早いもので、今年も令和6年を振り返る時期が来ました。いさぼう界隈ニュース8選と題し、今年の自然災害、防災、土木ニュースを振り返ります。
【いさぼう界隈ニュース8選】
- 《1》群発地震が続く能登半島で震度7(令和6年能登半島地震)(1月)
- 《2》北陸新幹線「金沢〜敦賀」間が延伸開業(3月)
- 《3》「だいち4号」搭載のH3ロケット3号機が打ち上げ成功(7月)
- 《4》豪雨災害 松山市で土砂崩れ、山形県最上川中流域で氾濫発生(7月)
- 《5》国内初 南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意報」が発表される(8月)
- 《6》 迷走台風10号 東海道新幹線が3日間 計画運休 (8月)
- 《7》能登半島の被災地に記録的大雨 複合災害に(9月)
- 《8》ノーベル「物理学賞」「化学賞」をAI研究者が受賞(10月)
《1》群発地震が続く能登半島で震度7(令和6年能登半島地震)(1月)
石川県能登地域では、平成30年頃から地震回数が増加傾向にあり、令和2年12月頃から地震活動が活発になっていました。
令和6年1月1日16時10分、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6、最大震度7の地震が発生し、気象庁は一連の地震活動を「令和6年能登半島地震」と命名しました。
国内で震度7を記録する地震は、平成30年北海道胆振東部地震以来、6年ぶりのことでした。グラフに示した震度5弱以上の地震の回数は、令和6年は28回あり、このうち能登半島地震の一連の活動が21回でした。1か月前の11月26日にも、久々の緊急地震速報が鳴り響きました。能登半島地震震源域の南西側で震度5弱、マグニチュード6.6の大きな地震でした。
《2》 北陸新幹線「金沢〜敦賀」間が延伸開業(3月)
北陸新幹線の金沢〜敦賀間が3月16日に延伸開業しました。これにより、東京と福井が乗り換えなしで結ばれるようになり、所要時間は最短2時間51分となりました。当初の予定より1年以上遅れての延伸開業を迎えました。
開業延期の一因となったのが、トンネル工事の遅延でした。福井県あわら市と石川県加賀市の境に位置する加賀トンネル(約5.5キロ)では、令和3年3月、トンネル底部の地盤が隆起する盤膨れが発生、インバートにひび割れが発生する不具合を確認。そのため地盤の膨張に対して固定ボルトを打設する追加工事を余儀なくされました。
開業にあわせて、福井駅前には恐竜スポットが続々と整備、駅ナカ、東口、西口とも恐竜一色となっています。
《3》「だいち4号」搭載のH3ロケット3号機が打ち上げ成功(7月)
7月1日、H3ロケット3号機の打ち上げに成功。搭載されていた先進レーダ衛星「だいち4号」を宇宙まで無事に送り届け、昨年3月に打ち上げ失敗したH3-1号機のリベンジを見事に果たしました。
宇宙に到着した「だいち4号」は初期機能確認を終え、兄貴分の「だいち2号」と同じ軌道を周回しています。2基に搭載されているSAR(合成開口レーダー)は天候・昼夜に関わらず観測を行うことが可能であり、干渉SAR解析によって地表面の高さを比較することで、災害状況や地盤沈下の把握、違法盛土の監視等に活用されます。「だいち4号」は観測幅や観測頻度が大きく向上しており、「だいち2号」が観測に1週間程度かかった能登半島全域を一度に観測することができるなど、土木はもちろんのこと、様々な分野で活躍することが期待されています。
「だいち4号」は現在PALSAR-3(Lバンド合成開口レーダー)の初期校正検証運用を実施中ですが、2025年1月以降から定期観測運用され、一般ユーザーへの観測データの提供(有償)も開始される予定です。
《4》 豪雨災害 松山市で土砂崩れ、山形県最上川中流域で氾濫発生 (7月)
今年も、台風や線状降雨帯に起因した局所的な大雨による風水害、土砂災害が全国各地で多く発生しました。
国土交通省砂防部では、平成15年以降、土石流等、地すべり、がけ崩れの発生件数を公表しています。令和6年11月30日時点では、土石流等154件、地すべり199件、がけ崩れ1,066件、合計1,419件であり、令和5年の1,471件と同程度の件数となっています。近年に比べ、地すべり災害が増加しており、これは能登半島地震に関連したものが多いです。
7月12日には、愛媛県松山市の中心部、松山城がある斜面で表層崩壊による、土石流が生じ、ふもとに住む家族3人が巻き込まれて死亡する災害が発生しました。市の中心部の人口密集地、史跡内の斜面、災害箇所が土砂災害警戒区域に未指定、斜面上部の道路に亀裂が発生していたこと等、土砂災害防止の観点から多くの課題が浮き彫りになり、注目を集めました。
7月24日から26日には、北日本に停滞していた梅雨前線の活動が活発となり、山形県では25日の昼過ぎと夜遅くに線状降水帯が発生しました。3日間の降水量が400ミリを超え、平年の7月の月降水量を上回る記録的な大雨となり、最上川中流域で氾濫が発生しました。救助に向かっていた警察官が命を落とす事故となりました。
《5》 国内初 南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意報」が発表される(8月)
8月8日には、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、宮崎県南部では最大震度6弱を記録しました。気象庁は、同日午後7時15分に南海トラフ地震が発生する可能性が平常時より高まっているとして、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を発令しました。臨時情報の制度ができた平成29年(2017年)以来、初の「注意」が発表されました。夏休み真っ盛りでの「注意」となったことで、自治体や企業の多くが対応に戸惑うことが多く、不安な1週間を過ごすことになりました。
毎年12月、Google検索年間ランキングがGoogle社より発表されます。“南海トラフとは”が、○○とはランキングで5位、また47都道府県ごとのランキングでも21都道府県でトップ5にノミネートされています。今年、いさぼう界隈で最も注目されたワードは、“南海トラフ”に決定です!
《6》 迷走台風10号 東海道新幹線が3日間 計画運休 (8月)
8月下旬に日本列島の広い範囲に被害をもたらした台風10号(サンサン)は、夏の台風特有の「超ノロノロ台風」、遅い速度で迷走しました。非常にゆっくりとした速度で進みながら日本付近に強い暖湿気を送り込んだため、台風から離れた地域でも大雨の被害が発生しました。
JR西日本は8月23日、山陽新幹線で27、28日に計画運休を行う可能性があると発表。その後、複数回予定を変更し、30日に広島―博多間で終日運休するなど、29〜30日に計画運休を実施しました。一方のJR東海も予定変更を繰り返した上で、8月30日〜9月1日に東海道新幹線の一部区間で計画運休を行いました。東京―新大阪間の直通運行が3日間にわたって停止しました。
《7》 能登半島の被災地に記録的大雨 複合災害に(9月)
令和6年9月21日、能登半島北部を中心に観測史上最大の大雨となり、地震の影響も重なり、大規模な複合災害につながりました。石川県輪島市では3時間に220ミリを記録し、これは9月の1か月平均雨量を上回る記録的な大雨でした。日最大1時間降水量や月最大24時間降水量も統計開始以来の最高値を記録しました。
この豪雨により、地震の被災地で土砂崩れや土石流が多発し、河道を閉塞させ、各地で土砂洪水氾濫を引き起こしました。奥能登地域を中心に15人が命を落とし、住宅被害も1567棟に及びました。また、地震後に応急復旧された道路も再び寸断されるなど、複合災害の深刻な影響が見られました。
《8》 ノーベル「物理学賞」「化学賞」をAI研究者が受賞(10月)
いさぼう技術ニュース11月21日号でも紹介のとうり、今年のノーベル物理学賞、ノーベル化学賞はAI研究者が受賞しました。また、米半導体大手NVIDIAは、Open AI社がChatGPTを公開以降、売上を伸ばしており、次期決算では年間売上高が1,000憶米ドルに達するともいわれています。生成AIをビジネスシーンでも活用する流れが加速した1年だと実感しています。
野村総合研究所によるChatGPT利用動向調査(2024年9月時点)によれば、関東に住む満15〜69歳を対象としたアンケート調査の結果、利用率は20.4%と、2023年6月調査より5ポイント程度、増加しているそうです。
Microsoft社が提供するCopilot for Microsoft 365(コパイロット)の利用も増えています。Copilotは、WordやExcel、PowerPointなどのMicrosoft製品を生成AIの機能を通じてサポートしてくれる機能のことです。この企業向け有料版が2023年11月1日に正式にリリースされました。2024年1月15日には、個人向けの「Copilot Pro(コパイロットプロ)」の提供もはじまりました。
ChatGPTは文章で指示すると、文章の答えを返してくれる生成AIですが、Copilot for Microsoft 365(コパイロット)は、ExcelやPowerPointなどとも連携し、図表の作成などにも対応している点で、注目されています。
引き続きいさぼうネットでは、防災・土木に関わる幅広い情報をいち早く伝えることに精進していきたいと思います。今年も1年間ご愛顧いただきありがとうございました。よいお年をお迎えください。
▼シリーズコラム 「ひみつの建民ショー」 来月より、読者参加型の新たなシリーズコラムをスタートします。乞うご期待。
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