令和6年6月27日のいさぼう技術ニュース『「だいち4号」搭載のH3ロケット3号機が打ち上げ予定!』の紹介後、7月1日に打ち上げに成功した「だいち4号」。衛星全体および搭載されているミッション機器※1等の初期機能確認運用を10月18日に完了し、定常運転に移行した事が国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)より報告されました。 今回は、打ち上げ以降の経過について紹介いたします。
打ち上げに成功し、無事に宇宙に到着した「だいち4号」はそのまま約3日間をかけてクリティカル運用※2を完了させ、衛星システム及びミッション機器が所定の機能・性能を有していることの確認を行う初期機能確認運用へ移行しました。
「だいち4号」は「だいち2号」と同軌道とすることで、兄貴分の「だいち2号」の衛星データを組み合わせた解析が可能となるよう設計されています。初期機能確認では、その性能確認もなされています。
「だいち4号」のミッションパートナーである国土地理院は、SARデータについて画像解析を実施してます。火山活動が活発となっている岩手山及びその周辺において、「だいち2号」と「だいち4号」の観測データを用いた干渉SAR解析により、地殻変動をとらえることに成功しました。国土地理院では、定常観測の開始以降、「だいち4号」のSARデータを用いた全国の地盤・地殻変動の監視を行うとしています。
また、JAXAの地球観測研究センターでは、「だいち2号」が6月に観測したデータと「だいち4号」が9月に観測したデータを組み合わせた干渉SAR解析を実施し、シベリアの永久凍土が融解し、夏場に地盤が沈降している様子を捉えました。
これらの結果より、「だいち4号」の観測は、「だいち2号」が2014年から観測したデータと組み合わせ可能であることが確認されました。今後は、10年以上蓄積している「だいち2号」の観測データを活用し、長期間の継続的な地殻・地盤変動の把握ができるようになります。
「だいち4号」は、現在、搭載するPALSAR-3(Lバンド合成開口レーダー)の初期校正検証運用を実施中で、2025年1月以降、定期観測運用を予定します。定期観測運用がスタートすれば、一般ユーザーへの観測データ提供(有償)も開始されるとのことです。
土木分野でも大きな役割を担う「だいち4号」の活躍に、今後も目が離せません。
※1
ミッション機器は下記2種の機器を指す。
■SPAISE3(スパイススリー):衛星搭載船舶自動識別システム実験3
AIS信号と呼ばれる船舶から送信される船の種類や位置などの情報を含んでいる信号を受信する事ができ、海洋状況を把握する事で船舶の事故防止に役立てている。一方で、船舶が多い海域では電波が込み合って受信できなくなる課題を抱えていたが、SPAISE3の混信対策に効果がある事が確認された。
■PALSAR-3(パルサースリー):フェーズドアレイ方式 Lバンド合成開口レーダ
電波を地球の地表面に照射し、地表面から反射されるLバンド(波長24cm)の電波を受信する事で情報を得る合成開口レーダ(SAR)と呼ばれるセンサ。デジタルビームフォーミング技術を採用することで、「だいち2号」に搭載されたPALSAR-2よりも高い空間分解能での広範囲の観測が可能となった。
※2
初期機能確認前の準備段階。衛星分離、姿勢の確立、太陽電池パドル展開、PALSAR-3展開、SPAISE3展開の順に実施された。
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