NEXCO切土補強土工法設計・施工要領が令和6年7月に改定されました。本図書は、NEXCOが実施する道路建設または維持管理に関わる斜面安定のための切土補強土工法の調査・設計・施工に必要な事項を記載しています。平成19年1月以来の改定となります。その概要を紹介します。
図書の発売は9月19日(木)販売開始予定とされており、まだ手元には届いていませんが、新旧対比表がNEXCO総研ブックストアページにて公開されています。この新旧対比表をもとに、紹介します。
主な改定事項は以下の2点です。
(1) 防食工におけるJIS規格改正に伴う防錆種別の表記の整合
令和3年12月20日に溶融亜鉛めっきに関する“JIS H 8641”や“溶融亜鉛めっき試験方法に関する”JIS H 0401”等のJIS規格が改正されました。亜鉛メッキ製品になじみの深い“HDZ”というう表記は、改正後”HDZT“に変更されました。
これまで溶融亜鉛めっきに関するJIS規格“JIS H 8641:2007(旧規格)”では、めっきの要求品質特性を硫酸銅試験の試験回数(めっきの種類が「1種」に適用)又は付着量試験による付着量(めっきの種類が「2種」に適用)と規定していました。現在では、膜厚計の測定精度が十分信頼でき、使用方法も簡便であるため、めっき皮膜を膜厚で管理する方法が広く普及しています。このような実態を踏まえ、令和3年改定では、めっき皮膜の規定を膜厚による方法に変更し、対応国際規格に整合させました
さて、切土補強土工法設計・施工要領に戻ります。補強材の亜鉛メッキ処理の規格は以下の通り、表記が改定されました。構造図の記載変更に留意が必要です。
4.11.6 防食工 補強材の亜鉛メッキ処理は次の通りとする
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旧版(平成19年1月版) |
改定(令和6年7月版) |
補強材 |
JIS H 8641 2種 HDZ55 |
JIS H 8641 HDZT77 |
ナット |
JIS H 8641 2種 HDZ35 |
JIS H 8641 HDZT49 |
プレート |
JIS H 8641 2種 HDZ55 |
JIS H 8641 HDZT77 |
(2) 削孔方式の見直し〜自穿孔タイプの補強土工法が本設として採用可能に〜
自穿孔タイプの削孔において、ケーシングおよびスペーサーを併用し確実に注入材が充填される工法を採用すれば、本設としても採用しても良いこととなりました。
5.2.1 施工手順 (3)削孔の施工手順
旧版(平成19年1月版) |
改定(令和6年7月版) |
自穿孔タイプの削孔は注入材充填の不確実性などから仮設の場合のみ採用できるものとする。 |
自穿孔タイプの削孔は仮設の場合にのみ採用できるものとするが、ケーシングおよびスペーサーを併用し確実に注入材が充填される場合に限り、本設として採用してもよい。 |
自穿孔タイプとは、削孔作業とボルトの挿入作業を同時にできる補強材のことです。削孔ロッドをそのまま補強材として使用するため、ロッドの回収が不要で作業効率が高まります。また、削孔ロッドが中空になっているため、グラウト注入が可能です。そのため、孔壁の自立しない地山においては、二重管削孔方式による施工に比べ、費用面および工期面で有利な工法とされています。 平成8年の会計検査で、自穿孔タイプの補強土工において、補強材の外周に注入材が十分に付着しておらず、所定の引き抜き抵抗力を満たしていないことが指摘されました。自穿孔タイプという構造的な原因とあわせて、グラウトや引き抜き抵抗力の確認を怠った、施工管理に大きな問題があった事例でした。このような経緯から、のり面設計・施工に携わる技術者の中では、自穿孔タイプは本設では採用しにくい・・・・との共通認識がこれまでありました。 他方、トンネル分野では、自穿孔式ロックボルトは、切羽補強、フォアボーリングなどとして広く活用されています。例えば、建設工業調査会が発行するベース設計資料 2023年9月版によれば、ロックボルト材料の市場比率は、トンネル90%、のり面10%とされています。ロックボルトは、トンネルで圧倒的に使用されており、トンネル分野では自穿孔方式も多く採用されています。
五大開発(株)の切土補強土工法計算システム「補強土」に登録されるメーカー専用工法の中では、【SPソイルネイル工法】、【ホーク・ネイリング工法】が、ケーシング併用の自穿孔タイプで、本設として採用してもよい工法に該当します。今回の要領改定により、地山が悪く、孔壁が自立しない現場の本設補強土工では、従来型の二重管削孔方式に加えて、自穿孔タイプも対象工法として比較する機会が増えていくものと思われます。
<参考リンク>
▽切土補強土工法設計・施工要領 令和6年7月(NEXCO総研 ブックストア) https://shop.ri-nexco.co.jp/item/844/
▽地山補強土工法 総合技術情報サイト 会計検査の指摘(補強土工法研究会) https://www.japan-hokyoudo.jp/kaiken.html
▽五大開発(株) 切土補強土工法計算システム「補強土」(令和6年8月 Ver.15発売) https://soft.godai.co.jp/soft/product/products/rfcut/index.htm
<補強土工法の詳しい情報はこちらから>
▽注入式本設ロックボルト工法 SPソイルネイル工法(エスティ―エンジニアリング株式会社) https://www.st-eng.co.jp/rockbolt/sp-soilnails.html
▽「高耐食性内空ボルト」を用いたケーシング併用型自穿孔ボルトシステム ホーク・ネイリング (株式会社 ケー・エフ・シー) https://isabou.net/sponsor/kfc-net/hawknailing.asp
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