農業用ため池の決壊による水害などを防ぐため、地方自治体の管理権限を強化する「農業用ため池管理保全法案」が2月19日に閣議決定されています。
ため池は、降水量が少ない地域などで農業用水を確保するため、人工的に造成された池であり、農林水産省のため池のデータベースには約9万6000カ所が登録されていますが、全国にあるため池の実数は20万箇所といわれています。つまり半数以上のため池が国や自治体の管理のないまま利用されてきたのです。
一方でため池は一般には耕作地や集落の上流にあることから、ひとたび決壊すると甚大な被害が生じます。
東日本大震災により決壊した藤沼湖では多数の死者・行方不明者を出しました。
これらの状況を受け、国では、ため池に関し、管理マニュアルの作成、あらたな解析手法(累積損傷度を考慮した解析=ニューマークD法)の実施、ため池の緊急点検などがされてきました。
それらの対応中にも、昨年の7月豪雨では、また多くのため池が決壊しました。
▽平成30年豪雨 ため池に関して
https://isabou.net/Convenience/aviso/news_20180719.asp
今回の法律は、これらため池の防災対策の一環で、ため池の所有者らに対し、ため池に関する情報を都道府県に届け出るよう義務付け、都道府県は決壊した場合に周辺地域に被害を与える恐れのあるため池を「特定農業用ため池」に指定し、防災工事を所有者らに命令したり、代執行を行ったりできるようにするものです。
■法律の概要
〇 所有者等による都道府県への届出を義務付け(第4条第1項、第2項、附則第2条)
○ 都道府県によるデータベースの整備、公表(第4条第3項)
○ 所有者等による適正管理の努力義務(第5条)
○ 適正な管理が行われていない場合の都道府県の勧告(第6条)
○ 都道府県等による立入調査(第18条)
※特定農業用ため池に対し
(1)特定農業用ため池の指定
○ 都道府県は、決壊した場合に周辺地域に被害を及ぼすおそれがある農業用ため池を「特定農業
用ため池」として指定 (第7条)
○ 形状変更行為の制限(許可制) (第8条)
○ 市町村によるハザードマップ等の作成 (第12条)
(2)防災工事 (第9条〜第11条)
○ 所有者等による防災工事(改良・廃止)の計画届出
○ 都道府県による防災工事の施行命令、代執行
(3)保全管理体制 (第13条〜第17条)
○ 所有者不明で、適正な管理が困難な特定農業用ため池 について、市町村が管理権を取得できる
制度を創設
▽国会(平成31年 常会)提出法律案
(農林水産省) http://www.maff.go.jp/j/law/bill/198/index.html
本法律が施行されると、本格的にため池の対策が進む可能性があります。
技術者としては専門技術や情報を準備しておきたいところです。
<関連リンク>
※ニューマークD法の情報については下記ページをご参照ください。
▽SERID研究会 http://www.serid.jp/
※ニューマークD法のソフトウェアについては下記ページをご参照ください。
▽地震時強度低下を考慮した変形解析システム『SERID』
https://www.godai.co.jp/soft/product/products/serid/index.htm
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