縄県 |
与那国島 |
70.2 |
欠測 |
1994/8/7 |
1957年 |
7 |
沖縄県 |
石垣島 |
70.2 |
南東 |
1977/7/31 |
1941年 |
8 |
沖縄県 |
西表島 |
69.9 |
北東 |
2006/9/16 |
1972年 |
9 |
鹿児島県 |
屋久島 |
68.5 |
東北東 |
1964/9/24 |
1937年 |
10 |
東京都 |
八丈島 |
67.8 |
南 |
1975/10/5 |
1937年 |
11 |
静岡県 |
石廊崎 |
67.6 |
東北東 |
2004/10/9 |
1940年 |
12 |
徳島県 |
徳島 |
67.0 |
南南東 |
1965/9/10 |
1940年 |
13 |
熊本県 |
牛深 |
66.2 |
東北東 |
1999/9/24 |
1949年 |
14 |
沖縄県 |
南大東(南大東島) |
65.4 |
北東 |
1961/10/2 |
1947年 |
15 |
沖縄県 |
志多阿原 |
63.8 |
南南東 |
2010/9/19 |
2009年 |
16 |
長崎県 |
雲仙岳 |
63.7 |
北 |
2004/10/20 |
1938年 |
17 |
静岡県 |
網代 |
63.3 |
北 |
2004/10/9 |
1937年 |
18 |
沖縄県 |
久米島 |
62.8 |
南 |
2007/9/15 |
1958年 |
19 |
鹿児島県 |
枕崎 |
62.7 |
東南東 |
1945/9/17 |
1942年 |
20 |
沖縄県 |
宮城島 |
62.6 |
西北西 |
2012/9/29 |
2008年 |
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気象庁統計情報から抽出 |
では風速105mとはどんな体感となるのでしょうか。
下表は「日本風工学会風災害研究会HP」からの引用表です。風速10メートルで傘がさせなくなり強風注意報が発表されます。20メートルで電線が鳴り始め、30メートルでは何かにつかまっていないと立っていられなくなります。50メートルでは多くの樹木が倒れ、60メートルでは木造住宅の倒壊が始まったり、鉄骨構造物が変形したりします。
参考表があるのはここまでで、風速105メートルの世界は想像も出来ません。時速に換算すると378キロメートル、新幹線よりも速くなります。 |